#51 シガー・ロス『アゥッタ』
シガー・ロス『アゥッタ』
私事続きで恐縮なのだけど、この際。シガー・ロスの音楽を流していると、妻から「宗教音楽みたいで怪しい」と言われる。ちなみにブライアン・イーノは、「宇宙を泳いでいるような変な音楽」だそうだ。
それもさて置き、ずいぶんと僕の首が長くなっていた気がしていたら、なんと10年ぶりのニュー・アルバムとなる。これがもう、待った甲斐がありもあり。1曲目から、涅槃へと連れ出されるような幻想的でドリーミーなサウンドと、やはりこの世のものとは思えないヨンシーの歌声に聴き惚れていると、気づけばアルバムが終わっている。その繰り返しで、しかも聴き込むほどに味わいが増し、新たな景色が見えてくる。以下はリード・シングル曲。7分超えだけど、これがまたいいのよね〜。
『残響』というアルバムのような、“明”“陽”の要素を押し出したシガー・ロスも、それはそれで好きなのだけど、僕はこのようなポジティヴもネガティヴも超越した、どこまでも深遠な美しさを体現するシガー・ロスを愛している。僕にとっては、自分の心持ち次第で、祝祭にも歓喜にも安息にも鎮魂にもなり得るのが、彼らの音楽なのだ。パートナーにとっては怪しい音楽でもね(笑)。
ただただ、身も心もどっぷり浸かっていたい一作。たぶん、このように感じるリスナーの脳には、麻薬を摂取した時に近い脳内物質が出ているのではないだろうか。そんな気がしてならないのだ。不謹慎な締めで失礼!
あ、現時点で入手できる輸入盤は高額だけど、9月から正式にフィジカル・リリースされるようなので、手元に置きたい熱心なファンは、しばしお待ちを。
鈴木宏和