#45 ルイス・キャパルディ『ブロークン・バイ・ディザイア・トゥ・ビー・ヘヴンリィ・セント』
ルイス・キャパルディ
『ブロークン・バイ・ディザイア・トゥ・ビー・ヘヴンリィ・セント』
才能と言ってしまえばそれまでなのだけど、ギターなどの凄腕や、稀有な声や歌唱力を持ったミュージシャンに対して、僕は「そんなにうまいのってどんな気持ち? 天下を取った感じ?」などと思う。我ながらバカな質問だなと感じつつ、インタビューで実際に聞くこともある。最近だとこの人、ルイス・キャパルディがそう。
正確には、声や歌唱力だけではなく、その歌が現出させる世界観にも強烈に惹かれてしまう。極めて象徴的なのが、2019年発表のシングル「サムワン・ユー・ラヴド」のMVだ。初めて観た時は、ウルウルきてしまった。子役を含めて、演者がまた素晴らしいのなんのって。
4年ぶりとなる2ndアルバムでも、「愛と喪失を歌い続ける」と本人が公言している通り、その世界観は一貫して変わらず。歌詞の意味などわからなくとも、生きることの困難さや残酷さが、それでもなんとか折り合いをつけて前に進むことの尊さが、愛する人がいることの意義や喜びが、それこそ映像を観るように生々しく伝わってくる。いや〜、沁みます。
今作収録の「ポイントレス」を共作している、エド・シーランの最新作にもハマっているし、どうやら僕は、この手の音楽を求めてしまう性分らしい。ちなみに、2020年の来日公演に足を運んだ人はご承知の通り、ルイスさんは、歌のパフォーマンス以外では、スタンダップ・コメディアンのように面白い人。今年のフジロックに行く人は、“泣いて笑ってまた泣いて”状態のライヴをご堪能ください。
鈴木宏和
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