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真っ赤なあと
あるとき 急に 心の色を感じる瞬間がある
あなたはそんなときがないだろうか
4月19日、朝。私の心は真っ赤だった。
この日は、出演した映画「脂肪の塊」が渋谷での最後の上映。
そして、大好きな映画「愛がなんだ」の公開日だった。
自分にとって特別な日、
「愛がなんだ」のスチールと劇中写真を撮影しており、
以前、私が短編の監督をしたときに撮影をしてくださった、
木村和平さんの写真展に行った。
「灯台」
なんの前情報もなく行った。新宿にあるビームスジャパンの5階。
B gallery。
入り口で展示は無料で見れると知り驚く。おそるおそる入った。
そこには、想像を絶する日常のなかのひかりがあった。
あまりにも美しく吸い込まれた。
その美しさはやさしいところへも、独りのところへも連れていってくれる、スリリングな体験だった。
後ろを向くと、「袖幕」と「灯台」の写真集が並んでいた。
袖幕のカバーは赤で、灯台のカバーはグレーだった。
「袖幕」はもう持っている。「灯台」のカバーはなんでグレーなんだろう・・・
中身が気になっていた。
写真集の前で買おうかどうかと立ち止まっていると、係りの女性が、中を見てもいいですよと言ってくれた。本当は見る前に買う派なのだけれど、気になってしまいページをめくった。1枚1枚・・・その写真集をめくって見ていく時間がいちばんスリリングだった。
少しずつ心の奥に潜っていくような、時に撃たれるような・・・そんな感覚だった。
私は、本当に美しいものを見て、かなしくなってしまった。
こんな美しいものわたしは見れないし、得られない。そう思った。
それと同時に、ここに残されたひかりは、おおきなおおきな暗闇を辿ったからこそ、巡り会えた軌跡なのかもしれない。そうも思った。そう思うと、自分の解釈で「灯台」のカバーがグレーであったことがものすごくしっくりきて、少しだけ希望をもちたいと、見つめることをやめたくないなとも思った。
とにかく今のわたしは「灯台」を見ることが苦しかった。あまりに素晴らしく、好きなのに購入しようか迷ったくらい苦しかった。だけどやっぱり買うことにした。ここまで心に影響を与えてくれる創作物を近くに置いておかなくてどうするんだろう。いつか違う状態でこの写真を見ることもできるかもしれない。できなくても、それもまたいい。このときのわたしの心はグレーだった。
わたしは自分のひかりがみたいんだ・・・そんなことを実感した時間でもあった。
夜、わたしはひかりを追い求めるかのように、
「愛がなんだ」を観に行った。幸せへのかけらを拾い集めていくような気分でテアトル新宿に向かっていた。このときは自分の心が真っ赤に思えた・・・
どうして 急に 心に色を感じるときがあるのか
それは わからない
もっと もっと遠いところへいきたいからかもしれないし
自分を安心させたいからかもしれない
よくわからない だけど 心に色を感じるときは
自由と孤独がそばにある気がして
生きていると思う
―今日の写真―
ことしの2月、恵比寿映像祭に行ったときにみた帰り道。
2019.4.21
村田唯