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ブスに彼氏が居ちゃダメですかepisode9

惨めな思い出

表面上は別れたことになってる筈なのに。
彼女から元カノという位置になっても変わらなかった。彼女だったという事実は消えないから。
睨まれる。
悪口言われる。
これは日常。


昨日まで普通に開いたロッカーの扉が陥没していた。廊下に上下二段のねずみ色のロッカーが名前の順に振り分けられてあった。
そこに、使わない教科書やジャージなんかをしまっておいた。
そのロッカーの扉が、見事なまでに凹み、どうしたって開かなくなっていた。
私は放課後を待って、職員室からバールを借りてきた。担任の先生に、何に使うのか聞かれて、「ロッカーの扉が陥没してて」と伝えたが、特に見に来る様子もなければ心配する素振りもみせなかった。先生なんてそんなもんだよな、と思って私はバールを握りしめロッカーへと向かった。
簡単に開くと思っていたが、調度いい隙間がなくてバールを突っ込むことが出来なかった。
早く帰りたいのに。
女子高生が放課後にバール持ってロッカーこじ開けてるとか有り得ないし、と思った。

間違ってぶつかったくらいの凹みじゃなかった。
誰かが故意に蹴りを入れたとしか思えない陥没加減だった。
学校に残っていた生徒が私の後ろを通り過ぎる時に、コソコソと何かを話し笑っているのが聞こえた。

ようやく、バールの先が入るくらいの隙間が開いてそこからグリグリねじ込んでいき、力を込めて扉を開けた。ガンッという音が廊下に響いたが、もう誰も居なかった。
中身は無事だった。
私のロッカーになったばっかりに、物に罪は無いのにね、と思った。

姿を見せない相手に怯える。
容疑者が多すぎて、みんな怪しく見えてくる。
教室の中は敵だらけだと思っていた。
私が一緒にいたグループは、ピラミッドでいうと底辺にいるグループだった。
頂点にキラキラ女子のグループが居た。
目立つし、大声で笑うし、床に座りでっかい輪になってお弁当食べてるし、私のことをバカにしてネタにして笑ってることも知っていた。
キラキラ女子と話す男子も嫌いだった。
その男子たちも、彼氏と仲が良くて色々な話を聞いていたに違いない。彼氏は聞かれたら何でも話してしまうやつだったから。
私の席の前後が特に仲がいい男子で、そいつらに挟まれるという生き地獄のような席だった。
私を挟んで話すし、何も言わずに人の消しゴム勝手に使うし。席替えをしない担任だったから、苦痛はずっと続いた。

こんなの、思い出とは呼べない。
ただの辛かった記憶。


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