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トリプルファイヤー『EXTRA TOUR FINAL』ありがとうございました
2月21日、東京キネマ倶楽部で行われたトリプルファイヤー『EXTRA TOUR FINAL』に足を運んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。たくさんの方に集まっていただけて幸甚の至りでございます。
ありがたいことにチケットは完売御礼。人気商売に携わる人間にとってソールドアウトという言葉ほど心に安らぎを与えてくれるものはない。天国のような響きだ。
キネマ倶楽部といえば、2017年にスカートとミツメと『第6回 月光密造の夜』を行った会場だ。思い出深い。キネマ倶楽部は元々キャバレーだった場所で、面妖なムードが漂っている。
弊バンドで企画を行う場合、毎回私が開場中のBGMを選んで流している。なぜそんなことをしているのかといえば、音楽のオタクである私がイキイキとするためだ。こうしたところから自分のポテンシャルを発揮できる領域をじわりじわりと広げ、今に至る。
今回はキネマ倶楽部のいかがわしい雰囲気を念頭において選曲した。アレッサンドロ・アレッサンドローニやピエロ・ピッチオーニ、ピエロ・ウミリアーニ、ステファノ・トロッシといったイタリアの作曲家によるセクシーな曲を軸にしたプレイリストになっている。会場がキネマ倶楽部に決まったときにコツコツ作ったものだからかなり熟成されているはずだ。
『EXTRA TOUR FINAL』では、本編中に安田成美の「風の谷のナウシカ」をカバーした。作詞が松本隆、作曲が細野晴臣、編曲が萩田光雄というメンツで制作された名曲だ。これが映画版『風の谷のナウシカ』の本編で使用されなかったのは有名なエピソードだ。ひょっとするとトリプルファイヤーがカバーしたことに対して「なんでやった?」と疑問に思った方がいるかもしれない。
言い出しっぺはこの私。「俺がやりたいからやるんだ」という意志だけがあり、意図は特にない。しかし「ナウシカ」を選んだ経緯であれば説明できる。昨年、渋谷クラブクアトロで行ったトリプルファイヤーの単独ライブでは、ボ・ガンボス「泥んこ道を二人」をカバーした。前回と同様に今回も何かしらカバーをしたいと考えた。なぜならカバーは楽しいからだ。
以前、「人間はもう終わりだ!」をカバーした真心ブラザーズに何か良い曲があるかもしれないと思って音源を漁っていたところ、彼らがカバーアルバムをリリースしていたのを知った。そこで「風の谷のナウシカ」が取り上げられていたのだ。
「良い曲だよね」といったバイブスで肩肘張らずに取り組んでいる様子がさわやかだった。聴いていたら自然と「俺もやってみたいな、ナウシカ」という気持ちが湧いてきた。きっと断るに違いないと思いつつ、弊メンバーへ提案してみたところ、やりましょうということだったから、正月の三が日に実家で弦が足りていないギターを抱えてアレンジに着手した次第だ。
まず、ポスト『EXTRA』の新曲で取り組んでいる「エキゾ」な雰囲気にしようと考えた。改めて原曲を聴いてみるとシンセが常に裏打ちを鳴らしているので、このほど傾倒しているダブやレゲエの要素もぶち込もうと思いつく。そこでドラムとベースは、細野流のスカないしレゲエであるところの「Exotica Lullaby」をトリビュートするものにした。
上モノは原曲にも入っているフルートのフレーズを活かすことを決めた。なぜなら池田さんが参加してくれるからだ。であれば、ストリングスの印象的なカウンターメロディも簡略化してフルートとオルガンで演奏するのが良さそうということで、上モノは原則的に原曲に準拠するという方針が定まった。ギターのフレーズも原曲のシンセのフレーズをアダプトしたものだ。
問題はイントロだ。ド頭の下降フレーズはギターで弾けても、後半の上昇する速いフレーズは私には弾けない。しかし、我々には池田さんがいる。というわけで速弾きの箇所をお願いした。
音楽がおもしろみよりも先に来るのが私という人間だ。ギャグで「風の谷のナウシカ」を選んだわけではない。とはいえ、もう何年にもわたりトリプルファイヤーというバンドに従事しているから、我々が「風の谷のナウシカ」をカバーすれば、おかしみが生じるのは避けられないこともわかっている。
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