#113 フィーバー333『ダーカー・ホワイト』
フィーバー333『ダーカー・ホワイト』
数年前まで、毎年欠かさず全日参加していたFUJI ROCK FESTIVAL。注目のニューカマーから生ける伝説まで、ありとあらゆるバンド、アーティストを酒(これ大事)とともに堪能した中で、個人的ベスト・アクトを挙げよと言われたら、2018年にWHITE STAGEで観たフィーバー333が、真っ先に頭に浮かびます。土砂降りの雨が容赦なく吹き込むステージを、縦横無尽に駆け巡り、客席に降りたかと思えば、中継車の屋根にまで登って感情を爆発させるパフォーマンスに、「命賭けてるわ」と興奮するどころか泣きそうになったことを記憶しています。
今作『ダーカー・ホワイト』は、約5年半ぶりとなる待望の2ndフル・アルバム。この間に中心人物のジェイソン・アーロン・バトラー以外のメンバーが入れ替わり、さらにメンバーが加わり4人組となって初の作品ですが、基本は何も変わっていなくて、個人的にはひと安心でした。やはりジェイソンがキーマンだったのね。
フィーバー333のサウンドは、パンク×ヒップホップ×メタルを体現したもので、そういう意味ではリンキン・パーク(祝! 再結成)直系とも言えるし、強い政治的メッセージを発信しているという点では、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのDNAを受け継いでいるとも言えるでしょう。今作にリンキン・パークのマイク・シノダ、BLINK-182のトラヴィス・バーカーが参加しているのも納得です。
しかしその両者と異なるのは、これはライヴにも顕著なのだけれど、フィーバー333はシリアスにもネガティヴにもなり過ぎず、よりロックの楽しさを伝えているところ。今作収録の超絶キャッチー&ポップな「$wing 」なんてもう、一緒に笑って歌って飛び跳ねるしかないでしょう。
2000年前後に大きなムーヴメントを巻き起こした「ラップ・メタル」を、その次の世代が、こうしてアップデートしてくれるのは、僕のようなオールドスクールなロック・ファンにとってうれしいことだし、逆にZ世代のリスナーにとっては新鮮でしかないはずです。改めて、このスタイルの訴求力、インパクトの強烈さを思い知らされた次第。何はさておき、とにかくカッコいいです。熱いです。
鈴木宏和
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