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FUJIFILM の1番好きなレンズ
FUJIFILMのレンズで1番好きなレンズは?と聞かれると、「XF35mmf1.4r」と答える。
もちろん全てのレンズを使ったことがあるわけではないけれど、
このレンズは他のレンズにない特別な画風を持っているレンズだと思う。
特別、高性能なガラスを使用しているわけでもない。スペックには表れにくい、「いい写真」を写してくれるレンズだ。
購入したのは、我が家に子犬がやってきてからすぐの頃だった。当時は50,000円くらいの値段だったと記憶している。
子犬の姿をとても魅力的に写しとってくれた。
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小さくてかわいい子犬の成長期を、このレンズで写すことができてよかったと思っている。
巷では「神レンズ」と呼ばれるXF35mmf1.4r。
レンズの性能指標が高くて高価な材料を使用しているわけではない。
昨今よくある、画面の隅々まで精細に写って、フレアも少ない、コントラスト高くカリカリに写るレンズは、性能は高いのだろうけど、人の心を掴むような絶妙な塩梅の雰囲気を醸し出すわけではない。全てを測ったように完璧な性能を出しても、「いい写真」にはなりにくい。
それは、音楽やファッションなど他の芸術分野でも同じことかもしれない。
音程やリズムを楽譜通り完璧に合わせて、機械で出した音を組み合わせて演奏された曲は人が聞いても感動しないという。
生演奏をする音楽家は、楽譜通りかっちり演奏するわけではないはずだ。そこに「絶妙な塩梅」というものを込めて演奏している。
日本文化の中にも、「空」、「侘び寂び」、「陰翳礼讃」など、計量化しにくい美意識というものがある。
フィルムの色再現にしても、フジは寒色系、コダックは暖色系の色味になると言われる。
それは、その国の文化の中にある美意識を反映したものだと考えられる。寒色から連想される切なさ、儚さといった心情。暖色から連想される、明るさ、陽気さといった心情。
これらの目に見えないものを写真の中に写しとれば、「絶妙な塩梅」とか「神レンズ」だと感じるのかもしれない。
それは計量したスペックとは異なる物差しになる。レンズのMTF曲線や、周辺光量などの性能指標とは相容れない。
神レンズと呼ばれるレンズは、なぜかその、
「絶妙な塩梅」を写真に込めて、その場の雰囲気を写しとるレンズだ。どこか美意識という感性の琴線を、触発しているところがあると思う。