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天然酵母パン屋さんのようなガレージ種菌メーカー

一般的なキノコ農家はまず、「種菌」を「種菌メーカー」から購入し、その種菌を原木やオガクズの培地で「拡大培養」する。そして菌糸が培地に蔓延してきたところで、水分量や温度変化による刺激が加われば子実体(きのこ)が発生する。

つまりキノコ農家は「拡大培養屋」ということができる。

種屋→拡大培養屋→消費者

この構造は野菜の種やパン酵母などの業界も似たようなものがありまして、

・野菜では大手種苗会社のF1品種(雑種第一代)
・パン酵母では発酵力の強力な酵母を選抜して製造されています

F1品種は雑種第一代なので形質が一定で、市場のニーズを満たすにはもってこいなのですが、そこからタネをとった第2代目はメンデルの法則により形質がバラバラになってしまいます。よってF1を使っている農家さんは毎年、種を種苗屋さんから買う必要があります。


一方でこの流れのうち川上の二つをいっしょにやっちゃう方々がいます。

・野菜では「種とり」をしながら在来野菜を繋いでこられた農家の方々。
・酵母では野生の「天然酵母」をお招きして発酵させる天然酵母パン屋さん。

どちらも素敵な営みであり、その土地の味をあらわした魅力的な作品を作られています。

ではキノコ農家で川上の2つをやっちゃうにはどうすれば?

天然酵母パン屋さんが、その土地の野生酵母をつかまえてくるように、
その土地のキノコをつかまえてきて分離培養し、種菌をつくるには?

キノコの種菌を作るには「無菌操作」をできる環境が必要であり
・クリーンベンチ
・オートクレーブ (高圧蒸気滅菌器)
などの機器が必要になってくる。
そしてなにより無菌操作を行える技術がいる。。。

そんな人どこに???
そんな設備どこに?

なんと
奇跡的にいたんですね。
すぐそばに。
ここにいるぜ!と忌野清志郎さんばりに手を挙げてる奴がいました。
そう、自分です。
農業高校時代から大学院時代まで、足掛け9年くらいの長きにわたって
無菌操作ができる環境にいた自分。
そこで菌類と戯れて
そこで分離培養とかしてたなと
もう体にしみついていますよ無菌操作

次に設備。
最初はDIYで無菌操作のブースを作ったりしていましたが
なんだかんだでクリーンベンチが手に入り
さらにオートクレーブはなくとも巨大な圧力鍋20Lをメルカリで入手し
さらにさらに廃校の理科室を使えるようになったりと、
幸運が重なり、願ったものが揃いました。

これらの設備は私の意識に大きな変容を与え、
そして急に視界がひらけたような感覚になりました。

いままでは
野生のキノコに出会った場合、種類は何か?食べれるか否か?
そして食べれるキノコならばどこにたくさん生えているのか?で、意識が止まっていた。
美しいキノコを見ても、
なんて綺麗なキノコ^0^→なんていうキノコ?→きれいに写真撮るには?で、意識が終わっていたのですが

設備が整ってからは
「この子(キノコ)どうやってつかまえよう(培養しよう)かな?」
「つかまえたらどんな用途に使おうかな?」と
まるでモンスターボールを持ったサトシのような感覚なのです。

またその得られた菌株はオリジナルであり、
栽培方法を開発するとなると、それは知的財産になりうる。
もう拡大培養屋の範疇を逸脱し始めちゃったわけですね。

ガレージで企業したITベンチャーみたいな感じでもあり
天然酵母パン屋さんのように野良菌をつかまえてくる感じ
いわゆるガレージ種菌メーカーみたいな存在

前置きが長くなりましたが
私がやろうとしているのはそんなガレージ種菌メーカー。

しかも食用のためではなく、観賞用に重きを置いて。

へんに手を加えずに、野生のワイルドな美キノコを
つかまえて、培養して、種菌にする。 
そんな日々をもうイメージできてしまっているので
ワクワクした毎日をすごしている。

大学、そして大学院までいかしてもらって
ふつうは大きな企業などに就職するかとおもえば
せずに就農
しかもマイナーな原木椎茸をつくる道へ入った自分は
その大学までの経験を野に捨てたような感覚に陥る事があったのだけれども
Conecting dots
点と点はつながってきて
また
投げたブーメランは帰ってきて
いまやその手にモンスターボールを持つようになった。
今までの経験に感謝し
よもや研究者になった、かつてのキノコ少年は
きのこと共に
地球の嬉しさと人類の嬉しさのために
めちゃめちゃ小さなスタートを切ったのでした




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