【技術解説】「伝説のコンサート・中森明菜」は、普通に見るだけじゃ、もったいない！！

　先日NHKで放送された、「伝説のコンサート・中森明菜」。教材としても申し分ない、充実のコンサートを繰り返し楽しみつつ、「歌の学び」へと繋がる新たな視点をゲットしてしまいましょう～！
　題して「夏の課外授業」。スタートです！！

※番組終了に伴い、冒頭の紹介文を修正しました。
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⓪はじめに

　一時代を築き上げた歌手には必ずと言っていいほど「伝説のライブ」というものがあります。
　時代の流れ、歌手自身の実力、観客の期待値、全ての条件が揃ってとんでもないエネルギーを放出し生まれるそのライブは、その後何度見ても色褪せず、何年先も世に語り継がれていくのです。
　「小さい頃の夢は“中森明菜になること”でした！」とレッスン中もしょっちゅう話している宮本ですが(笑)、それを抜きにしても、このコンサートは本当にすごい！
　全編が見どころ、というとんでもないステージです。その中でも特に注目して聴いてほしい、見てほしい部分をピックアップしてみます。
　「歌、上手いなー」「かわいいなー」それだけじゃホントに勿体ない！！一流が一流と言われる所以を書き綴りました。ぜひコンサートの模様と併せてお楽しみください。

① 見よ！これが「完全なる腹式呼吸」だ！

　まず度肝を抜かれるのが、完璧な呼吸のコントロール。中森明菜自身は華奢な体つきですが、その声は力強く、どこまでも伸びやかです。その最も大きな理由は【完全腹式呼吸】。何度見ても「いつブレスしてるの！？」と混乱するくらい肩、鎖骨が動かない。呼吸はパーフェクトなまでに腰回りやみぞおち近辺で取っています。これだけを見ても、中森明菜という歌手が、アイドルの中でも圧倒的に安定した歌唱力をもっていた理由が分かります。
　特にテンポの速い楽曲でのそれが見どころです。目を凝らしてご覧あれ！

注目曲）TATOO、SAND BEIGE、TANGO NOIR、少女Aなど

② 最大の魅力は「1mmもブレないロングトーン」

　私が明菜ちゃんに最も魅了されたのは、「ロングトーンの素晴らしさ」。特に素晴らしいのが、「口の開け方」。ねぇ！よく見てよ！“上前歯の見せ方“が理想的！そして“舌の下げ方”が完璧よ！そう言えば、昔、鏡を見て何度もこの口の形を真似したなぁ・・・。さぁ、みんなも真似してみて！あの口の開け方がどれだけ顔の筋肉を使うか分かるから！ほっぺや口の周りだけでなく、目の周りや耳の当たりの筋肉まで総動員だということが分かるはず。この開け方を２時間キープするとなると、この発声がどれほどの訓練によって身に着けたものかを実感できると思います。

注目曲）DESIRE、BLONDE、AL-MAUJ（アルマージ）、ミ・アモーレ、１／２の神話。

③「魅惑の低音」その安定の理由。

　中森明菜の歌声の魅力、そのもう一つは“深い響きの低音”。ちなみにご存知でしたか？この低音は裏声を使ってるのよ！
　喉の力を抜いて、息を多めに吐きながら発声することで、ため息のような声色で歌うことができるのです。でも、それだけじゃない！低音を歌う時の明菜ちゃんの“眉毛”に注目。低音を使うのは、大抵が歌い出しのＡメロ部分。そこをしかめっ面で歌っていることは、ほとんどありません！眉毛をキュッと上げて、目の奥を開いて歌っています。こう歌うことで、顔の中の空間が広くなる→低音がよく響く→大きな声を出さなくても、聴き手に届く音量になるのだ！

注目曲）SOLITUDEやミ・アモーレなどの冒頭Ａメロ部分

④「のけぞり」こそ、ライブの見どころ！

　出来ない！こんな姿勢で歌ってる人、見たことない！彼女は元々クラシックバレエを学んでいたこともあり、体がとても柔軟です。だからって、あんなにのけぞって歌えるって、どういうこと！？だからこそファンは、明菜ちゃんが舞台上でグイーンとのけぞってくれる度に、「待ってました！」とワクワクしてしまうのです。歌はもちろんだけど、唯一無二のパフォーマンスを持っていることで、いつまでもお客さんを飽きさせず、魅了し続けることができる。これも、一流の歌手の証だと思うのです。

注目曲）SAND BEIGE、TANGO NOIR、十戒など

　ダメだ・・・書ききれない。まだまだあるのよ、注目してほしいところは。
　「難破船」を歌う時の、黒目をじっと留めて、観客の向こう側に自分の恋人を見ているような表情、今見ても全く色褪せない衣装の華やかさ、各曲についている斬新な振り付け、などなど。そう、つまり何度見ても飽きないステージを生み出せることが、一番の魅力なのだと思います。
　歌の上達に欠かせないのは、“観察眼”。中森明菜に限らず、コンサートを聞き流すだけでなく、細部を観察しながら、自分事として聴けるようになったら、必ず歌は上手くなります。
皆様もぜひご堪能ください！
（ミュージック・キャンバス　宮本由季）