Holding Your Hand 4/7
「妊娠生活からやっと解放されるんだ」と思うと嬉しかったし、痛みには強い自信もあった。けれども、それまでとは比べものにならない激痛に襲われた時、彼女の自負はどこか遠くへすっ飛んで消えてしまった。
そのうえ、赤ん坊が産道を通るためには頭の向きを変えなければならなかった。急遽持ち出されたバランスボールの上でうつ伏せになりながら、全くコントロールできないものが体内にある苦痛を思うように受け入れられず、涙を浮かべながら唸っていた。
頭は無事に下を向いたらしく、「呼吸して、いきんで」と言われるままにアコは力の限り踏ん張った。何かが思いきりぶつかってきているみたいな、とにかく大きい、巨大な圧のような痛み。それを言葉で説明し尽くすことは不可能だ。三回目にいきんだ時、「もう無理だ。失敗したんだ」と彼女は思った。気絶してしまいそうで、むしろその流れに身を任せてしまいたかった。痛みが強すぎて、もはや周りの状況など何もわからなかった。
小さな頭が姿を現したのは、その直後だった。
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アコは何よりも、自分が出産できたことに驚いた。それからまず、冷静さを取り戻した頭で「泣き声って意外と小さいんだ」と思った。
その後、体重を測られた自分の子どもが隣にそっと置かれた。赤ん坊を間近に見た時、彼女は改めて「小さい!」と思った。
産まれてくる子どもの名前は想(そう)と決めていた。自らの想いを大切にし、「相」手の「心」も想える人になってほしいという願いから命名したのだ。彼に自分の指を差し出すと、小さな手でぎゅっと握ってくれた。その瞬間、アコは心から「かわいい」と思った。「この子は大事な存在で、こんなにも小さくて、私しか頼れないんだ」と感じた。
自分のことをまだ何も知らないはずなのに、全力で握ってくるそのか弱い手。そんなふうに頼ってくる我が子を目の前にして初めて、「自分の子どもなんだ」という責任を実感したのだった。
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