マンチェスター・シティの115件の財務違反の概要と考えられる決着
前回はペップの記者会見の投稿を行いましたが、シティはなぜ公聴会を開かれ、どのような罪に問われているかを簡単に振り返り、まとめたものを投稿致します。
引用元:https://www.nytimes.com/athletic/5770700/2024/09/16/manchester-city-punishment-115-premier-league/
https://www.nytimes.com/athletic/5762324/2024/09/16/manchester-city-charges-explained/
https://www.telegraph.co.uk/football/0/manchester-city-premier-league-115-charges-legal-teams/
発端
2018年ドイツのデア・シュピーゲル紙がフットボールリークスからの暴露を掲載したことに起因する。
シティはUAE拠点の企業から水増しで高額なスポンサー契約で資金注入し、給与や肖像権の支払いを帳簿に乗せず、支出を隠ぺいしたとされている。
ただ、シティは「シティ・フットボール・グループとマンチェスター・シティの関係者や関係者からハッキングまたは盗用されたとされる脈絡のない資料」だと主張している。
UEFAは2020年2月にFFP違反でシティを二年間のUEFAの大会への出場停止と3,000万ユーロの罰金を科したが、シティはスポーツ仲裁裁判所に異議申し立てを行い、出場停止処分は取り消され、罰金は1000万ユーロへ減額された。
その間もプレミアリーグは調査を続け、シティも調査から懸命に避けようとしたが、プレミアリーグは2021年、シティが非公開にするために争っていた特定の情報を開示させるための法廷闘争に勝利した。
そして、2023年2月に115件の違反の告発を行った。シティはこの告発に対し、「反論の余地のない包括的な証拠」があると反論した。
そして、18か月の準備期間を経て、その公聴会が開かれることとなった。
その間に、シティは22-23シーズンにトレブル、23-24シーズンには前人未到のプレミア四連覇などを達成した。
また、エバートンやノッティンガムフォレストはPSR違反で、減点処分が科されている。
115件の内訳
正確な財務情報を提供しなかった容疑:54件
9シーズンに渡るもので、違反とされるものの中では最も長いスパンである。”(最大限の誠意をもって)クラブの財務状況を真実かつ公正に示す正確な財務情報”を提供する義務を怠ったことである。2014-15シーズンでは、シティは6つの違反で告発されており、シティは9年間、毎年5つか6つの条項に違反したとされている。
しかし、邪推だが、そもそもシティが違反と指摘されている案件以外にもアブダビグループより帳簿上以上の金額を貰っていないのかという疑いが付きまとってしまう。
選手と監督の支払いに関する正確な詳細を提供しなかった容疑:14件
正しい情報を共有しなかったとされるもうひとつの例だが、異なるのは、シティが選手や監督に支払った本来の金額を隠ぺいした事。期間は2009~2016年で、最も注目を集めた例は、ロベルト・マンチーニ監督とMFのヤヤ・トゥーレである。
マンチーニが監督時代、シティの監督業と同時にシェイク・マンスールが所有するアブダビのクラブのアルジャジーラと年間最低4日勤務で175万ポンドの支払いを受ける契約を結んでいたことで、この契約をシティの給与の一部と指摘している。
トゥーレに関しては、肖像権をアブダビ・ユナイテッド・グループが支払ったとされている。
両件とも当事者およびシティは否定している。
PSR違反の容疑 : 7件(あるいは21件...)
