ムサシ

短篇小説を書いてます。 よければ読んでみて下さい。 しずかなインターネットhttps:…

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短篇小説を書いてます。 よければ読んでみて下さい。 しずかなインターネットhttps://sizu.me/musasi

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しずかなインターネット

「しずかなインターネット」を始めました。 しずかなインターネットは文章投稿サイトです。 noteでは短篇小説を書いてますが、自分の思いをたまに書きたくなるので しずかなインターネットには、そういうのを雑文として書くことにしました。ここに書けばいいのではと思う人もいるかもしれませんが、noteでは短篇小説に専念したいと考えています。自分は短篇小説に集中したいのでそれ以外の文章で構成を考えたりと時間をかけたいと思わないのです。 「しずかなインターネット」のコンセプトが ここで

    • 将棋と小説の両立

      X(旧ツイッター)やしずかなインターネットでも、同じようなことを書いたけれど、将棋の対局を再開しました。それから、将棋と小説の両立に苦労している。二つとも頭を使うだけど、頭がどちらかのモードになると切り替えが難しい。 将棋と小説は対局や執筆以外の日常の時間でも、なんとなくではあるが頭の中で将棋や小説のことを考えるのが大事なんだけど、将棋と小説での頭の切り換えがあまり上手くいかない。人間は機械でないので頭の切り替えがスイッチのオンやオフみたいにスパッとはいかないのだ。 それ

      • 文学の極意は怪談にあり

        文学の極意は怪談にあり。 たしか佐藤春夫の言葉なんだけど ホラー好きにはすこぶる評判がいい気がする。 怪談やホラーはジャンルとしては ニッチなサブカルとみなされることが多いため 文学の極意は怪談にありと言われると嬉しくなるのだ。 確かに、ホラー作家以外でも優れた作家は恐怖を描いてる。 夏目漱石の「夢十夜」や村上春樹の「東京奇譚集」など。 人間の感情の中で何より古く何より強烈なのは恐怖なので 優れた作家が怖い話を書くのは当然なことかもしれない。 ここまで文学の極意は怪談に

        • 【短編小説】お見合い

          いい年をして結婚をしない俺に対して この人はいいんじゃないかと、 年上の信頼できる知人が女の人を紹介してくる。 こうして初めて女の人と会うことを俺の中では 「お見合い」と呼んでいる。 というのも、結婚を前提にして会うからである。 大人になると自然に彼女ができて、自然に結婚するものだと 思っていたけれど、俺の場合、そうはならなかった。 若い時に彼女ができて、結婚直前まで行ったことはあるけれど、 それが破局してからは、女とはさっぱり、縁というのがなくなった。 年上の信頼でき

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          【短編小説】天使が舞い降りた日

          高校の修学旅行で南の島から、はるか遠くの北国に来ていた。 ハワイのような暑い島で育った俺はまるで異国に来たような気分だった。 「こんなに寒いのは初めて」と同級生は口々に言う。 むき出しの顔が痛くなる寒さというのは経験したことがなかった。 寒いと頬っぺが赤くなるっていうのは、本当なんだと周りの女の子を見て思った。 新たな観光地に向かう電車の中、俺の隣りでは友達同士で喋っていた。 地元の乗客も何人かいたが、俺たちを全く気にしてないようだった。 「京都って寺院ばかりで、つまんなか

          【短編小説】天使が舞い降りた日

          【短編小説】少女の夢は消えない

          私が少女に会ったのは医者になって二年目の冬である。 入院患者だったが、病人のようには見えなかった。 少女は髪の短い明るい子だった。高校ではバスケットボール部に 所属していて、試合ではスタメンに選抜されるほどの選手だった。 「バスケの練習は厳しかった」と私が聞くと 「監督が鬼です。父親にも叩かれたことがないのに  監督は平気で叩いたりするんです」と笑っていた。 冬休み前の部活の練習中、腰から背中にかけて痺れを感じて 大学病院に検査を受けに来たのだが、健康そうな見た目とは違っ

          【短編小説】少女の夢は消えない

          【短編小説】影の薄い男

          この学校に転校した初日、僕はクラスに馴染めるか不安だった。 何人かの生徒が僕に話しかけてきたが会話はすぐに止まった。 人見知りの僕は初対面の人が苦手なのだ。 この学校でちゃんと友達ができるだろかと思った。 昼休みに校舎の屋上に僕は一人になりたくて行った。        そこにあいつがいた。僕の席の後ろの生徒だ。 目が合うとあいつが言った。「僕が君の友達になろうか」 いきなり何だと思ったが僕は言った。「よろしく」 教室に戻ってからも僕はあいつのことが気になった。 教室ではク

