5分で特別法_著作権法
概要
著作権法を5分で読める程度のダイジェストでまとめました。
このまとめは若干不正確だったり説明が不足している点があります。これはあくまで「概ねこういうことが法律で決められているんだ」ということを5分で概観するためのまとめなので、その点はご了承ください。
著作権法
法の概要
創作者を保護するための著作権、著作者人格権、著作隣接権等について具体的内容を定めている。
著作物
著作物とは、文芸、学術、美術や音楽によって、思想や感情を創作的に表現したものであり、具体例は小説、脚本、論文、講演、音楽、舞踊、無言劇、絵画、版画、彫刻、建築、地図、学術的な性質を有する図面、図表、模型、映画、写真、プログラム等である。(2Ⅰ①、10Ⅰ)
→単なる事実や無加工のデータは思想や感情の表現ではなく、著作物ではない。
→単なるアイディアは表現ではなく、著作物ではない。
→絵画などの純粋美術と異なり、家具等の実用品による応用美術は「美術」に当たらないとされる場合がある。
二次的著作物も著作物にあたるが、原著作物の権利に影響は及ぼさない。(11)
→Aの小説を原作としてBが勝手に映画を作った場合、Bの映画も著作物にはなるが、BはAから小説の著作権侵害を主張されるおそれがある。
編集物やデータベースも創作性があれば著作物にあたる。(12,12の2)
→歴史的事実をまとめるだけでも、「どういう事柄をピックアップしてまとめるか」等の点に創作性があれば、編集著作物にあたる。
→タウンページの電話番号情報データベースは、電話番号に「職業分類体系」という項目を付し創作性を持って整理されていたため、データベースの著作物と認められた。
憲法、法律、告示、裁判所の判決などは、著作権の対象とならない。(13)
法人の業務として従業員が作成し法人名義で公表された著作物は、原則としてその法人が著作者となる。(15)
著作者の権利
著作者は著作物につき、著作者人格権と著作権を取得する。取得に公表や登録は不要であり、著作者は著作物を作るだけでそれらの権利を取得する。(17)
著作者人格権
著作者は著作物について、著作者人格権として、それを公表するかしないか決める権利(公表権)、どういった名前で公表するか決める権利(氏名表示権)、著作物を勝手に変更されない権利(同一性保持権)を取得する。(18~20)
→氏名表示権は、ペンネームや無名で公表する権利も含む。
→同一性保持権は、教育上の利用など事情により制限される場合がある。
著作者人格権は著作者のみに帰属し、譲渡できないし相続もされない。(59)
著作権
著作者は著作物について、著作権として、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権、伝達権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻案権を専有する。(21~27)
→翻案権とは、著作物を翻訳する権利(翻訳権)、楽曲をアレンジする権利(編曲権)、著作物の次元を変える権利(例:漫画のキャラをフィギュアにする)(変形権)、その他二次著作物を作る行為全般(狭義の翻案権)をいう。
著作権は、原則として著作者の死後70年存続する。ただし、ペンネームや匿名で発表されており著作者が一般に明らかになっていない著作物の著作権は、公開から70年存続する。(51,52)
法人の著作物や映画の著作物は、原則として公開から70年存続する。(53,54)
著作権は譲渡や利用許諾によって対価を得ることができる。(61,63)
著作権が及ばない場合
個人が家庭内利用の範囲で著作物を複製することは、制限されない。ただし、コピープロテクトを勝手に外して複製すること、違法アップロードされたものを複製すること等は認められない。(30)
→条文上は公共のコピー機を使っての複製も禁じられているように見えるが、文書や図画のコピー機は当分の間適用外とされている。(附則5の2)
図書館の資料は複製可能。(31)
公表済みの著作物は、公正な慣行に合致する方法で正当な目的の範囲内であれば、出所を掲載することで、他者が引用して利用することができる。(32,48)
→例:本や論文に他人の著作物の文章を載せる時など。
公表済みの著作物は、必要な範囲において、出所を掲載することで、教科書などの教材、教育番組、試験問題などのために複製することができる。(33~36,48)
公表済みの著作物について、営利目的ではなく、聴衆から料金を得ず、実演家が無報酬の場合は、公の場で他者が上演、演奏、上映、口述することができる。(38Ⅰ)
→例:路上ライブで他人の楽曲を演奏しても、この条件を満たせば著作権侵害ではない。
正当な目的の範囲内であれば、報道のために他人の著作物を利用・複製することができる。(41)
美術や写真の著作物の所有者は、その著作物の現物を屋内展示により公開することができる。(45)
→著作者から美術品を買った場合、屋内展示をするにあたって著作者の許諾は不要。
著作権者の同意を得て屋外に設置された美術の著作物や建築の著作物は、原則として第三者が利用することができる。ただし、彫刻の増製、建築の複製、屋外に恒常的に設置するための複製、販売目的の複製はできない。(46)
→既に公に公開された著作物の利用を促進する趣旨。
美術の著作物を展示する場合、著作権者の利益を不当に侵害しない範囲で、観覧者のためのカタログなどに著作物を複製して掲載することができる。(47)
検索エンジンは、HP製作者の許諾がなくとも他人のHPの内容を要約して検索結果として表示することができる。(47の6)
→HP製作者が拒否した場合は不可。
著作隣接権
実演家は自らの行った実演に対して実演家人格権を取得するほか、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者は自らの行った行為について著作隣接権を取得する。(89)
→著作物を世に広めるのに重要な役割を担っている四者に対し、その権利を保護している。
実演家は実演家人格権として、氏名表示権、同一性保持権を取得する。(90の2,90の3)
→著作者人格権と異なり、公表権はない。
実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者は、著作隣接権として複製権や譲渡権など著作権類似の権利を取得できるが、四者で取得できる権利が若干異なる。(91~101)
権利侵害
著作者、著作権者、出版権者、実演家、著作隣接権者は、その権利を侵害する者や侵害するおそれがある者に対し、侵害差止請求をすることができる。(112)
著作権等の侵害に対して不法行為に基づく損害賠償請求をする場合➀侵害者が副生物を譲渡した数量×著作者が自分で譲渡していれば得られた利益の単価②侵害者の得た利益③利用料相当額④侵害がなければ得られたはずの利益、などを損害額として推定することができる。(114)
→具体的な損害額の立証は困難なので、推定規定が用意されている。
著作権等の侵害に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求だけではなく、不当利得返還請求もすることができる。
→利得と損害の因果関係の立証が必要になる難しさはあるが、不法行為より時効が長いというメリットがある(10年)。
著作権等を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処される。(119)
→法定刑の上限は窃盗より高く、重すぎるという批判がある。
結語
相変わらずですが、5分で読める程度のダイジェストで伝えることができたのは触りだけです。
著作権法にはインターネットやAIの発展に付随する最新議論があり、とても奥深い分野となっています。
このまとめを皮切りとして、基本書などで体系的に学んでみることをお勧めします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?