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【7/12中日戦◯】その1本が、打った本人とそして見た誰かの明日の生きる力になりますように
「高津監督は、あとは並木に選球眼を磨いてほしいと言っていましたが」と実況が言うのを聞いて、「選球眼を磨くというのは、これ、難しいんですよね」と、解説の井端さんが言った。「もちろん大事なんですけれど、そう言われることで、特に若手は思い切りの良さが失われたりする」と、言った瞬間、並木くんはセカンドゴロに倒れた。なるほど、こういうことなのか。と、私は思う。
「…と、こんなふうに色々言っていますけれども、こういうのは全部経験ですからね。彼はまだ、大卒の24歳でしたっけ?これからこういう打席も学んでいくんです」と、井端さんは続けた。名手の、優しい解説である。
でもまったくもって、そのとおりだ。思い切りの良さと、選球眼に表れるような慎重さの両立はなかなか難しい。2年目や3年目のむねちゃんがぐんぐん成長していったのは、「三振してもいいから思い切り振ってこい」という方針があったからこそだろう。でも並木くんはもちろん、そういう「三振かホームランか」という選手ではない。間違いなく、選球眼を磨くべき選手なのだと思う。だけど同時に、若いからこその思い切りの良さだったり、パワーだったりを、見守っていたいなとも思う。全て経験になっていくのは、みんな同じだ。
そんな並木くんが、ゆっくりと走るところを、今日初めて見た。先頭打者ホームランを、打ってのけたのだ。え?なに?え???と、テレビのこちら側の戸惑いは、なんだか球場にもベンチにも同じみたいに見えた。子供部屋で休んでいた息子が「なに!!!」と、とんでやってきた。
キャンプで、とにかく並木くんをよく見かけた。がんばってるねえ、と、子どもたちと何度も話した。とにかく速い並木くんを見ながら、「今年は並木くんの年かなあ」と話したりした。
試合に出始めた並木くんは、「思い切りの良さ」で、猛スピードで2塁に到達したと思いきや行き過ぎてアウトになったりした。盗塁を試みるもなかなかうまくいかなかったりした。うまくホームに帰れず点が取れなかったりもした。そして守備でミスがあったりもした。
心配になっちゃうような暗い顔で球場をあとにしつつ、でもそれを糧にするようにふんばって戻ってきた。そして、少しずつ打率を上げ、1番を打ち始め、そして今日、なんとまあホームランを打ち、いつもは全速力で駆け抜けるダイヤモンドをゆっくりゆっくり一周した。
若手の成長をこんなにも目の当たりにするというのは、野球を見る醍醐味の一つだな、と、つくづく思う。課題がまだまだあったとしても、それはすべて、伸びしろなのだ。
試合中、とても悲しいニュースを目にした。がんばる誰かを、自分勝手な正義で追い込んでいく現実が、世界に溢れている。許されちゃいけない、悲しい現実がある。勇気を持って声をあげる人たちに、勇気のまだぜんぜん足りない私に何ができるのか、もっともっと考えていかなきゃ、と思う。
いろんな声が、あふれている。だけど、どうかそれに心を損なわれないで、目の前のことに向き合って、一歩一歩進んでいてほしいなと思う。悪しき声にかき消されがちな良き声が、ちゃんとあることを知っていてほしいと思う。私はそういうものを伝えていける、そんな仕事をしていきたいと思う。心から。
何かを打ち返すようにホームランを打った並木くんとむねちゃんのその1本(あるいは2本)が、また明日からの糧になりますように。このホームランに励まされる誰かが、明日を強く、生きられますように。
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