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馬の博物館 その魅力に迫る!

「馬の博物館」は根岸競馬場の跡地に建つ博物館です。今回はそんな馬の博物館の魅力を

【馬の博物館、その歴史】
【企画展に行ってみた!】
【馬の博物館 押しポイント!】


の3つの項目でお伝えしていこうと思います!


馬の博物館、その歴史

 根岸競馬場は1866年(慶応2年)12月、日本初の洋式競馬場として横浜に誕生しました。居留外国人の娯楽施設として設立された根岸競馬場は、後に日本人によっても社交場として利用されるようになり大いに賑わっていたそうです。

第一展示室常設展示より、根岸競馬場一等馬見所の模型

 終戦後、根岸競馬場は米軍に接収され、住宅地やゴルフ場として利用されていました。しかし昭和44年より転機を迎えます。一部接収から解除された国有地の整備が開始され、昭和52年には広大な芝生広場を中心とした根岸森林公園として開園されたのです。そして残った部分の土地には中央競馬会によって競馬記念公苑が開かれました。

 その競馬記念公苑の一角に建てられた馬の博物館では、根岸競馬場の歴史についてはもちろんのこと、様々な種類の馬にまつわる展示を見ることができます。展示の分野も幅広く、芸術作品から民俗学的資料、生物学的資料に至るまで、様々な角度から馬というワンテーマを眺められるのです。

常設展示の様子。根岸競馬場の歴史に触れることができる。
根岸競馬場のかつての様子が描かれた浮世絵。多くの観客で賑わっている。

 上記のような根岸競馬場の通史の他、当時の様子や縁のある人物については常設展示で知ることができます。

参考:根岸森林公園(中区) 横浜市 (yokohama.lg.jp)


企画展に行ってみた!

 筆者が馬の博物館を訪れた9月下旬には、「馬に関する言葉とファッション」と「刀を装う馬たち―中川コレクションより―」の2つの企画展が行われていました(共に2023年10月1日まで)。今回は「馬に関する言葉とファッション」に絞って紹介します。

 「馬に関する言葉とファッション」では、馬に関する日常語や警句、慣用句、ことわざ、四字熟語の由来を紐解き、関連する工芸品や絵画、実物資料を展示しています。また馬や競馬に関係があるファッションにも注目しており、多くの実物資料を見ることができます。
 「馬に関する言葉とファッション」の言葉に関する展示では、例えば「異色」という言葉を取り上げています。"異色の経歴"など様々な場面で用いるこの言葉は馬の毛色にまつわる言葉で、馬の群れの中で一頭だけ違う毛色の馬がいると目立つことに由来しているそうです。
 このキャプションがあるすぐ近くには山本山雪による≪群馬図屏風≫(当館蔵)が展示されていました。黒、茶、灰色の馬の群れの中で、屏風中央の白馬、右手側の黒地に白ぶちの馬は一際目を引いていました。このように言葉の由来を知った後、展示品の鑑賞によって改めてその妥当性に気付くことができるのです。
 これらの展示を鑑賞して、日本にはこれだけ沢山の馬にまつわる言葉があるのかということに驚きました。中には人間の態度や行動、姿形を馬に例えた言葉も数多くあり、日本人が馬を慈しんで自分たちに重ね合わせてきたことが感じられました。また馬の生態や動作に由来する言葉も多く、日本人が長きに渡る馬との生活の中で磨いてきた観察眼の鋭さにも驚かされました。

 一方馬に関するファッションについての展示では、モーニングコートなど実物の衣装を見ることができます。モーニングコートは乗馬服を起源とする男性の正装です。かつて乗馬という習慣が人間の生活において重要なものであり、服飾文化からも不可分なものであったことが伺えました。

 これらの展示を通して、普段何気なく使っている言葉や、目にする機会が多いファッションも実は馬に由来するものだったということに新鮮な驚きを感じました。更に情報を知るだけでなく、当館の馬に関係するコレクションを合わせて鑑賞することができたのも素晴らしい体験だと思います。実物の鑑賞と合わせることで、人間と馬が確かに親密な関係性を築き続けてきたがことが実感できました。
 このように馬は人間にとって切っても切り離せない存在であり、だからこそ言語世界、服飾、芸術作品のいずれにおいてもまさに異色の存在感を放っているのだと気づかされる展示でした。

馬の博物館 押しポイント!

