#22 ドライ・クリーニング『スタンプワーク』
ドライ・クリーニング『スタンプワーク』
サウス・ロンドンのポスト・パンク4人組、ドライ・クリーニングは、ブラック・ミディやフォンテインズD.C.らとともに、個人的にお気に入りのUKニューカマー。その強い個性ゆえ、おそらく好き嫌いが分かれるバンドだと思うが、僕はちょっと中毒気味だ。
ソニック・ユースやザ・スミスを彷彿させるメロディックなギター・サウンドと、ナレーションのようなポエトリー・リーディングの合間に、思い出したようにキャッチーな歌唱を繰り出す紅一点、フローレンス・ショーのヴォーカル。それぞれを切り離しても十分に通用するような表現が交わった世界観は、ユニークにしてクール、殺伐としながらもポップネスにあふれている。
その魅力をわかりやすく伝えているのが、家族の混乱により逃げ出したペットの亀の嘆きを描いた(面白い!)という、この曲。
ね、クセになるでしょ。
この2枚目のアルバムでは、サックスやクラリネット、カズー、ホイッスルなどの飛び道具も効いていて、ヴォーカルと演奏のミスマッチのマッチングという妙技が、存分に味わえる。
辛辣ともシニカルとも言えるアルバム・ジャケットも、実は彼らの音楽の本質を伝えている気がしている。だって石鹸に、たぶん、いや間違いなく陰毛でタイトルですからね。何はともあれ、UKから素晴らしい“ロック・バンド”が登場してくれたことを喜びたい。
鈴木宏和