ブスに彼氏が居ちゃダメですかepisode11
ブスだな
どうしてだろう。
いつも言われてた言葉なのに。
それよりも酷いことも言われたのに。
私たちは別れたことになってるので、彼氏は好き放題していた。
それを、わざわざ私に報告してくるのだ。
「○○ちゃんさぁ、この間うちに泊まりに来たんだよ。してる時の声が大きくてさ、家族に聞こえちゃうかと思ったわ。」
「俺△△さんに付き合いたいみたいなこと言ってたんだよ。そしたら、△△さん彼氏居てさ、メール見られちゃってヤバかったんだよ。」
私の存在なんてあってないようなものだった。
黙って付き合ってようとは言われたけど、付き合ってるようなことは何もなかった。
それでも私は、ケータイから彼氏の着メロが流れると嬉しくなったし、それでもいいと思っていた。
いつものように、彼氏から電話が掛かってきた。
その日は、雨だった。
野球部は雨が降ると、体育館の2階で筋トレなどをすることがあった。
私は卓球部だったので、その2階が主な練習場所だった。
ゾロゾロと野球部の男たちが体育館の2階に上がってきた。
その中に彼氏を見つけた。
向こうもこちらを見ていたので、目が合ったがすぐに逸らして自分たちの練習を始めた。
その時に、先輩から
「元カノってどの子?」と聞かれていたらしい。
「でさ、あれですって教えたんだよ。そしたら、先輩に『あれなの?ブスだな。』って言われたんだよねー。」
彼氏は笑っていた。
そこで、プツリと何かが切れた。
「もういい。別れる」
そう言って電話を切った。
すでに別れているようなものだったけど、一応言っとかないとまたズルズル続いてしまうと思ったから。
本気にしていない彼氏は、電話を鳴らしてくる。
何回か、切っては掛けてを繰り返していたが私が絶対に出なかったので、しばらくすると静かになった。
その日から毎日、彼氏から電話が掛かってきた。
私はひたすら無視。
あれほど彼氏からの着信を待っていたのに、もうなんとも思わない。
なにに執着して私はここまで、こんな変な恋人ごっこを続けていたのか。
そこにはなんの感情も生まれなかった。
心は鋭いトゲのある蔓でぐるぐる巻きにされて傷だらけになっていた。
血が流れ、古い傷が治る前にまた新しい傷が増える。痛みすらも麻痺していた。
別れを決めたことで、心の奥深くまで刺さっていたトゲが抜けていく気がした。
そうすると、痛みの感覚が戻り、涙が流れていることに気づいた。
やっぱり好きだったんだ。
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