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戦術ばかりやってきた人が戦略立案できるようになるには

わかるようでわからない言葉、「戦略」。

いろいろなひとがいろいろな定義でつかってます。定義をつかいこなすには、戦略というツール活用に対する目的意識と論理体系のなかでの理解が鍵。

わたしはこれがしっくりくる。

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私自身、この数年で戦略について、よく考えるようになった。昔は戦術人間だった。今回のメルマガでは、戦略に対して思うことについてシャアしたいと思う。


戦略とは、目的達成のための技術のひとつだと思っている。目標管理の目的達成の手段、人材育成も時間管理も、人事評価などもそうだ。

また、戦略にはいろいろなレイヤーがある。経営戦略、事業戦略、プロダクト戦略。機能軸では、マーケティング戦略、戦略PR、SEO戦略、ブランド戦略などなど、これら言葉が世にあるとおり、「戦略」とつくと、キラキラしているように見える。なんかカッコよく聞こえる。

※ブランド戦略については、このダイキンの片山さんのコラムがめちゃめちゃ面白いです。

〔余談ですがこれと同じような、あいまいだけどかっこいい言葉に、「戦略」があります。この2つの組み合わせである「ブランド戦略」は、本当にすごくて賢そうなイメージですが、あいまいさも最高で実務者にとっては最高レベルの翻訳が必要となります。〕
なぜ、あなたの会社はブランドがつくれないのか? —あいまいな「定義」が引き起こす問題


キラキラしているため、目的を忘れたり吟味せずに手段に飛びついてしまう。

しかし、リソースは貴重だ。目的達成のために引くべきレバーにはいろいろある。どのレバーを引くべきで、どのレバーを引きたい気持ちを押さえて勇気を持って切り捨てるかだ。

戦略的思考は、ミクロでは戦術の選択に影響を与え、マクロでは参入市場や事業ドメインの選択に影響を与える思考問題だ。市場選択や、マーケティングコミュニケーションにおけるメディアプランニング、チャネル設計などでは、この考え方がやりやすいだろう。

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目的達成のために、誰に向けて、数あるアイデアのなかから、どれを選択して実行にうつすべきか。そのような思考・行動を規定する。

これらが、戦略が求められる理由だ。

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とある家電製品の売上アップが目的だとしよう。

売上アップには、市場そのものが拡大しているか、衰退期かによっても有効な打ち手はかわる。拡大ならその波にのれるが、衰退期なら競合から顧客を奪うこと、シェアを奪うことになる。ここで、実際はその製品カテゴリが世に流通していて、家庭への浸透率が高い場合には、買い替えだとか、スイッチを促す必要がある。そのような市場の構造を見抜かないで、イケイケどんどんで無闇な顧客の拡大を測ろうとしても、便益が刺さらないなど、いろんな問題が起こるだろう。


例えば、PR戦略を考えるとする。

自社の置かれている状況から、どの打ち手を、どの順番で仕込んでいくべきか、頭を悩ませるだろう。

いきなりマスメディアよりも、まずはWEBメディアから狙っていくべきか。植え付けるべきブランドイメージではなにが重要か。どう市場に位置付けたポジションを知らしめるか。必死にネタを探してプレスリリースを打つか。情報番組に取り上げてもらえそうな調査リリースを試してみるか。メディアキャラバンをかけるか。メディアに寄稿をしてみるか。テレビに企画を持ち込むか。PRイベントを仕掛けてみるかなどなど。


SEO戦略も同様に、今はマイナス→ゼロの施策に注力すべきか、外部リンク獲得か、内部リンクの調整か、クエリをもっと拾えるようにページを生成するか、CVR自体の改善で統合的な検索体験をよくするかなど、打ち手は様々だ。だからこそ、広い見識をもち、あらゆる可能性を吟味して、その中で重要だと思うところに貴重なリソース、努力を振り向ける。

マーケティング戦略であれば、今のフェーズだったら、どの顧客をターゲットに置くかのWHOの設計が、その真髄の一つだろう。関連して、どのオケージョンや、どのベネフィットに刺さるように商品・サービスを位置付ける設計もあるだろう。どのカテゴリーに位置付けるか、ポジショニング設計は抽象度の高い戦略的思考だとよくわかる。


たどり着きたい目的地がある。その目的地に向かってどのような地形かをしっかり把握して、自分の持てる力でたどり着けるルートで進むこと。


戦略は仮説

戦略立案は知的な戦闘力を問われる問題だからこそ、面白い。一方で、概念の世界だけに籠っていたら、絶対にうまくいかない。現実の直視が難しい。

現実世界は静的ではなく、顧客も競合も変化を続ける環境にある。

人間にはバイアスがあるからだ。思い込みが思い違いをうむ。また、起案者からの報復を遅れて間違いを指摘できない風通しの悪さ。戦略が伝達できておらず、戦術の方向がバラバラ。戦術が難しすぎて、実行につまづく。

いろいろあるだろう。

戦略がうまくいかないときは、だいたい戦況だとか自チームの戦闘能力を正しく把握できていないのが原因だと思う。

だから、「戦略は仮説だ」のマインドセットを持って、行動のたびに得られるファクトで学習を続け、顧客ニーズと競争戦略にミートするように調整を続ける必要がある。「自分は天才だ!」と万能感たっぷりに作った戦略を否定される瞬間でもあるが、人間なんて大した存在ではない。皆、巨人の肩に乗り、人のふんどしで相撲をとっているのだ。一人でできることなんてたかが知れてる。

また、当初の現状把握では、見えてこなかったレバーが見えることもある。リソースもしかり。このひと、これに才能あるじゃんとか。だから、人をよくみることが大切で、他人から得られる痛いことにもしっかり耳を傾けるのだ。

戦略と戦術を考えるときの脳みその使い方は全くの別物。

物事を考えるスケールの広さがまるっきり違う。大局的だ。


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抽象世界に逃げない。実務家なら脳に汗をかいて具体的に戦略を考える

戦略そのものは、結構本から学べる。この辺が面白かった。

ただ、いろいろやってみて思っているのは、良い戦略は自分が置かれている市場構造の理解、具体的な顧客理解、具体的な競合理解、具体的な社内の資源の理解、あらゆる戦術の理解がなければできないということ。

学者でない実践家においては、現実を直視するしかない。答えはそこにしかない。

また、戦術は個人や少人数でまわせるが、戦略はそうではない。部門や全社的にも影響を及ぼすものだ。

戦略の怠慢は、それを支えてくれるメンバーの努力を価値あるものにできず、キャリアの実績にもさせてあげられない。戦略が悪いと、どんなに戦術を頑張っても、目的達成までの道のりは遠い。せっかくの仲間の苦労を水の泡にしてしまう。徹夜の努力が無駄になる。

それだけ、戦略の責任は重いものだ。矜持を持って、戦略立案に望まなければなと思う。責任重大。

戦略に対する信頼度も低ければ行動は弱いものになる。全員が戦略を信じて「よし!やるぞ!」と意気込んだ組織の実行力は相当高いだろうなと想像がつくだろう。戦略の立案も実行の生身の人間がやること。人間を奮い立たせてこそだと思う。戦略立案と戦略浸透と実行支援と実行はワンセット。

「戦略は一握りのエリートによる知的アウトプット」ではなく、「戦略は目的達成のための人間の営み」と認識する方が、いい戦略がつくれていい実行ができると思う。


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