インターンプログラム【4】~「教育施設」と「文化施設」~
この回では、ミュージアムは「教育施設」なのか、あるいは「文化施設」なのか。その違いを考える「視点」についてお話します。(2021.12.18)
🌕〈S〉
「Museumソムリエ」インターンプログラムで実施された「インターンアンケート」の中で、
□ミュージアムは、「教育施設」と「文化施設」のどちらだと思いますか?
という質問がありましたが、
どんな回答があったんでしょうか?
🌑〈AC〉
その質問の選択肢は5つ、
◯教育施設
◯文化施設
◯どちらでもある
◯どちらでもない
◯その他
回答数15のうち、
「どちらでもある」が「12」
「教育施設」が「2」
「文化施設」が「1」
でした。
🌕〈S〉
「言葉の定義」の問題でもあるので、
どの「視点」から見ているかがわかる質問かもしれませんね!
🌑〈AC〉
梅棹忠夫(1920-2010、生態学出身の文化人類学者で国立民族学博物館初代館長)は、
「教育」と「文化」の違いを次のように説明しました。
ー教育は「充電」、文化は「放電」ー
あくまで「比喩」ですが。
🌕〈S〉
うまく説明できませんが、
すっごくわかった感じがします!
🌑〈AC〉
教育と文化は、ともに人間にとって欠くことのできないもので、混用されることもあるからこそ、
ベクトルを異にする「別物」であることを示した説明だと思います。
🌕〈S〉
「ベクトルが異なる別物」と聞いて、下の図を連想してしまいました。
【1】「運営論」と「利用論」の中に出てきた、組織体制のカタチ「△と▽」も、ベクトルの違いで「質の異なる別物」になってました。
🌑〈AC〉
長く、博物館計画や博物館運営の実務に関わってきた経験で言いますと、
行政や専門家の多くが、「ミュージアムは文化施設である」という認識で活動していると思います。
ミュージアムの空間は「文化空間」という表現になります。
教育という言葉を使う場合は、あくまで「社会教育」であり「社会教育施設」です。
社会教育法で、公民館、図書館とともに博物館が「社会教育施設」という「言葉」で位置づけられていますが、
社会教育法での「社会教育」の定義は、
別物であるからこそ「学校教育」と「社会教育」とを区別することが主眼にあります。
ミュージアムを「社会教育施設」と呼ぶのは社会教育法上は正しいと言えますが、単に「教育施設だ」という言葉遣いには注意が必要性です。
もし使用した場合には、「専門外」や「素人」の方の発言と聞こえる可能性があるからです。
🌕〈S〉
一般的に、
教育施設=教育を行う施設
文化施設=文化を享受する施設
という理解で考えるなら、
図書館、ミュージアム(広義の博物館)、劇場などを「文化施設」と考えるのがしっくりすると思います。
🌑〈AC〉
「教育施設」と「文化施設」のポジションをプロットする図を作ってみました。
座標軸を、
上に「主体的」、下に「受動的」
右に「経験」、左に「知識」
と置いた場合、
右上が「文化施設」
左下が「教育施設」
のフィールドになります。
図書館、公民館、劇場、学校、M(ミュージアム)をプロットしてみました。
また、
学校の生徒がミュージアムを団体利用する場合を「S」として置いてみました。
🌕〈S〉
この時の生徒さんにとっては、
ミュージアムも「教育施設」になっているということですね。
🌑〈AC〉
皆さんそれぞれ、
この座標フィールドに、プロットしてみてください。
座標軸をいろいろと入れ替えてみてもいいですね。
ミュージアムの本質に迫ることができるかもしれません。
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