          【短編小説】影の薄い男

          【短編小説】涙はアルカリ

          桃花はほんとによく泣く女だった。     二人で映画を見ると隣で泣くので どうしていいか分からずに困った。 「涙はアルカリなのよ」と桃花が言った。 「ほんとかよ」と俺は返した。 「涙もろい私はアルカリかも」と笑う。 「それは言えてるかもな」 桃花と俺は似た者どうしなのかもしれない。 つきあっているけど二人とも好きなのを ストレートに言葉にするのが苦手なのだ。 「健太は私のどこが好きなの」と桃花が聞いた。 「顔がタイプ」と俺は即答した。 「顔のほかにはないの」とさらに聞い

          【短編小説】涙はアルカリ

          【短編小説】回転遊歩道の都市伝説

          見知らぬこの街に来て3か月ほどだが、俺がよく行くスーパーの横には 川沿いの小さな遊歩道がある。この場所を回転遊歩道と俺は勝手に名つけた。というのも、この遊歩道では、回転するものを、やたらと目にするか らである。 遊歩道は大通りに面しているが、大通り沿いの電線にハトの大群が止まっ てる。ヒッチコックの「鳥」という映画を思わせるようなハトの数なのだ。 10メートルくらいの間隔に、多い時には百羽近くは止まってる。 遊歩道の真上の空をブルーインパルスのように、数十羽のハトが群れを

          【短編小説】回転遊歩道の都市伝説

          【短編小説】銭湯

          これは、私が本気で死のうとした時に、起きた不思議な出来事の話だ。 あれは、いったい何だっのだろうと、今でも思うことがある。 人が自殺をする本当の理由というのは、他人には簡単に分からないという。 しかし、私が死にたいと思ったのは、ありきたりの理由からである。 それは世にいう生活苦というものだ。 若い時の貧乏話には、笑えるものがある。未来に希望があるからだ。 しかし、中年男の貧乏話は、悲惨なだけで、笑えない。 青春が終わりを告げて、中年の入口に立ったころに 私は、奇妙な病気

          【短編小説】銭湯

          【短編小説】猫のふわ

          猫のふわが死んだ         直前まで、あんなに元気だったのに 俺は本当にバカだ。やらかしてしまった。 冷たくなったふわを裏庭の土に埋めて 「ごめん、ふわ」と、俺は何度もあやまった。   ふわはいい年をして独身の俺に            1人暮らしは淋しいだろうと、姉がくれた猫である。    まっしろでふわふわした猫なので           名前をつける前に、ふわと自然に呼ぶようになった。 ふわはほんとに静かな猫だった。           足音を全く立てないので、

          【短編小説】猫のふわ

          【短編小説】鏡

          私は自分の顔に不満がある。 鏡を見るたびに、地味だと思う。 田舎娘って感じで、あか抜けない。 もう高校生なのに、青春だというのに。 友達の恋バナばかり、聞いてつまんない。 もう少し、可愛く、生まれたかったなー。 男子って、ほんと、女子の顔で態度が変わるんだから。 のんちゃんは、女子から見ても、可愛かった。 男子は、のんちゃんの前では、明らかに態度が変わった。 鏡を見てると、のんちゃんをよく思い出す。 学校では、いつも一緒、トイレにも一緒。 学校から、よく二人一緒で帰った。

          【短編小説】鏡

          【短編小説】兄が嫌い

           私は兄が大嫌いだ。顔を見るのも、声を聞くのも嫌いだ。 どこかで会いそうになると避けるようにしてる。 兄への異常な嫌悪感。なぜそこまで嫌なのか。 どんなに説明しても、誰にも、この気持ちは分からないだろう。 大人になり家を出てから10年、連絡も取ってないし、一度も会ってない。  しかし、この前、なぜか知らないが、兄の夢を見た。  夢の中で、私は兄を殺していた。リアルで妙に生々しい夢だった。 山奥の空き家でイスに縛り付け、口には猿ぐつわをして、頭に銃を当てたまま、10秒数えな

          【短編小説】兄が嫌い

          【短篇小説】狂女の思い出

           自分がいつか狂うのではという恐れを心の内に秘めながら、私はこれまで生きてきた。私はいま大学生であるが、中学時代や高校時代、その思いは心の底流にあるだけで表面上では特に問題がなかった。日常生活においては狂気に関する事柄、例えば狂人が主人公の映画や精神病に関する本などをなんとなく自分から遠ざけるだけだった。  しかし、1つだけ例外がある。それは暗闇を過度に恐れることである。 中学2年のある夜、自分が狂ったのに驚き目が覚めるという夢を見て以来、私は暗闇で眠ることができなくなった。

          【短篇小説】狂女の思い出