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リトドリンの副作用

塩酸リトドリンは切迫早産の治療に用いられる薬剤で,ベータ受容体刺激による平滑筋弛緩作用によるとされています.しかしその有効性の低さとともに,副作用の重篤さから,いまでも実際に使用されているのは世界で日本だけになっています.頻脈や手指の振戦などは必至で,ときに肺水腫,心不全などの危険な病態を引き起こします.

全国でおこなわれた死戦期帝王切開の全例を調査したことがあります.2018年の段階で18例ありました.いろいろな解析をおこなったのですが,妊婦の心停止をおこした原因のなかに気になることがありました.18例のうち2例が塩酸リトドリン投与の副作用によるものだったことです.

いずれも双胎の切迫早産にたいしてリトドリンを投与したところ,急性肺水腫をおこし心停止にいたったものです.院内発生のためいずれも心肺蘇生に成功し,児も救命可能でした.この2例について製薬メーカーに問い合わせたところ,肺水腫,心停止といった副作用について報告されていませんでした.

このように全国的には重大な副作用事象が発生しても報告されないことが多く,メーカーからだされている数字よりもかなり多い頻度で副作用が発生している可能性があります.このようにリトドリンの投与には細心の注意が必要と考えられます.

とくに双胎妊娠では,妊婦の循環血液量がかなり増加して過負荷になっており,リトドリンの使用はリスクが高いと考えられます.48時間をこえる妊娠延長効果にエビデンスがないことを考えあわせると,とくに多胎妊婦への投与は検討しなおすべきではないでしょうか.

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