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#32 NOFX『Double Album』

服部さんへ

 あけましておめでとうございます。ほんと、どんな年になるのやら。来日が増えてきたのはうれしいものの、ずいぶんとまあ、チケット代が上がっちゃって。来年あたりと勝手に予想している、ローリング・ストーンズの来日公演を制覇するために、お小遣いを貯めておかないとです(笑)。
 さて、リトル・シムズです。去年、来日していたんですよね。ライヴハウスでの公演は、DJとのシンプルなセットながら盛り上がったようで。横浜の赤レンガ倉庫でのイヴェントは、カマシ・ワシントンとの競演だったので、ちょっと覗き見してみたかったです。
 温かみのあるスムーズで耳馴染みのいい歌唱、というかラップ/フロウは、UKならではという気がします。個人的には、「Broken」という曲にハマりました。スピリチュアルとも表現できる優美なコーラスと、ほんのり憂いを帯びたライミングが絶妙にマッチしていますね。
 しかも、歌詞のテーマが不満や怒りとは。なるほどFワードこそ多いですが、英詞を細かく聞き取れずに聴いている分には、とてもそうは思えません。そんなところも含めて、“剛”がアメリカのリゾかミーガン・ジー・スタリオンなら、“柔”がイギリスのリトル・シムズといったところでしょうか。いずれも魅惑的です。

NOFX『DOUBLE ALBUM』

 米カリフォルニアが誇るメロディック・パンクの重鎮が、2021年の『SINGLE ALBUM』に続く新作『DOUBLE ALBUM』をリリースした。フロントマンのファット・マイクいわく、もともとは2枚組を予定していたものの、思ったより時間がかかってしまったため、別々にリリースしたのだとか。まあ、コロナがあったしね。
 そのファットがキレッキレのベース・プレイを聴かせるオープナー「Darby Crashing Your Party」から、パワフル、スピーディー、スリリング、そして超絶キャッチーなナンバーが並び、一気に身も心も持っていかれる快感。

 これこれ、これなんだよね、メロディック・パンクの抗えない魅力って。僕はあまりピンとこなくて使わない言葉なんだけど、“メロコア”好きの皆さんも歓喜に沸いているに違いない。さりげなく効かせたレゲエのスパイスも、実に美味。  
 パンク・バンドは総じてライヴがいいし、ライヴを体験してこそだと僕は思っている。NOFXのライヴも何度か観ているが、生き方そのものというか、嘘がない感じがぐっと来てしまうのだ。パンク・イズ・アティテュード。 まさしく。今作を聴きながら、彼らのステージングと観客の盛り上がりが、ありありと目に浮かんできた。
 少々褒めすぎなのを承知で、結成40周年(!)のアニヴァーサリー・イヤーにふさわしい、メロディック・パンクのバイブルとも呼びたい1枚だ。だって、解散するとか言っているんだもの。これが最後なの? やめないでよ。撤回大歓迎!
                              鈴木宏和


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