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子どもたちの未来のために 親子が幸せを感じられる世界の実現 今福理博先生
こんにちは。武蔵野大学武蔵野CLS学生スタッフです。
武蔵野CLSにて研究成果を展示されている先生をご紹介します。
今回は、幼児教育学科 今福理博先生に伺いました。
今福理博
武蔵野大学教育学部准教授。教育学博士。
専門は、発達科学、発達心理学、教育心理学。
慶応義塾大学文学部卒業、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程研究指導認定退学、同大学大学院教育学研究科特定助教、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、現職。
今福先生の研究はこちら:https://researchmap.jp/masahiro_imafuku
X : @masapon1009
武蔵野大学 教育学部 幼児教育学科
「人間とは何か」という根源的な問いを学術的視点や実践を通して深く考察できる保育・幼児教育の実践者・専門家を育成しています。
保育士資格、幼稚園教諭免許状、小学校教諭免許状(オプション)
大学HP はこちら
武蔵野クリエイティブ・ラーニングスクエア 通称 : 武蔵野CLS
武蔵野大学 武蔵野キャンパス5号館にあり、学生の授業における到達目標のサポート、自学自習・グループ学習支援を主な目的として設置されています。武蔵野キャンパス8学科所属の学生スタッフが運営。現在20名。
1階中央展示スペースでは先生方の研究成果や学生の学習成果を展示しています。1階は86席 2階に54席。全館Wi-Fi・電源完備です。 広々としたスペースを、ぜひご利用ください。
大学HPはこちら
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赤ちゃんの心を科学的エビデンス(根拠)にもとづいて研究する
研究テーマ「乳児の内受容感覚と二者間社会的相互作用におけるアイコンタクト行動の関連」
内受容感覚に敏感である乳児ほど養育者と遊ぶ時にアイコンタクトを多くすることを解明。乳児の内受容感覚が社会的認知能力と関連する可能性を実証した。ヒトの社会的認知発達に内受容感覚が関与するという仮説を支持し、人間理解の新しい視点を提供する。
CLS:今回この研究で「人間理解の新しい視点」を得られたとのことだが、これまでの人間理解の視点はどのようなものだったか。また、この研究に着手した理由や背景もあわせて教えてください。
私は赤ちゃんが笑ったり、私にアイコンタクトをしてくれたり、近寄ると嬉しそうにしてくれるとき、すごく嬉しい、幸せと感じますが、それは自然なことで、あまり深く理由は考えたことはありませんでした。
今福:今までの人間理解の視点で言うと、アイコンタクトが人間と人間のコミュニケーションに重要とされ、人間の社会性の1つの構造としてあります。
今回の研究は体の感覚が社会性に関係するということから、新たに「アイコンタクトという社会性の行動の芽生えがなぜ起こるのか」という理由の1つに、内受容感覚という人間の体の中の感覚がどのように関係しているのかを示した点で、理解の新しい視点を提供したということにあります。
例えば、赤ちゃんとお母さんでは、なぜ赤ちゃんはお母さんの目を見るのかということには、お母さんのことが好き!とか、コミュニケーションしたい!という意図があるはずです。
お母さんが赤ちゃんを抱っこした時に赤ちゃんは体がリラックスした状態になります。赤ちゃんはリラックスしているという自分の中の感覚を内受容感覚を通じて感じることで、お母さんという存在はリラックスできる存在なんだと感じ取ります。その関係を学習することに内受容感覚が関わっています。
今回の研究結果では、内受容感覚に敏感な赤ちゃんほどアイコンタクトをするというのは、おそらく内受容感覚が敏感な赤ちゃんほどお母さんの温かさなどのぬくもりをより感じることができているからではないか、ということが言えます。社会性の芽生えがより高まっていると言えます。
内受容感覚
内受容感覚は、内臓の働きを知覚することにかかわり、空腹、体温、心拍、血糖レベルなどの身体状態を認識するうえで重要です。たとえば、空腹による胃の収縮や、風邪による体温の上昇に気づくことができなければ、命を脅かすこともあるでしょう。
「感情は身体に根差す」P33
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困りごとを抱えている親子が幸せを感じられる世界を実現する
研究テーマ「自閉スペクトラム症児と保護者における遠隔システムを用いた言語・社会性支援プログラムの実践と効果検証」
PEERSⓇは米国UCLAの研究者によって思春期の自閉スペクトラム症(ASD)や社会性に課題のある子ども向けに作成された。認知行動療法理論と保護者のサポートを基本原理としている。本研究では遠隔PEERSⓇが思春期の自閉スペクトラム症児の社会性スキル確保、及び保護者の抑うつ改善に効果的であることを実証した。
CLS: 元々あったPEERSⓇプログラムをあえて遠隔という手段で取り入れられた効果、研究の背景、理由について教えてください。
今福:PEERSⓇプログラムは、自閉スペクトラム症のお子さん対象に、友達作りの支援をする目的で作られました。小学校・中学校・高校ではお子さんの友達作りがなかなかうまくいかないということで、自信をなくしたり、学校生活が満足にできなかったり等の苦しみを抱えています。
このプログラムにはどのように友達を作るか、初めて会う人とどのように会話していけばいいのか等のスキルが集まっています。体験したお子さんはストレスや不安が低下し、コミュニケーションのスキルが改善されたと報告されています。
コロナ渦だったので、対面支援が難しいことから遠隔PEERSⓇを実施して、お子さんのストレスやコミュニケーションスキルが改善するかどうかの検証を行いました。
このPEERSⓇは、保護者も一緒に参加して、保護者自身のストレスや鬱が改善するという報告もされています。
今回、遠隔PEERSⓇに全国各地からのお子さんと保護者の方に参加いただいて実施することができました。結果はお子さんの社会的スキルの知識・対人コミュニケーション・問題行動全般・精神的健康、及び保護者の抑うつが改善されました。
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心の発達を適切に理解する
CLS:幼児教育学科以外の学生や教員がこの2つのポスターを初めて見るときに注目してほしいポイントはありますか。
今福:「乳児の内受容感覚と二者間社会的相互作用におけるアイコンタクト行動の関連」では、コミュニケーションにおいて、一見するとコミュニケーションスキルなど技術面を取り上げられがちですが、感情のつながりという点では、体の感覚も関係しています。普段の生活の中で、またそれぞれの学科の専門性から、それを意識すると新しい視点が得られるかと思います。PEERSⓇプログラムについては、対面ではなくても、オンラインなど、今の社会に合った方法を取り入れることで、何かができると考えていただきたいと思います。
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CLS展示に期待すること
CLS:今年度から1階中央に展示スペースを作り、展示物をゆっくりとご覧いただけるようになりました。
今福:他学科学生がこのポスターを見て、どのように思うのか感想やコメントをいただけると嬉しいです。私の研究室に質問に来てくれるといいかもしれませんね。大歓迎です。
いかかでしたか?
今福先生は絵本の出版や、充実した幼児教育学科のSNS配信をされています。他方、講義や著書「赤ちゃんの心はどのように育つのか」では多くの科学的エビデンス(根拠)に基づいて論証されています。
夏の展示は7/31(水)まで実施しています。
みなさん、ぜひ武蔵野CLSにお立ち寄りください!