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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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#負けた試合

【4/24阪神戦●】「かさ、たのしいね!」と、阪神ファンの小さな男の子が言う

試合は、11-3で負けていた。ぼろ負けである。 ぼろ負けの、雨の神宮に、オスナのご機嫌な登場曲が響く。むすめは「なんか、この歌、ディズニーランドみたいだね!!」とにこにこ言う。私は思わず、笑ってしまう。 そうだそうだ、ここはディズニーランドなみに楽しい神宮球場なのだ。10点取られようと11点取られようと、野球は楽しいものだ。(たぶん。)私は最後のウーロンハイをぐっと飲み干し、「オスナーホームラン打っていいよー」とつぶやく。 オスナは、ライトフライに倒れた。「…まあ、こう

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【4/22阪神戦●】森岡コーチとてっぱちの、全力疾走

いつも思うのだけれど。 私は、森岡コーチがコーチャーズボックスまで、ベンチから全力疾走する姿を見るのが好きだ。 それが、6点差で迎えた9回の裏でも。 森岡コーチが三塁のコーチャーズボックスに入ったのと同時に、てっぱちは打席に立った。 私の好きな曲とともに出てきたてっぱちは、初球を打って全力で一塁に向かった。それはショートゴロとなり、あっという間にアウトになった。 私の好きな曲、なんて言ったけど、この曲を好きになったのは、てっぱちが登場曲にしていたからだ。それで知った

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【4/19◯4/20●中日戦】打線は水物、と言うけれど

19日◯ その打球は、空でも飛んでいるかのように、なかなか下に降りてこなかった。あまりにも降りてこないものだから、高く飛んだフライになってそのまま誰かがキャッチするんじゃないかと思った。 でもそれはナゴヤドームのスタンドの中断に、ようやく落ちてきた。待ちに待った、待ちすぎた分が詰まったような、そんな、大きな大きな村上くんのホームランだった。 けいじくんが先発の日、高津さんは「今は打線がそんなにたくさん打つという状態ではないので、ロースコアの展開で粘り強く勝てれば」と、言

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【4/16横浜戦●】 御茶ノ水のレコードとコーヒーとヤクルトと

このあほかというほどに仕事が立て込んでいる中、夫はにこにことロス出張に出かけていった。ロス…?よくわからない。わからないのでとりあえず、子どもたちとおいしいものを食べにいくことにした。 ポール・ボキューズ、お食事と雰囲気とお値段のバランスが絶妙でだいすきです。赤ちゃん連れ(うちはもう赤ちゃんいないけど)でも気兼ねなくいける上に、「特別感」がしっかりあって、お値段高すぎないって、実はなかなかない。ホテルもいいけどホテルはやっぱりちょっとここよりはお高い。もちろんそれも「特別感

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【広島戦4/12◯ 4/13●】調子の波は誰にもあるけれど、じたばたせずにぐっと。

これは、13日広島戦、8回裏に塩見が出塁し、盗塁も成功させ、てっぱちも四球を選び、一死1,2塁で4番村上くんと5番青木を迎えたものの、二者連続三振で終わったときの私の表情である。カワウソである。 たしかにまあ、そうだ。前日の試合でもなかなかクリーンナップが打てなくて、試合を決めてくれたのは5番に入ったケリーの押し出しと、6番長岡くんのタイムリーだった。 でもその形が、いつだってうまくいく、わけではない、もちろん。やっぱり、「打つべき人が打つべきところで打つ」というのは、チ

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【4/9巨人戦●】長岡くんが見せた悔しそうな表情の、その先に

サヨナラ勝ちする日があれば、サヨナラ負けする日もある。今日も私は「追いつく」と「勝ち越す」は違うんだなあ…と、遠い目をしながらそう思う。そうは言っても今日の追いついた瞬間は、もう随分前のことのようだ。7回以降は両者点が取れず、均衡した試合は緊張感を抱いたまま、延長線に突入した。 勝ち越しのチャンスは思えばたくさんあった。気づけばヤクルトは9本のヒットを放っていたし、何度も得点圏にチャンスを進めていた。でも高津さんが言うように、「あと一本」が出なかった。うめちゃんが打たれた「

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【4/7中日戦● 4/8巨人戦】「追い上げる」「追いつく」「勝ち越す」の大きな差と「流れ」のこと

4/7中日戦● 「こういうところで、勝ち越しておきたいんよなー…」と、私は思わずつぶやく。反撃のタイミングで、「あと1点」まで追い上げるのと、「同点」まで追いつくのと、「勝ち越す」のでは、大きな差があるのだ。 できるだけ勝ち越しておきたい。そうして流れをこっちにもってきておきたい。例えば今日であれば、松本くんが二日連続の2ラン(!!)を打って3-4まで追い上げたところだ。流れは一気に、ヤクルトに傾いたように思えた。だけど追い上げは「あと1点」のところまでだった。そこから勝

