令和5年度予備試験 口述試験2日目 民事再現
私)民事○室○番です。よろしくお願いします。
主査)おすわりください。
私)はい、失礼します。
(主査)今からパネルに書いてある事例を読み上げます。パネルは手に持って構いませんが、裏返さないで下さい。では、よく聞いてください。
◇パネル(右側に簡単な図がありましたが、省略します)
あなたは、Xから依頼を受けたPです。令和11年3月31日、Yに対して訴訟を提起しようとしています。
1. Xは令和5年7月1日、Aに対して以下の約定で100万円を貸し渡した。
弁済期 令和6年3月31日
利息 10%
2. 令和7年4月1日、Yは、Xと、1の消費貸借を連帯保証する旨を契約書によって合意した。
3. 令和7年3月31日、【A又はYは】Xに利息と遅延損害金に加えて元金50万円を支払った。
4. その後Aは行方不明となった。令和11年3月31日現在、XはYに残元金50万円と遅延損害金を請求したいと考えている。
主) 請求の趣旨は何ですか?
私) えーーーっと、、、「被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する...令和5年7月1日から令和6年3月31日までの...年10%の割合による金員年の割合による金員....及び令和6年4月1日から支払い済みまでの...年3%の割合による金員を支払え」となります(主査、途中でこりゃダメだみたいな感じで頭を掻き出す)。
主) (首を傾げながら)利息っている?パネルの3番よく見て。
私) すみません!既支払い済みでした。(ヤバイヤバイヤバイ。問題ムズい!主査ガチャ外したか!?)
主) あとさ、遅延損害金って3%なの?
私) えっと、、、法定利息が3%なので、それでいいのかな、、と思いました
(アババババババ)
主) (背もたれにかけながら、横柄な感じで。)え、本当に?利息10%って書いてあるけど。それでいいの?
私) 失礼しました。法定利息より任意の利息の方が割合が高い場合はそちらに合わせる規定があるので、「年10%の割合による金員を支払え」となります。
主) ...いつから?
私) えっと、令和6年4月1日から。。
主) パネル3もっかい見て。
私)すみません、令和7年4月1日からでした。。。(完全にパニックだ)
主) はい、では訴訟物は?
私) 保証契約の基づく保証債務履行請求権 と 履行地帯に基づく損害賠償請求権です。
主) え?ほんとにそうですか?
主) えっと、その、、遅延損害金を請求したいので、、、、あっ! 保証債務なのでいらないですね!撤回します!!
主) (頷く)なんでいらないの?
私)保証債務に履行遅滞も含まれるからです。
主) うん、もう少し詳しく。
私) はい。保証債務は利息も、遅延損害金も、全てを含めて保証するものなので、訴訟物も保証契約に基づく保証債務履行請求権1個になります。
(いい加減落ち着け自分...)
主) はい。では次です。Yとしてはどのような抗弁が考えられますか?
私) 消滅時効の抗弁です。
主) (頷く)何について?
私) えーっと、、その、、、うー、、主債務です。
主) それだけ?
私) あー、、えー、、保証債務もです。
主)そうですね。両方主張できるんですよね。
主) では次の質問です。パネル3【A又はY】となっていますが、Aが支払っていたとします。Yは、保証債務の消滅時効の抗弁を主張したとします。Xは、どのような再抗弁を主張しますか。
私) 時効の更新の抗弁を主張します。(やべ、「抗弁」って言っちゃった...)
主) (頷いて)なぜですか?
私) Aの支払いにより、時効の更新が生じました。その結果、付従性により、保証債務の時効も更新されます。(抗弁って言い間違えたのはスルーなのね。)
主)(怪訝な顔で)あなたは、付従性によって保証債務の時効も更新されると、そういう解釈なんですね。
私)えーっと、そうですね。。あと、民法に主債務の時効完成猶予、更新が保証債務にも及ぶとした条文があります。
主)(目を見開いて)その条文わかりますか?
私) うーーーん、たしか450条辺りだったと。
主)まぁ、そうですね。457条1項です。あと、時効の更新ってことだけど、もうちょっと、その、債務の...?
私) 承認です。
主) はい。今度はYが連帯保証債務の履行として、支払ったとして考えてください。Yは保証債務の時効を援用しました。Xはどのような再抗弁を主張すべきですか。
私) はい、保証債務の消滅時効の更新の再抗弁を主張すべきです。
主) (頷いて)Yは、主債務の時効を援用しました。Xは再抗弁として何を主張すべきですか?
私) え、、、何も主張できないと思います。
主) 理由は?
私) そもそも保証債務は更新されていて、Yの主張は主張自体失当だからです。(大混乱中)
主) え?主張自体失当?
