私の住所不定無職低収入時代
mei ehara「住所不定無職低収入」が収録された『HOSONO HOUSE COVERS』が今月の頭にリリースされた。タイトルのとおり『HOSONO HOUSE』リリース50周年を記念したトリビュート盤だ。私はこのmei ehara版の「住所不定無職低収入」にギターで参加している。尊敬するミュージシャンの大好きなアルバムのトリビュートに関われて嬉しい。
「細野さんのどんなところが好きなの?」と聞かれたら「ベースが上手なところ」と元気よく答えたい。けれども、良い歳の大人なのでもうすこし気の利いた受け答えをしないと人々から呆れられてしまいそうだ。もうすこし踏ん張ってみよう。
細野さんの音楽のどこに魅力を感じているか。「どうしたらそんなことが思いつくの」と驚かざるを得ないフレーズがさらりと出てくるところだと答えたい。メロディにしてもハーモニーにしてもリズムにしても、音楽の節々にセンス・オブ・ワンダー的な何かがみなぎっている。そしてこれはmeiちゃんが作る音楽にも感じることだ。そういう意味で今回の「住所不定無職低収入」は、言わばセンス・オブ・ワンダーとセンス・オブ・ワンダーの掛け算である。
細野さんの作品のなかでも、とりわけセンス・オブ・ワンダーを感じるのは、「Exotica Lullaby」の一節だ。「泣いても涙出ぬのなら」という歌詞から始まる箇所を聴くたびに、いわく言い難い不思議な感覚に襲われるのだ。それは思わず「コ、コズミック……」と口走ってしまうような感覚だ。そして、何度も聴いているにもかかわらず、いまだにセンス・オブ・ワンダー的な何かがフレッシュに感じられるからすごい。魔法がかかっているように思えてならない。
mei ehara バンドでは、ある程度アレンジが固まってからギターのフレーズを考えるのが定番化している。しかし今回は、細野ファンとしてアレンジの土台を考える段階から音頭を取ることをまかされた。
バンド内ではすでに「原曲のアレンジから極力離れたほうが良いよね」「ハネないほうが良いよね」といったアイデアが出ていたから、それらを加味しつつアレンジに着手した。リハモを施し、グルーヴのイメージを決めて土台を作った。そこから皆でアイデアを交換し、それぞれ自分のパートを考えて、アレンジを固めていった次第だ。
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