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視覚障害者柔道とKUNDE柔道

 本編は2023年の最終投稿です。今年は11月に学会発表がありました。準備が大変でしたので、8-11月にはスタッフに投稿をお願いしました。この場を借りて、感謝します。今回は発表した内容の一部をご紹介したいと思います。


はじめに


この度『第34回日本臨床スポーツ医学会学術集会』の『Inclusive Sports:アスリートの多様性に応じたパフォーマンスエンハンスメント』というシンポジウムで、チームドクターをしております『視覚障害者柔道』におけるパフォーマンス強化について、発表させて頂きました。本編ではパラスポーツである『視覚障害者柔道』とインクルーシブスポーツのKUNDE柔道について、取り上げたいと思います。

インクルーシブスポーツとは


まず、シンポジウムのタイトルに含まれますInclusive Sportsについて補足します。横浜市スポーツ推進計画で使用しております定義を引用させて頂きます。『年齢や性別、障害の有無、国籍などに関わらず、誰もがお互いの個性や人格を尊重するとともに、人々の多様性を認め合い、様々な人が共に実施できるスポーツ』です。

視覚障害者柔道


は両選手が互いに相手の襟と袖をつかみ、組み合った状態から始める以外、ほとんど柔道と同じルールで行われるパラスポーツです。組み手争いがないため、スピーディー、一本勝ちが多いエキサイティングな柔道です。1931年に日本の盲学校で取り入れられたのが始まりで、1988年ソウル大会からパラリンピックの正式種目に採用されています。
 

視覚障害柔道FBより抜粋(瀬戸選手vs藤本選手)

クラス分け

旧クラス分け(東京まで)


東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京パラ)まで視力や視野によりB1(全盲)からB3(弱視)の3クラスに分かれていましたが、試合は男子7階級、女子6階級、計13階級の体重別で行われていました。※B1がB3に勝つとポイントが多くもらえるシステムでした。

東京パラまでの旧クラス分け

新クラス分け(パリまで)


①   B1(全盲)選手がB2,3(弱視)の選手と戦うことは不利、②『視力が高い選手ほど勝率が高かった』というEVIDENCEから、パリに向けて、大幅なクラス分け変更がなされました。視力・視野によるクラス分けで、J1(全盲)とJ2(弱視)に分かれて試合をすることになりました。その中で体重別が各4階級に別れ、計16階級となりました。最高矯正視力は良い方の眼で0.1が両眼で0.05となり、2-3割の選手が出場できなり、混乱を来しました。

パリまでの新クラス分け

視覚障害者柔道の戦績

リオパラリンピックまで


パラリンピックの正式種目に採用された1988年ソウル大会では、金メダル4個、銀メダル2個とメダルラッシュでした。その後、徐々にメダルは減っていきます。世界の視覚障害者柔道選手人口の増加に伴い、競技レベルは年々向上しています。オリンピック柔道も同様ですが、海外勢のパワー柔道が台頭し、柔道は世界の柔術やレスリングをミックスしたJUDOへ変貌してきました。
 

パラリンピック・視覚障害者柔道メダル数

東京2020パラリンピック競技大会


戦績ですが、男子66kg級瀬戸 勇次郎選手:銅メダル、女子70kg級
小川 和紗選手:銅メダル、計銅メダル2個でした。
 

東京パラでの視覚障害者柔道戦績

IBSA 柔道グランプリ東京大会

 本大会は初めてIBSA公認のグランプリ大会となり、パリに向けてのポイントが2倍に付くため、参加人数も43カ国、188名、3面進行、2日にわたる大規模な大会となりました。今回初めて全柔連のグランドスラム東京と同じ会場で、日程的に続けて行われた画期的な大会でした。大会救護は私を含めた医師(3名)、看護師(3名)、トレーナー(4名)の計10名で医療班を編成して行いました。

東京グランプリ大会救護班

 

試合結果ですが、女子はJ1-48kg級 半谷静香選手:銀メダル、J2-57kg級 廣瀬順子選手、工藤博子選手:銅メダル、男子はJ2-73kg級 瀬戸勇次郎選手:金メダル、J1-73kg級 加藤裕司選手:銅メダルと、地の利を活かし、合計5つのメダル(金1,銀1,銅3)とパリへの大きな一歩となりました。

KUNDE柔道


近年、障害も多様性と捉え、皆が共に行えるインクルーシブスポーツが注目されています。日本視覚障害者柔道連盟では健常(晴眼※)柔道家と視覚障がい柔道家が共に行える『KUNDE柔道』の普及を推進しています。KUNDE柔道は視覚障害者柔道のルールである組んで始める柔道であり、視覚の障がいの有無にかかわらず行えるインクルーシブスポーツです。視覚障がい柔道家は、指導者不足や視覚障がいに対する理解不足から、受け入れてくれる道場が少ないのが現状です。KUNDE柔道の普及や視覚障がい者支援の拡大により、レベルの高い柔道と接する機会が増え、視覚障害者柔道の認知度が上がり、受け入れ可能な柔道場の拡大が期待されます。先日、グランドスラム東京でも『KUNDE柔道』のエキジビションが開催され、盛り上がりを見せています。今後は、ろう者柔道(聴覚障がい)、ID柔道(知的障がい)と共に、より広がったインクルーシブ柔道への発展も期待されます。
 
※目の不自由な方を視覚障がい者と呼びますが、その対義語として、視覚に障がいのない方を『晴眼者(せいがんしゃ)』と呼びます。
 
『IBSA 柔道グランプリ大会 東京2023』 金1つ・銀1つ・銅3つで閉幕
(PR TIMES記事より):KUNDE柔道(組んで柔道)の記事も含まれます

最後に


 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。来年2024年はパリでパラリンピックが開催されます。パラリンピックの柔道を是非、テレビ観戦して、応援よろしくお願いします。右下の♡(スキ)やフォロー、シェアで応援頂けますと、励みになります。よろしくお願いします。
 
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