私) あ!すみません。Yは、保証債務の支払いをしているので、保証債務については更新されますが、時効の相対効(迫真の強調。主査副査頷く)により、主債務については更新の効力は及びません。よって、主債務時効援用の主張は認められ、Xとして出せる再抗弁はないと考えました。
主) はい。パネルを裏返して下さい。
◇パネル裏面(右側に簡単な図がありましたが、省略します。日時は不正確です)
R5. 7/1 XA間で消費貸借契約締結
元金 100万円
利息10%
R7. 4/1 XY間で連帯保証契約
R7.5/31 A死亡。YはAの息子であり唯一の相続人である。
R7. 7/31 Yが連帯保証の履行として50万円と利息・遅延損害金を支払う。
R11. 3/31 XがYに訴訟を提起
主) 令和5年の消費貸借契約締結、連帯保証契約までは同じです。令和7年5月31日、Aは死亡しました。YはAの息子で唯一の相続人だったとします。令和7年7月31日、YはXに連帯保証の履行として50万円と利息・遅延損害金を支払いました。Yは法廷で、先程と同様、主債務の時効援用の抗弁を主張しました。この場合、Xは再抗弁としてなにか主張できますか。
私) えーーっと、その、、できません。(分からんから、とりあえず原則を答えて、後は誘導に乗ろう。)
主) それは先程と同じ理由で?
私) はい、そうです!(元気に頷く)
主) うん、でもね、A死んでるよね。
私) そうですねーー。死亡したということは、相続が起きて、Aは主債務も承継して。。。あ!混同が起きる?
主) (目を開いて頷く)混同ですね。混同ってなんですか?説明して下さい。
私) えーーっと、混同というのはですねぇ、そのぉなんというか、、いやー、あのその、同じ目的の債権債務?(主副頷く)が同じ人に帰属して、何か消えるやつ、そう、消滅する効果があります。
(混同なんて分かんないよ泣)
主) うん。で、何が消えるの?
私) 主債務...?
主) いや、だって混同だよ?
私) どっちもです(ヤケクソ)
主) そうですね。どっちも消えます。とすると?
私) 主債務が消滅する...?
主) いやでもさ、同目的の債権債務云々って言ってたじゃないですか。今回は主債務と保証債務ですよ。
A えーっと、、あ!!(ここで答えに気付く)A死亡により主債務と保証債務が併存します。その状況で保証債務の一部履行をしたら、債権者Xの信頼を害してしまいます。ゆえに、Yは主債務の消滅時効を主張できない、というべきです。
(混同のクダリ何だったんだ。。頷いてたからそれが正解かと思っちゃったじゃないか。)
主) (頷いて)では、Aは行方不明になっていたことから、A死亡の事実をXが知らなかったとしたら、どうなりますか?
私) その場合は、Xから再抗弁を何も出せません。
主) (頷いて)何で先程と違って今回はダメなんですか?
私) はい。先程の事例では、XはA死亡を知っていたので、その状況で主債務者としての地位を併せ持つYが保証債務の履行をした場合、Xとしては、「あ、こいつは支払ってくれるんだな」っていう信頼が生じます。対して、今回の事例ではXはA死亡の事実を知らないので、主債務についての上記信頼は生じません。よって、今回は再抗弁として何も主張できません。
主) うん、信頼が生じるってのもそうなんだけどさぁ。もっとこう。。Aが死んで、相続起きて、主債務と保証債務がYの元に併存してるわけだよね?
私) あ!!先程の事例では、Xが相続のことを知ってて、Yの元に主債務と保証債務が併存していることも知ってるので、この状況で保証債務の一部の履行をすることはXからすれば主債務の履行に他ならず、主債務の承認に当たり得ます(ここで主副頷く)。対して今回の事例は、相続や併存のことはXは知らないので、Yが保証債務の一部を履行しても、Xからすればそれは保証債務の履行であって主債務の履行では無いので、主債務の「承認」に当たりません(主副大きく頷く)。よって、やはりXは再抗弁を主張できないことになります。
主) はい。では倫理の問題です。パネルの表の図を見てください(大した図じゃないのでは省略します。)Xは、主債務者Aと連帯保証人Yを共同訴訟の形で訴えました。Yは、もし敗訴したら、Aに求償請求をしようと考えています。あなたは、AとY両方から事件の依頼を受けました。引き受けるべきですか?
私)引き受けるべきではないと思います。
(どっちだろう。とりあえず、否定しといてその後の問答で分かってるアピールすればいいか。)
主) なぜですか。(副査怪訝な顔でこちらを睨む)
私) 利益相反、倫理規定28条3号に当たるからです。
(あ、やっぱ受任していいのね。分かってるからそんな怖い顔しないで。)
主) でも、まだ求償請求に関する争いは起こってませんが。
私) はい。まだ争いが「顕在化」(頷く)してないので、引き受けることはできます。ただ、その場合、敗訴して求償請求する場合、その依頼を受けることができないことは説明すべきだと思います。
主) うーん。その説明でいいんですかね。じゃあ、AY敗訴後、控訴したとして、同時にYはAに求償請求を希望しています。この場合弁護士であるあなたは、どうすべきですか?
私) 辞任すべきです。争いが顕在化して利益相反が現実化しているので。
主) (頷いて)そうですね。とすると、さっきの件はどう説明すべきだった?
私) 敗訴後、求償請求をするような事態になった場合は、辞任する旨を説明すべきでした。
(そうか、ここまで説明せなアカンかったのか)
主) はい。(副査へ)何かありますか?
副)ございません。
主)以上となります。
私) ありがとうございました!
(うわ〜やらかした。。でも難しかったよね?何はともあれ、これで口述から開放される!!開放感えぐい!!!)
【参考情報】
・2日目午後に受験。
・主査 マスクメガネの40代男性
副査 マスクの50代女性
・両名とも無愛想だったが、結構頷いてくれた。
・試験時間 20分強
・執行、保全なし。
・倫理あり。