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私の原風景ジオラマ

 思い出の場所をジオラマで表現する原風景ジオラマを作りました.もともとは1/150スケールのNゲージ鉄道模型レイアウトを作っていたのですが,子供時代の原風景と組み合わせることができないかと,60x45cmのコルクボードをベースに数十年前の子供の頃に過ごした地域を念頭に原風景ジオラマを作成しました.

私の原風景の場所は次の地図に示すように東京南部の大田区,目黒区,品川区,世田谷区が接する地域です
四つの区が隣接する私の原風景の地域
(国土地理院の基盤地図情報を用いてQGISで作成 )
上空から見た現在の洗足池周辺地域 (地理院地図で2017年撮影の空中写真を鳥瞰図にして作成)
現在地下駅となっている東急目黒線洗足駅は,私が子供の頃には目蒲線の洗足駅として下り線側にも駅員の常駐する小屋がある地上駅でした.駅前の踏切にはラウドスピーカーがついていて,踏切が鳴るときには「電車が参ります.電車が参ります.危ないですから白線の内側に下がってお待ち下さい」という女性の声が流れました.当時(昭和30年代)の洗足駅駅前の写真は次のURLで見ることができます.このジオラマの写真と見比べて頂ければ幸いです.
https://blog.goo.ne.jp/bisumark/e/44c4c7fd6f6a9cca94f1cd78faa67199
南からみた洗足池
正面の奥が桜山
東急池上線の洗足池駅で下車し,すぐ前の中原街道を渡ると目の前に洗足池の景色が広がります.桜山へは大井町線の北千束駅も最寄り駅になります.ジオラマには草むらの茂みに並んで座るカップルも表現しています.
ジオラマでは写真右上の隅に写っているように勝海舟夫妻の墓も作りました.この洗足池の谷を北に向かって進み,大岡山を越えた先にはまさに清水窪という現在でも清水が湧き出している場所があり、創建三百数十年前という弁財天がまつられています.
この文具店はすでに閉店しており,周囲では建物が次々と建て変えられています,当時の銭湯は昔の名残りを残していて,小学校低学年まで入っていた銭湯の女湯では時々三助とよばれる半股引をはいた男の人が洗い場にやってきて裸のおばさん達の背中を流していました.
模型のプラットホームの背後にある看板は現在の洗足駅に隣接する東急ストアの壁面に掲げられている食材の写真を取り込みました.なお,現在の東急電鉄の車両はすべてステンレスカーですが,最初のステンレスカーである5200型が入線するまでは渋谷駅前に短縮されて展示されていた旧5000系(アオガエル)や旧3000系のような鋼製車ばかりでした.旧3000系はその後旧5000系と同じ緑色になりましたが,このレイアウトでは当時の塗色である黄色と青に塗っています.


【行動範囲の拡大】 
徒歩で行き来する範囲の外側には自由が丘や渋谷など電車やバスを使って出かける街がありました.なかでも渋谷へは洗足から直通バスが出ていたので,我が家にテレビが来る1958(昭和33)年までは毎週家族と共にそのバスに乗って渋谷へ向かい,東急文化会館(現在は渋谷ヒカリエ)地下1階の映画館で週間ニュースを見て日本や世界の情勢に触れていました.ちなみに,カーリングなるものを初めて知ったのもこのニュース映画がきっかけで,氷上を掃除する人々と歓声をあげる観客達が放映され,不思議な競技だと思っていました.

写真1東急文化会館前から見た東横百貨店と3Fから発着する地下鉄銀座線. 左側2Fの東横線渋谷駅の手前には都電のターミナルがあった.(昭和33年頃撮影.左右2枚の写真を合成して1枚にしている.)

【自由が丘と田園調布】
渋谷や銀座,日本橋などジオラマでは表現できなかったやや遠い場所のほか,電車で数分の自由ヶ丘(現自由が丘)や田園調布などへもたびたび出かけました.自由ヶ丘の駅前には変形三角形のロータリーがあり,駅前から東横線の線路沿いには屋上にローラースケート場のある自由ヶ丘デパートが建っていました.その向かいには父がしばしばおみやげとして持って帰ってくれたケーキの店である東郷青児の美人画の包装紙が懐かしいモンブランがあって,当時からすでに活気のある楽しい町という印象がありました.
 自由ヶ丘の隣の田園調布にも良く出かけました.田園調布では東横線や目蒲線の電車のほか,貨物駅があったので電気機関車が牽引する貨物列車や荷物電車を見ることができました(中口絵-3).田園調布は洗足と並ぶ渋沢栄一らが設立した田園都市株式会社(東急電鉄の前身である目黒蒲田電鉄の母体)(注3)の開発した分譲住宅地で,すでに高級住宅地として広く知られていました.駅前には独特の形をした創業時の駅舎(中口絵-3)が建っているほかロータリーから放射状に道路が延びているのが印象的でした.

田園調布旧駅舎と東横線の貨物列車(1962年12月撮影)・田園調布貨物駅の荷物電車デワ3041と本線に向かうデキ3021が牽く貨物列車(1963年11月撮影)

【NゲージとZゲージのジオラマ】
 洗足や洗足池付近の原風景ジオラマは100円ショップで購入した40cm x 60cmのコルクボードをベースにして製作しました.スケールは線路幅9mm,車両の大きさが実物の1/150の Nゲージスケールで,2022年10月に田園調布駅駅舎から作り始め,スチロール板と壁材で地形を作ったあと建物の設置,草木の表現などをし,線路やポイントへの配線,建物の照明なども含めて2023年1月下旬にほぼ完成しました.その後,腕試しのつもりでさらに小さいサイズのZゲージスケール(線路幅6.5mm,1/220)のジオラマにも挑戦しました.これはNゲージのジオラマとほぼ同じプランでアタッシュケースに入るサイズで仕上げました.
 Zゲージジオラマでは自由が丘の駅前ロータリーを模したロータリーに面して田園調布旧駅舎を置き,その隣には当時の自由が丘モンブラン模したモンブランケーキ店を配置しました.

Zゲージジオラマ(1/220,線路幅6.5mm)の駅前ロータリーに面する田園調布旧駅舎とモンブランケーキ店.大きさがわかるように1円玉を置いている.

最後に,Nゲージ原風景ジオラマとほぼ同じプランで製作したZゲージジオラマを斜め上から見た写真を示します.

ほぼ同じプランで製作したZゲージジオラマ(左)とNゲージジオラマ(右)

(Nゲージレイアウトは2023年1月完成.Zゲージジオラマは2024年5月に完成しました.

詳しくは月刊『地理』2024年9月号(69巻9号)をご覧下さい.
URLは次の通りです.
https://www.kokon.co.jp/book/b651338.html


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