リトドリン副作用のスキャンダル
切迫早産妊婦にたいする塩酸リトドリンの長期持続投与は,医学的エビデンスがなく,世界でも日本でしかおこなわれていないことは周知の事実です.48時間以上の妊娠延長効果がないだけでなく,リトドリンの副作用のリスクは高いため,早急に見直しをしなければならない重要な医学的課題だと思います.
2013年にヨーロッパではリトドリン副作用による母体死亡が複数おこり,社会的にも大きな問題になりました.欧州医薬品局(EMA)はその後,リトドリンの48時間以上の投与を「禁忌」とし,48時間以内の投与をおこなっているあいだも母児の両方に連続モニターを装着することを義務づけました.またリトドリンの内服薬の承認を取り消しています.
日本でもその時厚労省からイエローレター(緊急安全情報)によってリトドリンの使用について注意がだされました.下の記事は2014年11月の週刊朝日の記事であり,ここでもはっきりと重篤な副作用と「死亡リスク」がとりあげられて報道されています.しかし日本のリトドリン長期持続投与による切迫早産治療は,それ以降もほとんどかわりませんでした.
その後の国内でもリトドリン副作用による母体死亡と考えられるケースがでています.産科のアカデミアのなかでいまこの問題の解決をはからなければ,今後も第二,第三のマスコミ報道がなされるでしょうし,「薬害被害」者による訴訟もなされるかもしれません.社会問題化するまえに,関連学会が真剣に対応にとりくんでくれることを期待します.