【雑多小説】フィクション

親戚の家に泊まり、
1週間ぶりに実家に帰ったら、玄関に塩が置いてあった。
どうしたのと聞いたら、最近悪いことが多いでしょ。だから。と言われた
今年あった悪いこと、
ペットのうさぎが死んだこと?
私が病気になったこと?
弟が熱を出したこと?

母は疲れているように見えた。
私は一人暮らしをしている。
実家に帰ってきても嬉しそうではない。
「もうごはんのメニューが思いつかないよ」と母は冗談混じりに言った。
母は今まで名もないような料理をよく作っていたし、私はそれに対してなんの不満も持ったことがなかった。むしろそれは私にとって家庭の味であり、実家に帰って食べたいのはそういう料理だった。

私がいないこの家庭はどんなふうに時間が流れているんだろう。優しくて、よく笑う母親、実は明るくて、厳しい父親、静かで、少し不思議な弟。私は調和係。
前までここに自由奔放なうさぎがいた。私が飼いたいと言いだして、何度も何度も家族と相談して、初めて迎え入れたペット。新しい家族。
8年目を迎える今年、その子が亡くなった。
弟は泣かなかったけど、両親が泣いた。
親が泣くとは思わなかった。想像していた以上に、両親がウサギに対して愛情があることに驚いた。

私が死んだら、泣いてくれるだろうか。
誰が泣いてくれるんだろうか。
全く想像がつかない。優しさを本物だと信じては、いつも裏切られた気持ちになる。些細なことを疑ってしまう。偽善は悪いことだとは全く思わない。だけど気づきたくはない。
しかし、自分も意識しなければ優しくなれなかった。
こんなやさぐれたことは本当は考えたくない。
気持ち悪い。恥ずかしい。
本当に人に優しくするほど、余裕が無い。
だけど実際、余裕がある人はあまりいないと感じる。
そういうものだ。

生きていればいつか死が訪れるものだ。
悲しいことだけど、逃れられない。
病気だって大変だったけど治った。
熱だっていずれ良くなるだろう。
「そういうもの」ではないのか。
私は大人になってしまった。
母は、この家族は、もう私に何も教えてくれない。
私がどれだけ1人で頑張っても、伝えても、見ていなければ、夢と同じなのかもしれない。

母は私に晩ご飯作ってよ、と言った。
私は全く料理ができない。母もわかっている。
私は「任せてよ」と笑いながら言い、家を出た。
そして誰もいない無機質な家に向かって歩いた。
家に着いたらすぐ眠ることしか、頭になかった。

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