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#22 ドライ・クリーニング『スタンプワーク』

服部さんへ

 レッチリは、普通に好きなバンドのひとつでした。でも、40を超えて「こんなに生きるとは」などと考えるようになったころ、かなりの時差で『カリフォルニケーション』というアルバムの悲哀を帯びたメロディにハマり、そこからなんです。とは言え、ネット界隈では、僕とは逆に近作に否定的な意見が多いようですけどね。
 さてテイラーです。それこそコロナ禍での内向きの気分に妙にハマり、『フォークロア』と『エヴァーモア』は、家でけっこう聴いていました。フィービー・ブリジャーズや、ジュリアン・ベイカーなんかと一緒に。メロディと声に、なんかホッとさせられたんですよね。新作にも、僕が好きなテイラーがいました。いい具合に力が抜けた声の温度感が、いいです。こんなに透明な声だったのかという、発見もありました。
 でも何より最高なのが、ジャケットです。あくまで個人的にですが、これまで『フォークロア』以外、アートワークにはいつも「う〜ん……」という感じだったので。今回は、アナログ盤を飾っておきたいぐらいです。
 ちなみにテイラーって、こんなにFワードを入れる人でしたっけ? まあ、お行儀がいいお嬢さんは苦手なので、ワタクシ的には大歓迎です。

ドライ・クリーニング『スタンプワーク』

 サウス・ロンドンのポスト・パンク4人組、ドライ・クリーニングは、ブラック・ミディやフォンテインズD.C.らとともに、個人的にお気に入りのUKニューカマー。その強い個性ゆえ、おそらく好き嫌いが分かれるバンドだと思うが、僕はちょっと中毒気味だ。
 ソニック・ユースやザ・スミスを彷彿させるメロディックなギター・サウンドと、ナレーションのようなポエトリー・リーディングの合間に、思い出したようにキャッチーな歌唱を繰り出す紅一点、フローレンス・ショーのヴォーカル。それぞれを切り離しても十分に通用するような表現が交わった世界観は、ユニークにしてクール、殺伐としながらもポップネスにあふれている。
 その魅力をわかりやすく伝えているのが、家族の混乱により逃げ出したペットの亀の嘆きを描いた(面白い!)という、この曲。

 ね、クセになるでしょ。
 この2枚目のアルバムでは、サックスやクラリネット、カズー、ホイッスルなどの飛び道具も効いていて、ヴォーカルと演奏のミスマッチのマッチングという妙技が、存分に味わえる。
 辛辣ともシニカルとも言えるアルバム・ジャケットも、実は彼らの音楽の本質を伝えている気がしている。だって石鹸に、たぶん、いや間違いなく陰毛でタイトルですからね。何はともあれ、UKから素晴らしい“ロック・バンド”が登場してくれたことを喜びたい。
                              鈴木宏和
 


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