 ここでは筆者がとくに推せる!と感じたポイントを紹介していきます!

馬から広がる世界
馬を知る、見る、触る!
とにかくお得!な入場料

では①から早速見ていきましょう!


➀馬から広がる世界

 まず見て頂きたいのは、これまでに馬の博物館で行われた企画展のタイトルです。

・テーマ展「馬のお世話のいまむかし」(2022年12月10日(土)~2023年2月12日(日))
・テーマ展「季語・馬 四季の風景」(同上)
・テーマ展「近代日本画の中の馬」(2023年2月18日(土)~4月16日(日))
・テーマ展「どこのウマの骨?直良信夫・林田重幸旧蔵コレクション公開展」(同上)
・春季特別展「浮世絵美人と馬」(2023年4月22日(土)~6月11日(日))

 ここに挙げた5つのタイトルを見るだけでも、馬の博物館が多様な分野の展示を行っていることが分かります。これらに一貫しているのは主題が「馬」であることです。馬というワンテーマを様々な分野の視点からとらえることで、個性的かつ馬への愛が溢れる展示が次々と作り上げられているのです。筆者は一匹の動物からこれだけ幅広いジャンルの展示が展開できることに驚嘆しました。まさに馬から世界が広がっていく体験ができるという点で、馬の博物館は唯一無二と言えるのではないでしょうか。

➁馬を知る、見る、触る!

体験機器——馬具をつけよう を体験している様子。(馬の博物館ホームページより)

 ここまでに書いてきたように、馬の博物館では展示を通して馬の様々な情報を知ること、様々な視点から馬を見ること、馬に関連する多様なコレクションを見ることができます。しかし「知る」「見る」だけにとどまらず、「触る」体験をすることもできるのです。
 まず展示室内にある「体験機器——馬具をつけよう」では馬の模型に馬具を装着する体験ができます。もちろん本物ではない模型の馬ですが、馬具に触ることや、模型に触れて馬の体つきを感じられます。また同展示室内では機器を使って自分の馬力を計測する体験もできます。
 更に同公苑内の近くにはポニーセンターがあり、本物の馬に出会えます。普段は乗馬や飼育などの見学のみですが、何とイベントでは乗馬体験やえさやりをすることができます。本物の馬との触れ合いが可能であるロケーションも馬の博物館の魅力と言えるでしょう。
 このように馬の博物館は、馬を「知る」「見る」「触れる」の全ての体験が可能な場所なのです。

➂とにかくお得!な入場料

 当館の入場料は大人が100円、小・中・高校生が30円ととにかく破格です(特別展・企画展開催期間中は変更あり)。更に障がい者手帳をお持ちの方の入館は無料、毎週土曜日には小・中・高校生の入館も無料となります。これだけ安い値段で充実した展示を鑑賞できる点も嬉しいですね。

終わりに

 ここまで【馬の博物館、その歴史】【企画展に行ってみた!】【馬の博物館 押しポイント!】の3つの項目にわたって馬の博物館について紹介させていただきました。以上のように数えきれない魅力を持つ馬の博物館。皆さんもぜひ訪れてみませんか?


博物館情報

馬の博物館
アクセス:横浜市営バス「滝の上」下車すぐ
休館日:月曜日(祝日・振替休日は開館し、直後の平日を休館)
開館時間:午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
料金:【常設展】一般 100円/小・中・高校生 30円(土曜日は無料)

公式サイト:
https://www.bajibunka.jrao.ne.jp/uma/index.php



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