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ツマグロヒョウモンについて
こんにちは、もうひとつの昆虫図鑑です。今回はツマグロヒョウモンについての情報を図鑑の1ページにしてみました。
おもしろい蛹
ツマグロヒョウモンの特徴として、金属光沢様のぴかぴかの構造が蛹に現れるという点が挙げられます。金属光沢を持つ蛹は他にもオオゴマダラなどがいますが、ツマグロヒョウモンの蛹は日本のより広い地域で観察可能です。
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成虫の特徴
ツマグロヒョウモンはタテハチョウ科に属する蝶で、オレンジ色の体と翅を持ち、黒い斑点が特徴的です。和名「ツマグロヒョウモン」は、メスの前翅先端が黒く、「豹紋」のような模様があることに由来するとされています。
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この種は性的二型(性別によって行動や見た目がちがうこと)がわかりやすく、メスはオスよりも大きく、前翅に白いパッチを持ち、オスは全体が赤茶色で斑点が目立ちます。 体長は27~38mmで、前脚は短くブラシ状で歩行には使用されません。
分布
分布は非常に広く、インド、中国、台湾、日本、スリランカ、東南アジア、オーストラリア、アフリカまで及びます。日本では本州から九州まで見られ、平地から低山地の緑地・公園などで幅ひろく観察されます。
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いきものナビ 環境省より
寿命
成虫の寿命に関する横断的なデータは限られていますが、おおよそ2週間程度とされています。積志中学校に在籍(当時)していた小池さんの発表によると以下のようにも報告があります。飼育下のデータです。
オスは8月3日から死ぬのが出て、一番の長生きは13日間。メスは15日から死に出し、最長は9月12日まで43日間も生きた。オスはメスよりも早く死に、中でも、交尾しなかったオスの方が早く死んだ。
幼虫の特徴
食性
成虫は幼虫の食草の上に産卵。幼虫はスミレ科(Violaceae)の植物、特にパンジーと野生スミレを主な食草とするとされます。わたしも庭に生えていたパンジーの上にツマグロヒョウモンがいたのは何度も観察しました。
地理的な分布によって宿主植物にバリエーションがあることが明らかになっています。特に、インドのデータベースではロベリア(Lobelia、キキョウ科Campanulaceae)が宿主植物として報告されています。これはスミレ属以外の植物を食べる例であり、興味深いです。
幼虫期間
兵庫県明石市立魚住東中学校の竹内氏が公開している情報によると、幼虫期間は16日程度であることが報告されています。兵庫県の特定の時期のデータなので、気温や系統によって個体差があることが予想されます。
飼育方法について
飼育では、幼虫に新鮮なスミレ科の植物の葉を提供することが重要です。ブログ投稿では、駅のプランターで発見した幼虫を自宅で育て、パンジーや野生スミレを与えています。適切な温度と湿度を維持し、蛹化のための支え(枝など)を提供することで、成虫への変態を促すことができます。以下にツマグロヒョウモンの育て方の詳細な記事がありますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
生物としての分類
学名
Argynnis hyperbius
生物学的分類
動物界節足動物門昆虫綱
目 : チョウ目(鱗翅目)
科 : タテハチョウ科
族 : ヒョウモンチョウ族 Argynnini
属 : ツマグロヒョウモン属 Argynnis
種 : ツマグロヒョウモン hyperbius
ツマグロヒョウモンの分類学的な議論は、Argyreusが独立した属かArgynnisの亜属(またはシノニム)かについて長年にわたり続いてきました。文献には「Argyreus hyperbius」と書かれていることもありますが、現在の分類では「Argyreus」という名前は使われず、「Argynnis」の別名(シノニム)とされています。
研究動向
論文検索プラットフォームGoogle scholarで「ツマグロヒョウモン」を検索すると368件がヒットしました。そのなかからひとつを抜粋して紹介します。
日本でのツマグロヒョウモンの北への分布拡大について調査し、パンジー(Viola wittrockiana)の庭植栽の増加が一因である可能性を指摘しています. この研究は、気候変動だけでなく人間のガーデニング活動が蝶の分布に影響を与えることを考察しています。
投稿された写真
インターネット、特にSNSには世界中の虫好きの方々がきれいな写真をアップしていらっしゃいます。ぼくも毎日の様にその写真を見ています。ここでは素敵な写真の投稿を5枚紹介します。
春が待ち遠しい!と言うか待ち切れない!
— まさやん (@masayan59896607) January 25, 2025
ツマグロヒョウモンが飛び交う時期に備えてパンジー、ビオラを追加で植え付けた。4月までまだ60日以上有るのか…長え! pic.twitter.com/FDbwUSqEE7
俺っちのスミレを壊滅せしめた糞ったれ野郎の蛹が猫耳カワイイヤッター!「金」を散りばめたような美しいトゲが角度により反射したものを眼のような黒点と化し強烈な「視線」を発生させます。コワイ!大自然の神秘!許せるッ!!! pic.twitter.com/zO1xv91D9E
— 小林成彦|見習い猟師カメラマン (@naru422) February 12, 2025
いもちゃん居ないからイモ活終わり?いや居るよ よーく探して寒さの中頑張ってる子達が。
— 萩@バジル (@miwapon2wan) December 29, 2024
動画の子 頭にホコリなのかクモの巣なのか(笑)スミレの無い場所から救出 お腹すいてたらしくモリモリ食べてました。#いもむし #ツマグロヒョウモン #幼虫 #スミレ pic.twitter.com/FmPFTeW9Pu
参考文献
津吹卓., & 生亀正. (2008). ツマグロヒョウモンの北上の原因を探る : (1)東京都日野市におけるツマグロヒョウモンの発生消長およびパンジーの入荷量・栽培方法を基にして. 蝶と蛾, 59(2), 154–164. https://doi.org/10.18984/lepid.59.2_154
De Moya, R. S., Savage, W. K., Tenney, C., Bao, X., Wahlberg, N., & Hill, R. I. (2017). Interrelationships and diversification of ArgynnisFabricius and SpeyeriaScudder butterflies. Systematic Entomology, 42(4), 635–649. https://doi.org/10.1111/syen.12236