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インターンプログラム【15】~ミュージアムは「プログラム」?~

この回では、「ミュージアム」と「プログラム」の関係を整理し、「ミュージアムを利用する」とはどのようなことか、について考えます。(2022.2.3)

🌕〈S〉
今日のテーマは、
ミュージアムは「プログラム」?
です。

🌑〈AC〉
ミュージアムが、「プログラムの形式」を備えているか、ということです。

🌕〈S〉
「利用」するものは、
必ず「プログラムの形式(時間×空間×コンテンツ×利用者)」になる
んでしたね。

🌑〈AC〉
それでは、ミュージアムの4つの機能に戻って整理してみましょう。
 ①収集保存
 ②調査研究
 ③展示公開
 ④教育普及

※出展:加藤有次「博物館学総論」(1996)

🌑〈AC〉
 ①収集保存
 ②調査研究

①と②は、利用者と直接「接点」を持たない、利用者から見ると「バックヤード」にある機能ですから、基本的には「プログラム」ではありません。
「プログラムの形式」を構成する4つの要素(時間×空間×コンテンツ×利用者)を充たさないからです。

🌕〈S〉
「利用者」のいない「プログラム」は成立しない、からですね。

🌑〈AC〉
 ③展示公開
 ④教育普及

③と④は、利用者を前提にしている「機能」ですから、必ず「プログラム」でなければなりません。
「プログラムの形式」を構成する4つの要素(時間×空間×コンテンツ×利用者)を充たしているかを見てみましょう。

🌕〈S〉
「教育普及プログラム」と言いますから、教育普及機能は「プログラム」ですよね。

🌑〈AC〉
講演、講座、ワークショップなどは、
 ①時間(いつ)
 ②空間(どこで)
 ③コンテンツ(何を)
 ④利用者(どうしたら参加できる)
という、
「プログラムを構成する4つの要素」がハッキリしています。

🌕〈S〉
「その時、その場所でだけ」で、
「コンテンツと利用者が相対する」ので、
「プログラム」は基本的に、
「ライブ」で「仮設」なんですね。

🌑〈AC〉
ただ、「教育普及」という概念を使用していることが、プログラムの多様性を狭めているかもしれません。
下の図は「プログラムの領域」ですが、
縦軸に、主体的⇔受動的
横軸に、経 験⇔知 識
を置いて「4象限」で示しています。

「教育」の主語は「教える側」であるため、「教えられる側」は「受動的」になりますし、教えることの対象は「知識」に偏重していると考えると、
左下【Ⅲ】の「教育」領域(知識×受動的)から抜け出すことができていないと感じます。

🌕〈S〉
左上【Ⅱ】の「学習」領域(知識×主体的)
右上【Ⅰ】の「文化」領域(経験×主体的)
といった、
利用者主体領域の「プログラム」の動向に注目したいと思います。

🌑〈AC〉
それでは、「展示公開」はどうでしょうか。

🌕〈S〉
「仮設の展示」(企画展、特別展)と、
「常設の展示」(常設展示)では、
どんな違いがありますか?

🌑〈AC〉
「空間形式のの次元」で、
ミュージアムでいう「資料」は、
0次元の「点=モノ」、
「展覧会」は、
1次元の「線=物語」にあたる。
「点=モノ」をピックアップし、
「線=物語」を構成する
のが「展覧会」
だと説明しました。
「展覧会」の利用者は、構成された「線=物語」を辿るために「順路」があるということで、「順路形式」として整理しました。

🌕〈S〉
1次元の「順路形式」(利用者1:1資料)が「展示」の基本になっているということでしたね。

🌑〈AC〉
「仮設の展示」(企画展、特別展)は、
 ①時間(いつ)
 ②空間(どこで)
 ③コンテンツ(何を)
 ④利用者(どうしたら参加できる)
という、
「プログラムを構成する4つの要素」を充たしているので、「仮設のプログラム」ですが、
①時間が、複数日の「期間」であることが多く、相対的に「ライブ性」の低い「プログラム」です。

🌕〈S〉
多くの「美術館」は、
この「仮設のプログラム」である「美術展」が基本
になっていますね。

🌑〈AC〉
「常設の展示」(常設展示)は、
 ①時間(いつ)
 ②空間(どこで)
 ③コンテンツ(何を)
 ④利用者(どうしたら参加できる)
のうち、①時間の限定要素を持っていないため、「プログラム」とは言えません。

🌕〈S〉
「利用」するものは、
必ず「プログラムの形式(時間×空間×コンテンツ×利用者)」になる
のに、
どうやって、プログラムでない「常設の展示」を「利用」しているのですか?

🌑〈AC〉
「常設の展示」はプログラムの要件を充たしていないので、「利用」の対象になりませんから、
利用者が自ら、①時間を限定して、自分でプログラムの4つの要素を充たし「セルフ」で「プログラム」にする必要があります。

「セルフプログラム」を自分で完成することを「楽しい」と感じることもあれば、「面倒くさい」と負担に感じることもあります。
また、この「セルフプログラム」は、
①時間が、複数日の「期間」に及ぶ「仮設の展示」(企画展、特別展)の場合にも必要になります。
「展示」に共通する「ライブ性」の低さが背景となっています。

🌕〈S〉
「いつでもどうぞ」というのは、自分で時間を決めなければならない分、
「利用動機」を大きく削いでしまうことにつながっているように思います。
ニーズが高く利用頻度の高い場合は別ですが……。

🌑〈AC〉
また、
プログラムと「利用ポジション」で示した通り、
「ライブ▶️オンライン▶️オンデマンド」
という、空間制約、時間制約を克服する拡張性も持っていません。

🌕〈S〉
「展示」は、「利用」に必要な要件を充たしていない「構造的」な問題を抱えているのかもしれませんね。

🌑〈AC〉
とくに、
「常設の展示」(常設展示)は、「構造的な解決策」を必要としているように思います。

つづきは、また次回。

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