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#113 フィーバー333『ダーカー・ホワイト』

服部さんへ

 アヌーナの新作紹介、ありがとうございます。ゲーム音楽の話は、知りませんでした。しかし、よくぞ聞いてくれました。今はゲームは全然しませんが、中学時代にはインベーダーにズッパマリ状態だったのです。当時、地元のゲームセンターでは、10万点以上出した人が、ちょっとしたヒーローになっていました。ワタクシはこれを達成しまして、要した3時間ほど(だったと記憶)の間に、徐々にギャラリーが集まってきて、怖かった不良の先輩からも「おめ、スゲーな」などと声をかけられたことを覚えております。
 以上、自分の人生でも屈指の自慢話でした。さてアヌーナですが、もう「アイルランド音楽」「アイスランド」「シガー・ロスのスタジオ」という時点でOKというか、正直、合唱モノがあまり得意ではない僕でも、すっと入っていけました。そして、荘厳で凛とした音世界に、やはり環境や空気って大きいなと実感。たとえが適切でないかもしれませんが、僕はお墓に行くと、不思議と心が落ち着いて、呼吸が整うんですね。それと似たような感覚が味わえました。
 といったところで今回は、めちゃくちゃ対照的なラウド・ロック作をご紹介します。服部さんには、ちょっとうるさいかもしれません。あしからず。

フィーバー333『ダーカー・ホワイト』

 数年前まで、毎年欠かさず全日参加していたFUJI ROCK FESTIVAL。注目のニューカマーから生ける伝説まで、ありとあらゆるバンド、アーティストを酒(これ大事)とともに堪能した中で、個人的ベスト・アクトを挙げよと言われたら、2018年にWHITE STAGEで観たフィーバー333が、真っ先に頭に浮かびます。土砂降りの雨が容赦なく吹き込むステージを、縦横無尽に駆け巡り、客席に降りたかと思えば、中継車の屋根にまで登って感情を爆発させるパフォーマンスに、「命賭けてるわ」と興奮するどころか泣きそうになったことを記憶しています。
 今作『ダーカー・ホワイト』は、約5年半ぶりとなる待望の2ndフル・アルバム。この間に中心人物のジェイソン・アーロン・バトラー以外のメンバーが入れ替わり、さらにメンバーが加わり4人組となって初の作品ですが、基本は何も変わっていなくて、個人的にはひと安心でした。やはりジェイソンがキーマンだったのね。
 フィーバー333のサウンドは、パンク×ヒップホップ×メタルを体現したもので、そういう意味ではリンキン・パーク(祝! 再結成)直系とも言えるし、強い政治的メッセージを発信しているという点では、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのDNAを受け継いでいるとも言えるでしょう。今作にリンキン・パークのマイク・シノダ、BLINK-182のトラヴィス・バーカーが参加しているのも納得です。

 しかしその両者と異なるのは、これはライヴにも顕著なのだけれど、フィーバー333はシリアスにもネガティヴにもなり過ぎず、よりロックの楽しさを伝えているところ。今作収録の超絶キャッチー&ポップな「$wing 」なんてもう、一緒に笑って歌って飛び跳ねるしかないでしょう。

 2000年前後に大きなムーヴメントを巻き起こした「ラップ・メタル」を、その次の世代が、こうしてアップデートしてくれるのは、僕のようなオールドスクールなロック・ファンにとってうれしいことだし、逆にZ世代のリスナーにとっては新鮮でしかないはずです。改めて、このスタイルの訴求力、インパクトの強烈さを思い知らされた次第。何はさておき、とにかくカッコいいです。熱いです。
                              鈴木宏和


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