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#1アレクシス・フレンチ『トゥルース』

   UK出身のコンポーザー&ピアニストの3枚目のソロアルバムになる。彼の音楽は、いつもストーリーテリングで、いろいろな空想の映像を運んできてくれる。奏でる音色は、ほがらかで、包みこんでくれるような優しさがあり、夢心地にさせてくれる。そこが大好きだ。
 でも、新作は少し違った。もちろんそういう曲もあるが、1曲目の『峡谷』ではカタカタというピアノを弾くときに楽器内で鳴る、いわゆるノイズが入る。通常であれば、レコーディングの際に排除される音だ。そのカタカタという音がどこか不安を誘う。パンデミックのストレスが反映されたものなのか?
 本人によると、2020年にアメリカで起きたジョージ・フロイド事件の翌日、鏡に映る自分を見つめながら、僕は何者なのか、ここに存在している意味は何なのか。考えを巡らすなかで、いつの間にか涙が溢れ流れていたという。そこから制作が始まったそうだ。
 彼の両親は、ジャマイカからの移民だ。子供の頃からピアノを習ったアレクシスは、ロンドンの名門音大でクラシックを学んだ。いくら才能があってもぶつかる、その世界のガラスの天井は想像できる。そういったさまざまな感情が『峡谷』を聴いていると、伝わってくる。
 基本的にはピアノとオーケストラの共演だけれど、今回初めてシンガーが参加した歌『心をひとつに』もある。そのゲストがなんとレオナ・ルイス。彼女のエモーショナルな歌が儚げで美しい。
 また『愛に生きる』という曲にはフラメンコギターの沖仁が参加している。
 私にとって音楽に感情を揺さぶられて流れる涙は、心を濾過し、素直にもしてくれるもの。『トゥルース』は、何度聴いても胸が熱くなる。

                             服部のり子





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