時給2500円募集に見る人材不足の実態


遊園地は楽しい

那須ハイランドパークで時給2500円の「プラチナバイト」と称する募集を行い、10名枠のところ100名超の応募があったということで話題になっています。

余談ですが、ぼくは遊園地が大好きで、特に絶叫マシンが好きですね。
10歳の娘も絶叫マシンが好きで、富士急ハイランドの高飛車やええじゃないかも余裕で乗ります。

年齢のせいか、ぼくが「1回乗れば充分、うぇっぷ・・・」という感じなんですが、娘は何回も乗りたいというので、割としんどかったりしますw

そんな遊園地で時給2500円のバイト。
どんな背景があったんでしょうね。

既存バイトとの差をつけた募集

こういう取組みってなかなかやりたくても出来ないもので、一番議論になるのは「既存バイトとの格差」ですかね。

栃木県の最低賃金は954円とのことで、とはいえ最低じゃないでしょうから1200円くらいでしょうか。既存バイトが1200円で働いてるのに、あとから来た新人バイトが2500円じゃ頑張って働いてる人は「ふざけんな」って話になりますね。

かといって、既存バイト全員を2500円に上げるわけにもいきません。
仮に2500円に上げたところで、「なんで一緒なんだ!私は5年も働いてるんだから新参バイトよりも高くするべきだろ!」という声も上がるので、2600~2800円程度まで底上げしなければなりません。

しかし今回の採用は「プラチナバイト」という枠組みで、既存バイトとは異なる点を強調していますね。「自信がある方のみ応募してください」と謳っている以上、人事部門の手腕が問われるでしょうね。

試みとしてどうなのか?

この試みに対して「そんな時給なら働きたい!」という意見が多いですが、本当に働きたいですか?w
結構なプレッシャーだと思いますよ。熟練の先輩たちよりも高い給料もらって仕事を教わるんです。現場からすれば「マイナス投資」としばらくは見られながら働くのって、結構しんどいと思いますよ。

ただ、取組みとしてはすごく良いことだと思っています。
日本の組織は「バランス」をとかく重要視しているので、「みんな平等にしなければならない」というバイアスが掛かっているので、どうしても推進が遅延します。

買い物だって、買い時を逃せば高くなります。野菜一つとっても高く買うときもあれば安く買うときもあります。バイトの時給だって時価でいいんじゃないかと思います。「いま入社した人は時給が高い」という状況があってもいいと思っています。

日本の企業側のつらいところは「いやなら辞めれば?」って言えないところですけどね。

企業側のメリットは?

時給を上げることは労働者側にとってはメリットでしかないですが、企業側はどうなんでしょう?ぼくは企業側のメリットは投資額よりも遥かに高いメリットを出せると思っています。

まず今回の募集で100名以上の応募が殺到したという点。人事側からすれば書類選考等、かなり大変とは思いますが、将来目線で見ると非常に重要なイベントです。

仮に時給1500円で募集してギリギリ10名が集まるのと、2500円で募集して100名集まって10名を選ぶのでは、コストだけ見ると損していますが、人選という観点では非常にメリットがありますよね。
しかも「2500円なので自信がある人だけ応募してください」というお触れも効果的です。その時点で未経験者が応募する可能性が減ります。(応募しちゃう人もいるでしょうけどね。)

恐らく狙いとしてはディズニーや空港などの経験を持ち、「接客レベルが超絶高い」けど、結婚や出産等のライフイベントで前線から退いてしまった地方にお住まいの方をターゲットにしているのかなと推察してます。

そんな優秀な人が1200円で応募してくれるわけはなく、未経験の1200円よりも経験豊富な2500円人材を雇い、遊園地全体のレベルを底上げし、社員全体のエンゲージメントを上げたい気持ちがあるのではないのかなと思います。

人材不足とは無関係

なので今回の那須ハイランドパークの募集行動は「人材不足の煽りを受けて時給を上げざるを得なかった」という背景ではなく、遊園地ビジネスの成長戦略の一環なのではないかと推察しました。

それでも英断だなと思っています。こういう決断をする以前に経営会議で議論があったはずですが、そこでは必ず「コスト負けするに決まってる」「既存の社員の士気が下がるのではないか?」「コンサルと短期契約したほうがいいのでは?」といった意見が飛び交ったのではないかと思います。

まぁ、コンサルやっておきながらこれを言うのもなんですが、コンサルという選択肢を取らなくて良かったなと思いますw

いま日本は人材不足なのか?

ここまでは企業戦略的な観点で書いてきましたが、さて人材不足について少し言及していくと、世間的にはこの記事に対して、
「結局賃金を上げればいいんだから人材不足ではない」という意見が散見されますが、「人材不足なら賃金を上げればいい」というのと、今回の那須ハイランドパークが行った施策を混同すべきではないと思います。

今回の件はあくまでも「プロフェッショナルを雇用」という目的での施策なので、世間で言われている「人材不足」とは関係ないとぼくは思っています。

「賃金上げればOK」なのは間違いないですが、賃金を上げたくても上げれない実態もあります。大企業なら全然できますが、中小企業や経費率の高い小売業ではそうはいきません。

で、結局賃金は簡単に上げれない。でも賃金を上げなくても外国人や高齢者が応募してくるので人材不足に困っているわけではない・・・という負のスパイラルが問題なので、賃金を上げるだけで解決できる話ではないようにも思えます。

ただ、人材不足かどうかの話でいうと、「必要な仕事の対価が低い」というのは事実としてあると思います。介護士や保育士の賃金が低いというのは事実だと思うので可及的速やかに変化していかなければならないと思います。
これらの仕事はAIに置き換えられづらいですからね。

むすんでひらいて

ということで、那須ハイランドパークの事業戦略を想像してみただけの話になってしまいましたが、現場のハレーションを恐れずにこういう試みができる企業が増えてくるといいなぁと思っています。

ライフイベントで前線を退いた地方に住まう方、たくさんいらっしゃると思います。時代も変わり遠隔でも活躍できる時代になりました。5年前までは引退を余儀なくされたプロフェッショナルもいらっしゃるでしょう。

そのような人財に上手くターゲット出来た企業がこれから勝ち残ると思いませんか?

いいなと思ったら応援しよう!