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#54セージュ『セージュ』
鈴木さんへ
アノーニもどんな人生を歩んできたのか、知りたくなる音楽のアーティストですね。キャリアだけで言うと、ルー・リードのバック・ヴォーカルをしていたことがあるようで、だからこその『シルヴァー・オブ・アイス』だと……。涙が溢れてきて、ここからずっとウルウルしていました。
ジャケットに写る写真家のマーシャ・P・ジョンソンの人生も知りたくなりました。多様性という言葉をどう解釈するかは、人それぞれだけれど、でも、いつも思うのは正解は、ひとつじゃないということ。だから、今仕事をしていて、「こうあるべき」と標準を押し付けられることに抵抗を感じています。基礎は大切、でも、方法はひとつじゃない。
そういう思いをアノーニのような音楽、アーティストに出会うと、背中を押してもらえるというか、また、考える機会になるので、うれしいです。いい出会いをありがとうございます!
セージュ『セージュ』
子供の頃に友達と声を合わせて、ハモッた歌の心躍る楽しさ。その感動が蘇ってくるのがセージュのデビュー作だ。もちろんレベチの歌だけれど…。
セージュは、ジャズ・シンガーのサラ・ガザレクを中心にヴォーカル・アンサンブルを専門とするアレンジャーのアマンダ・テイラーをはじめ、エリン・バントラージ、ジョナイエ・ケンドリックの4人で結成されて、彼女達の頭文字をとってセージュと名付けられたという。
4人のキャリアが存分に生かされたヴォーカル・アンサンブルは、美しさだけではなく、それを超越した複雑かつメッセージを持った歌を紡ぐ。たとえば、「ネヴァー・ユー・マインド」というBLM運動に賛辞を送る歌では命を落としたアフリカ系アメリカ人の名前が次々と読み上げられていく。
収録曲はオリジナル楽曲中心だけれど、マイケル・キワヌーカとビートルズの楽曲をメドレーで歌ったりも。そのメドレーは、パンデミック中に起きた混乱や分断への抗議から作り始めて、最終的に最前線で音楽やアートを創作してきた女性たちに捧げるラヴレターとなったという。歌の背景にある彼女達の知的な会話が聞こえてきそうで、もっとそれを聞きたいとさえ思ってしまう。
歌はアカペラではなく、ジャズ・ミュージシャンの演奏が歌の背景を描くように流れて、ゲストもジェイコブ・コリアー、テリン・リン・キャリントンといったセンスを保証するようなゲストの名前が並ぶ。そこもうれしいけれど、人の声って楽器なんだなと思える歓び。それを満喫させてくれる1枚、大好きだ!
服部のり子