本件は前述のリーク情報ではなく、プレミアリーグの調査によるもので、15-16, 16-17. 17-18シーズンの3シーズンに渡って行われた違反を7件としている。当初7件はこの3年の違反をグループしたものであり、合計すると21件となり、最大129件の違反となる。
移籍市場の収支は
15-16:総支出208.47m€ 総収入67.44m€ 収支 -141.03m€
16-17:総支出216.25m€ 総収入35.35m€ 収支 -180.90m€
17-18:総支出317.50m€ 総収入91.35m€ 収支 -226.25m€
PSRでは1 億 500 万ポンドを超える損失に関する記載がある。前述のリーク情報を基に帳簿を正した場合、この3シーズンで違反したこととなる。
UEFAのFFP規定を遵守しなかった容疑:5件
上記と同様に公表している額から帳簿に記載すべき額面になった際に違反する可能性がある。
プレミアリーグの調査に協力しなかった容疑:35件
2018年に調査を開始して以来、シティが「誠実な行動」に関連する規則に違反したとしている。2018-19シーズンから2022-23シーズンまでの各シーズン。
具体的には、
機密情報と主張し文書を公開しなかったこと
"理事会への全面的かつ完全かつ迅速な支援”を行わなかったこと
掛かる期間
2か月半掛かると予想されていますが、期間が長く途中で中断が入る可能性がある。
また、結果をまとめる必要もあるため、これにも時間を要する。
エバートンを例にすると、最初の審理は昨年10月に行われ、結果は一か月後に発表となった。しかし、今回は115件であり、もっと時間が掛かると見込まれる。
匿名の関係者曰く、早くて来年の5月とのこと。
当然、控訴ということも考えられるので、もっと長引く予想である。
考えられる決着
無罪および罰則なし
すべての告訴が棄却され、UEFAとの裁判で勝利した時と同様にシティの正当性が証明された場合。ただし、UEFAの規則では、過去5年間は訴追できるが、プレミアリーグでは期限の設定はない。ただし、説明をしなかった行わなかったために制裁は受ける可能性はあると匿名の元プレミアリーグの最高経営責任者は語る。
和解合意
公聴会が行われるまで、シティとプレミアリーグ間での遡及罰金という形の妥協案で決着がつくと考えられてきた。
しかし、時間が経つたびにその可能性は低いと考えられている。
シティは今年6月に関連当事者取引(APT)ルールがイギリスの商法に違反するとして、プレミアリーグとの訴訟を起こした。
APTのルールでは、クラブがオーナーと関係がある企業から受け取る収入が適正なものかを評価し、過剰な資金注入を防ぐためのものであり、かつてシティがオーナー企業から受け取った収入を違反と指摘されていることを「差別の被害者」として損害賠償請求している。
このことからもシティの準備が逃げるためではなく、戦うための準備をしていることが分かる。
減点と降格という最終手段
エバートンやノッティンガム・フォレストは違反を認め、それが判決では評価されていた。しかし、今回のシティは、協力も認めもしなかった。悪い方向に行くことが予想される。
罰則の上限はなく、罰金および減点、最悪プレミアリーグからの追放までありうる。
匿名のスポーツ専門の弁護士はthe Athleticに対し。莫大な罰金が予想され、プレミア追放も誇張ではなく現実的な結末としてありうると答えた。
結論
無罪判決
多額の罰金と少しの勝ち点マイナス
大幅な勝ち点マイナス
プレミアリーグ追放
しかし、シティの場合、複雑で、違反疑惑は数年にわたる歴史的なものであり、素早い処置がされるべきものではないとも言われている。
また、
英国政府はThe Athleticに対し、アブダビの英国大使館とロンドンの外国連邦開発局(FCDO)がプレミアリーグによるマンチェスター・シティへの告発について話し合ったことを認めた。ここで、有罪となると、国家間の問題となる可能性を秘めていると実しやかに言われている。
どちらにしろ、世紀の一戦と言われているこの法廷闘争。
シティ側の弁護士は”現代の英国弁護士会の第一人者”と評されるパニック氏ら
対するプレミアリーグ側は2023年度のスポーツ シルク オブ ザ イヤーのアダム・ルイス氏ら
とスーパースター対決のようで、イギリス国内でもかなり注目されています。
最後に
昨今の移籍市場のインフレ化が今回のような問題の引き金にもなっているではないかと考えます。
そのため、このインフレ化への是正処置を検討してほしいと思います。
この投稿を読んでよかったという方はスキ、コメント、フォロー等していただけると幸いです。
また、改善点等あれば、そちらもご指摘のほどよろしくお願いします。
今回もお読み頂き誠にありがとうございました。