🟢「原状回復」する展示?~科博企画展「WHO ARE WE」①~【D-001】
2022年9月24日(土)、日本展示学会の関東地区地域研究会に参加する形で、国立科学博物館(科博)で開催中の企画展「WHO ARE WE」に行ってきました。
「問題意識」をお持ちの方には、たくさんのヒントや方向性を感じ取れる「企画展」だと思います。(開催は2022年10月10日まで)
この企画展は、普段は収蔵庫に保管され公開されていない資料(今回は、哺乳類などの標本)を、日本各地の博物館等で展示する「巡回展示」を目的に制作されたものだそうです。
館内の「常設展示」との比較が容易にできるという意味でも、科博の企画展示室で開催されたことは、今後のミュージアムと利用者の関係に大きな影響を与えることになるかもしれません。
どのような企画展なのか、短い動画(1分56秒)をご覧ください。
企画展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」
国立科学博物館収蔵庫コレクション | Vol.01 哺乳類
大きな箱の中から「引き出し」をひきだすと、小さな「標本」が出てきました。
それを見終わったらどうしますか?
次の人が後ろで待っていたら、親切に開けたままにしておきますか?
いえいえ、
次の人が後ろにいても、
必ず「引き出し」を閉めなけらばなりません。
つぎに利用する人が使えなくなるからです。
でも、
ほとんどの人がきちんと「引き出し」を閉めていました!
「引き出し」をひきだしてから閉めるまでが、「一つのプログラム」であり、
自分が引き出したプログラムと、
他の人が引き出すプログラムは別のプログラムなのだと理解しているかのようでした。
つまり、
この展示室の中では、小さな無数のプログラムが連続して起きては終わっていた、そんな感覚になりました。
この「引き出し」を閉めることを「原状回復」と呼んでみると、
「原状」は、すべての引き出しが閉まっている状態になります。
「仮設性」を基本とした文化空間、その代表格である「劇場・ホール」においては、
舞台の上に何もないプレーンな状態である「原状」こそが「変化の起点」になります。
*️⃣空間における「原状回復」の意味については、こちら(「仮設」と「常設」の境界線)をご参照ください⬇️
これに対して、いわゆる「常設展示」は、
すべての引き出しを開けっぱなしの状態だと言えます。
「常設展示」における「変化の起点=原状」は、一体どこにあるのでしょうか?
全面改装ができるまで、20年も30年も「ずーっと変化しない」のは、戻すべき「原状」を見出だせないからなのかもしれません。
⭐