【EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE】に丸め込まれる
EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE(以降、エブエブ)
こちら、映画の題名です。
具体的なネタバレはありませんが、概略などの記述はありますのでお気をつけください。
非常に見応えのある映画でした。
じっくり感動するというよりも、素晴らしき花火を見た後のよう感覚に近いですね。
故にこれは感動ポルノによるものではなく、純粋な情感の震えでしょう。
この感覚は大切にしたいです。
「感動させるためのものによって、感動する」のではなく、「それ自体が持つエネルギーを咀嚼によって、感動エネルギーに変換する」感覚です。
さて、僕はこの映画の何が好きだったのか。
その前に、映画自体の構造について思案します。
映画のテーマというものは、ある2本の線の交点であるといえます。
そして、映画を成り立たせるギミック(世界観)が、3本目の線であり、それらが、映画に立体感をもたらすと考えています。
本映画における、テーマを作る2本線は単純なものです。
「東アジア地域における伝統的な家父長制、および、男性優位的なイデオロギー」の縦線。
「若い世代、およびグローバル化の進展による革新、開放的な価値観」の横線。
これらの思想的な対立が、この映画では、ある家族で起こる問題として露見されます。
つまり、それがテーマであり、交点です。
テーマである「新旧世代の狭間にいるものの葛藤」は自体はよくあるものですよね。
しかし、この陳腐なテーマともいえるこの映画を面白くしているのが、3本目の線なのです。
それが「多次元宇宙」という前提、世界観、ギミックであります。
つまり、今この時に、すべての可能性が同時に存在しているということです。(題名にもつながります)
過去、現在、未来が同時に存在します。
これは説明するのがなかなか難しいのですが、映画ではより感覚的に表現されているため、すっと入ってきやすいです。ぜひご覧になって確認くださいませ。
やや横道に逸れますが、「多次元宇宙」という概念は有名な映画でも扱われています。例えば、「Marvel」のアベンジャーズシリーズです。
大ヒット作となった「Spiderman No Way Home」でも別の次元(ユニバース)から来たスパイダーマンが集まって、これまた異なる次元から来たヴィランと戦いました。
「多次元宇宙」とは、非常に派手な概念で、目新しいので、なかなか陳腐なテーマでは扱いずらいのですが、エブエブではこの世界観を全面に押し出していました。
そして、素晴らしいのが、「多次元宇宙」という難解な世界観を導入したのにもかかわらず、映画自体は難しくなっておらず、むしろ未体験の映像感覚を味わえるのです。
結論、僕がこの映画を面白いと思ったのは、
「陳腐なテーマ」×「派手なギミック」
のギャップが生み出す珍妙なコメディ要素と、テンポの良さです。
中国の田舎のお母さんが「多次元宇宙」に巻き込まれていくギャップが面白いのです。是非、ご覧になってみてください。
感想を語り合いましょう。