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【4/5中日戦●】 シミノボの悔しさも、村上くんの悔しさも

少し送れて神宮に到着した瞬間、ヤクルトは2失点した。「着いたらすぐ失点!」と、言いながら私はウーロンハイを飲む。なんせ、お昼にこどもたちとラ・ベットラ・ダ・オチアイへ行き、絶品パスタとともに白ワインをいただいたのである。ここはなんとなく、ビールではなくウーロンハイにしておく。(でも神宮のウーロンハイ、なかなかに、濃い。) 「萩の湯のウーロンハイ並みに、濃い。」と、むすめに話していると、あっというまにヤクルトは5失点を許していた。

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【3/31巨人戦● 4/1横浜戦●】おでんと京都とヤクルトと

3/31巨人戦● 必死に働いて得た貯金を、あっというまに使い切る。 というのはまあ、何を隠そう私の得意技でもある。だからもちろん、開幕三連勝で必死に貯めた貯金を、直後に三連敗で使い切るヤクルトにとやかく言う資格は、一切、ない。 京都は四条にある、ほんとうにすばらしいおでんやさん「蛸長」へ行こうとしたら、お店の外で待つ人が数組いた。そりゃそうだ、おいしいもの、と、列に並び、おもむろにDAZNをつける。じゅりは、あっというまに一回表を終わらせていた。 あたたかくなったと思

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【3/30巨人戦●】電車を見つめる3歳と、ヤクルトを眺める38歳と

実家でおじいちゃんの四十九日のおつとめを終え、一息ついていた。なんとなく、まだ帰ってほしくなさそうなお父さんが、「かつおのたたきあるで」と言うので、お庭からおねぎをとってきて細く切り、それをどっさり乗せて食べることにした。「ローストビーフもあるで」と言うものだから、それもサラダにし、「ビールもあるで」と言うものだからビールをグラスに注いでいたら、もう試合は始まっていた。 慌ててテレビをつけると、解説のたてさんが、カツオさんを絶賛しているところだった。 これはいいものを聴け

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【3/29巨人戦●】 エラーのあとの、1本のヒットと、未来の希望

思うに巨人戦というのはいつも、なにかと意味のある局面で訪れる。「ここで勝てば順位が上がる」とか、「優勝に近づく」とか、はたまた「感染症で主力が一気に脱落したピンチ」とか、「16連敗の真っ只中」とか。(…いやそれは、全チームに当たる。) 今日は、「カイマクサンレンショウという見たこともないものを見て勢いづいたあとの神宮開幕戦」、である。

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【11/25日本シリーズ オリックス戦●】ほんとうに幸せな時間は、振り返ったときにあとからわかるもの

スーツの上からオリックスのユニフォームを着たお兄さんが、熱心にグラウンドを眺めていた。 先発の山﨑が三振を奪うたび、静かな、でも気持ちのこもった拍手を送り、攻撃の時には応援団の太鼓のリズムに合わせて手を叩く。 横顔が宮本くんに似てるな…とか思っていたら、立ち上がった姿を見て驚いた、それは「お兄さん」じゃなくて、学生さんだった。スーツだと思ったのは、制服だったのだ。 学生さんは、オリックス側に積み重なっていく点数を見ながら、ほんとうにうれしそうに手を叩いた。素直な喜びが、

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【11/20日本シリーズ オリックス戦●】優しいマクガフの、力強い貢献があったから

こちらの記事トップと、記事内のお写真は、Motoyama Yuki @motolevel さんにいただきました!ありがとうございます! 「悔しいですが、選手みんながこの大舞台で全力プレーできている姿が観られて嬉しくて、現地観戦って改めて良いですね」 とおっしゃっていて、ああそうだ、ほんとうにそうだな、と思いました。この時期に野球を楽しめること、それはほんとうにしあわせなことなんですよね。 「さ、酸素が足りない…」と、フラフラになりながら私は、リビングの窓を少し開けた。「空気

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野球が好きな雄平が、大好きだ。【11/1広島戦●】

「センター塩見に代わりまして、ライト、雄平」のコールが流れると、直前に花束を受け取っていた雄平は、花束をグローブに持ち替え、にこにことうれしそうに笑いながら、ライトの守備位置に向かって駆け出していった。 直後、球場には「長岡に代わりまして、ピッチャー、石川」のコールが響いた。ブルペンで投げていたカツオさんはお水を飲み、ライトの守備につく雄平と、遠くからグータッチを交わした。 試合の途中で引退セレモニーやっちゃうのか、優勝セレモニーがあるからかなあ、と、少しさみしく思ってし

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