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ブスに彼氏が居ちゃダメですかepisode1

はじまり

私はブスだ。

とは、思っていなかった…。


これがそもそも、いけなかったの?
超絶可愛いとは思っていなかった。
けど、ブスではない、と思っていた。
むしろ、私はモテる、と確信していた。

承認欲求強め?
自意識過剰?
井の中の蛙?

うん、そう。
『井の中の蛙』同士が恋人になって、広い世界に「せーの」で飛び出した後、知らなかった世界を目の当たりにして満身創痍の蛙になるか。
知らなかった世界でアイドル的蛙になるか。

2匹一緒に同じ世界で仲良く過ごしたかっただけなんだけどね。

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8点。
私が中3の時に数学で叩き出した実力テストの点数だ。
理数系がとにかく苦手だった。
数学を理解することは中1で諦めた。
諦めたまま、遥か前を疾走していく数学の問題を、ただの暗号だと思って、ばら撒かれた数字や記号は避けながら歩いてきた。

そうなると、親が心配し始める。
心配を通り越して怒りになる。
私立の高校はお金がかかる。
かといって、このままの成績で行ける県立の高校となるとヤンキーとバカしか居ない高校に行くことになる。

私には行きたい高校があった。
彼氏と同じ学校に行きたい。
目の前には茨の道が広がっていた。
でも、私に与えられた選択肢はひとつしかない。
もう、選択肢とは呼べない。一択だ。
やらなきゃ終わる…。
これが背水の陣てやつか。

そこからの親の手回しは早かった。
母さんネットワークを駆使して、地元で高い進学率を誇る個人塾を紹介してもらい、私はそこにぶち込まれた。
部活を引退した夏頃からだった。
そう考えると、そこから約半年で8点の成績を合格点まで引っ張りあげないといけないというのは、自分で言うのもなんだけど無謀としか言いようが無かった。

その塾は、授業らしい授業がなかった。
過去問を引っ張り出し、自分でコピーして問題を解く。解いたら答え合わせをしてもらう。
追い込みの頃には、塾に泊まっての勉強会もあった。
先生が作ってくれた激辛のカレーがすごく美味しかったのを覚えている。
みんなで布団を敷き、修学旅行さながらの光景が塾の内部で繰り広げられていた。
辛かったけど、なんだかんだ言って結構楽しかった。



そして、私は見事合格したのだ。

志望校に。
彼氏と同じ高校に。

茨だった道を振り返ると、そこには色とりどりの花々が咲き誇っているように思えた。


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