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PdM講座3-2 ビジネスモデル検証におけるライフタイムバリュー(LTV)の算出方法とその重要性

はじめに

初めまして!現在、株式会社contento というコンサルティング会社で代表を務めている小川正樹と申します。

noteでは、これまで私が複数の会社で働き、そこで得てきた経験について会社ごとに紹介しながら、プロダクトマネージャーとして学んできたことや日々の持論について書いていきます。

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今回はPDM講座第3回「ビジネス開発基礎②」の「ビジネスモデルをテストする」についてです!

PdM講座全体像

第3回は前編・後編の2部構成で書いていきます。
今回は後編で、テーマは「ビジネスモデル検証におけるライフタイムバリュー(LTV)の算出方法とその重要性」となっています。


手順③ライフタイムバリューを決める


前回、フェルミ推定を使ったビジネスモデルの検証をご紹介しました。

検証の手順は以下の通りになっていましたよね。

①最小限の成功基準を決める
②価格と顧客スループットを決める
③ライフバリューを決める
④最小限の成功基準に対して、ビジネスモデルを洗練・調整する
⑤顧客ライフタイムバリューのテストを行う

今回は手順③以降について紹介できればと思います。

まずは、手順②の顧客スループット目標値の妥当性を確かめるために、
ライフタイムバリュー(LTV)を見積もります。

LTVを見積もるためには、以下の4つの観点を考慮する必要があります。

観点① 価値提案に「繰り返しの要素」はあるのか?
観点② 顧客が雇用したいジョブは何か?
観点③ 他の成功事例・参考事例はあるのか?
観点④ 観点①か③で算出できない場合どうするのか?

観点①は、その課題が単発なのか?繰り返し発生する課題なのか?を場合分けします。

繰り返し発生する場合、どのくらいの頻度で発生するのか?と、
解決するためには、どのくらいの時間が必要なのか?
を考える必要があります。

この問いの回答を明らかにすることで、ソリューション使用期間の推測が可能になります。

観点②は、ライフタイム=ジョブを片付けるための平均時間です。
ジョブとは、「ユーザーが本質的にやりたいと思っていること」を指します。
この「ジョブ」を明確に定義することで、タイムラインの見積もりが可能になります。

観点③は、類似した業種や分野を調査して、ライフタイムバリューを算出します。
例えば、SaaSビジネスの場合、SalesforceのLTVは4年となっており、こうした事例を参考にすることが出来ます。

観点④は、フェルミ推定により控えめな見積もりを出します
大体のビジネスモデルは1年から5年がライフタイムとされています。
価格と顧客ライフタイムが設定できれば、ライフタイムバリューを算出することができます。

例えば、年間スループット目標を1000万とします。
この場合、ライフタイムバリューと顧客スループットは以下のようにして
算出することが可能です。

・顧客ライフタイムバリュー(ライフタイム2年、月額収益500円の場合)         
= 500 × 24か月(2年間)
= 12000円

・顧客スループット 
= 年間収益目標 ÷  ライフタイムバリュー
= 1000万円 ÷  12000円
= 年間新規顧客数833以上

このように、年間スループット目標を1000万円とした場合、年間新規顧客数は833人以上必要となります。

手順④ 最小限の成功基準に対して、ビジネスモデルを洗練・調整する


テスト手順①から③で概算を行った目的は、曖昧な収益目標を、現実的かつ具体的な数値に変換させるためです。
そして、手順④では、手順③までの概算を洗練・調整していきます。

どのように洗練・調整していくのかを、例をもとにご紹介します。

先ほどの手順①から③で、顧客スループットを「833人以上/年」と導いたのですが、この概算の前提として顧客を「アーリーアダプターのみ」に設定しています。

そして、実際に調査をしてみると、「アクティブなSaaS(アーリーアダプター)は、約1000しかいない」ことがわかりました。
そのため、1000人しかいないアーリーアダプターのうちの800という数値は、かなりストレッチの効いたものになっています。

また、申し込み率を調べると、CVR1%でした。
つまり、800人の顧客を手に入れるためには、年間8万人の新規訪問者が必要になります。

このように、概算を洗練することで、計画と現実のずれに早くから気づくことができます。

洗練・調整の方法が3つあるのでご紹介します。

①顧客スループットを使い、リーンキャンバスを再検討する
②顧客スループットを現実ラインまで下げる
③ライフタイムバリューを上げる

①については、「顧客セグメントが十分に大きいのか?」や「拡大可能なチャネルを特定できているのか?」といった、9つの観点を再チェックする必要があります。

『リーンキャンバスの9つの観点』
①顧客の課題
②顧客セグメント
③独自の価値提案 (UPV)
④ソリューション(課題解決)
⑤チャネル(販路)
⑥収益の流れ
⑦コスト構造
⑧主要指標
⑨圧倒的な優位性

先ほどの例は、「顧客セグメントが不十分(アーリーアダプターだけでは不十分)」と分かったいい例です。

②については、まず、顧客スループットを因数分解する必要があります。

顧客スループット = 年間収益目標 ÷  ライフタイムバリュー

つまり、顧客スループットを下げるためには、
年間収益目標を下げる、ライフタイムバリューを上げることができれば良いのです。
特に、ライフタイムバリューを上げることが優先度は高いです。

③についても②と同様に、ライフタイムバリューを因数分解する必要があります。

ライフタイムバリュー = 顧客ライフタイム × 月間定額収益

つまり、顧客ライフタイムを伸ばす、月額定額収益を上げることができれば良いのです。
特に、月額定額収益を上げることが優先度は高いです。

月額定額収益を上げるということは、つまり、価格の値上げをするということです。
これを行うことによって顧客減少リスクがあります。

逆に考えると、値段を倍にしても顧客の半数を失わないのであれば、得です。

ここの値段の付け方費用ベースではなく公正な価値ベースで価値付けするべきです。

実際に例を踏まえて値上げ効果を算定してみます。
例えば、年間スループット目標を1000万と仮定します。

・顧客LTV = ライフタイム2年、月間定額収益2000円の場合
     = 48000円
・顧客スループット = 年間収益目標 ÷  ライフタイムバリュー
          = 1000万 ÷  48000円
          = 年間新規顧客数208以上

新規顧客数は大体半分くらいになりました。
このように見積もりの力があると、値上げが可能か?という検証行動を素早く行うことができます。

手順⑤顧客ライフタイムバリューのテスト

LTVはまともに計算すると時間がかかるので、二次的な近似値を使います。

LTV推定値 = 1  / 月間解約率

 LTV推定値を上記の公式とした際に、月間解約率が2%とします。

LTV = 1 ÷  2%/月
  = 50ヶ月
  = 約4年

この場合だと、4年待たなくても算出することがわかります。


最後に

今回は「ビジネスモデル検証におけるライフタイムバリュー(LTV)の算出方法とその重要性」の手順3~5について解説しました。

手順3では、顧客ライフタイムバリューを算出し、目標スループットの妥当性を検証します。
次に手順4では、最小限の成功基準に基づき、ビジネスモデルを洗練・調整します。
そして手順5では、LTVテストを行い、収益目標に対して現実的なアプローチを確立します。

これらのプロセスを通じて、ビジネスの成長に必要な正確な顧客価値を把握し、持続的な成功に向けた戦略を具体化していきましょう。

次回からは、PdM講座の第4回「ビジネス開発基礎③」として、
「トラクションモデル(再現性)の構築」をテーマにお話ししていこうと思います。

ぜひそちらもご覧ください!



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