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DXの進め方とは?具体的な9つのステップやポイント、知っておきたい失敗例まで解説
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の競争力強化と持続的成長に欠かせない経営戦略となっています。しかし、多くの企業がその進め方に悩んでいるのが現状です。
本記事では、DXコンサルタントの視点から、DXを成功に導くための9つのステップと重要なポイントを詳しく解説します。
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DXの進め方は大きく9ステップ!
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、多くの企業にとって避けて通れない経営課題となっています。特に年間売上高10〜100億円規模の中堅企業にとって、DXの推進は競争力強化と持続的成長のカギとなります。しかし、DXの進め方に悩む企業も少なくありません。そこで、DXを成功に導くための9つのステップを詳しく解説します。
【ステップ1】DXのビジョン(推進目的)の明確化
DX推進の第一歩は、明確なビジョンを設定することです。このビジョンは、単なる「デジタル化」ではなく、デジタル技術を活用して企業価値をどのように高めていくかを示すものです。
具体的には以下のような問いに答えることで、ビジョンを明確化できます:
3〜5年後、デジタル技術の活用によって自社はどのように変革しているか?
その変革によって、顧客にどのような新しい価値を提供できるか?
社内の業務プロセスやビジネスモデルはどのように進化しているか?
例えば、製造業であれば「IoTとAIを活用したスマートファクトリーの実現により、生産性を50%向上させ、カスタマイズ製品の短納期化を実現する」といったビジョンが考えられます。
重要なのは、このビジョンを経営層が主導して策定し、全社で共有することです。DXは一部の部署だけの取り組みではなく、全社的な変革を目指すものだからです。
【ステップ2】現状把握
ビジョンが定まったら、次は現状を正確に把握する必要があります。これには、以下の3つの側面からの分析が重要です:
業務プロセスの分析:
各部門の業務フローを可視化し、非効率な点や改善の余地を洗い出します。
特に、アナログ作業や人手に依存している業務に注目します。
システム環境の分析:
現行の基幹システムやITインフラの状況を調査します。
レガシーシステムの有無や、システム間連携の状況を確認します。
データ活用状況の分析:
社内外のデータがどのように収集・管理・活用されているかを調べます。
データの分散状況や、データ品質の課題を洗い出します。
この現状把握のプロセスでは、外部のDXコンサルタントを活用するのも有効です。客観的な視点で自社の状況を分析できるからです。
【ステップ3】自社の課題の洗い出し
現状把握ができたら、そこから見えてくる課題を整理します。DXの文脈での課題は、主に以下のようなカテゴリーに分類できます:
業務効率化の課題:
手作業による非効率な業務プロセス
部門間のサイロ化による情報共有の阻害
顧客体験向上の課題:
アナログな顧客対応プロセス
顧客データの活用不足
新規ビジネス創出の課題:
デジタル技術を活用した新サービス開発の遅れ
データ活用によるビジネスモデル変革の未実施
組織・人材の課題:
DX推進のためのスキル不足
デジタル技術に対する理解不足や抵抗感
これらの課題を、部門横断的なワークショップなどを通じて洗い出し、優先順位をつけていきます。その際、短期的に解決すべき課題と、中長期的に取り組むべき課題を区別することが重要です。
【ステップ4】推進体制の整備
DXを成功に導くには、適切な推進体制の構築が不可欠です。多くの企業では、以下のような体制を整えています:
DX推進委員会:
経営層をトップとし、各部門の責任者で構成
DX戦略の決定や進捗管理を担当
DX推進室:
専任のDX推進担当者で構成
具体的なDXプロジェクトの企画・推進を担当
デジタル人材の育成・採用:
社内でのデジタルスキル教育プログラムの実施
外部からのデジタル人材の採用
特に中堅企業では、すぐに専門人材を揃えることが難しい場合もあります。そのような場合は、外部のDXコンサルタントや IT企業と連携し、段階的に社内の体制を強化していく方法も有効です。
【ステップ5】ロードマップ策定
DXのビジョンと課題が明確になり、推進体制が整ったら、具体的なロードマップを策定します。ロードマップでは、以下の要素を明確にします:
短期的な取り組み(1年以内):
既存の業務プロセスのデジタル化
データ分析基盤の整備
小規模なPoC(概念実証)プロジェクトの実施
中期的な取り組み(1〜3年):
基幹システムの刷新
AI・IoTなどの先端技術の本格導入
デジタルを活用した新サービスの開発
長期的な取り組み(3年以上):
ビジネスモデルの抜本的な変革
デジタル技術を核とした新規事業の立ち上げ
各フェーズで達成すべきKPI(重要業績評価指標)も設定し、進捗を定量的に測れるようにします。例えば、「1年以内に営業プロセスのデジタル化により、商談サイクルを30%短縮する」といった具体的な目標を設定します。
【ステップ6】予算確保
DX推進には適切な投資が不可欠です。ロードマップに基づいて、必要な予算を算出し、確保します。DXへの投資は、以下のような項目が主な対象となります:
システム投資:
基幹システムの刷新
クラウドサービスの導入
データ分析基盤の構築
人材投資:
デジタル人材の採用・育成
全社的なデジタルリテラシー向上のための教育
外部リソース活用:
DXコンサルタントの起用
IT企業とのパートナーシップ
予算の確保にあたっては、投資対効果(ROI)を明確に示すことが重要です。例えば、「基幹システムの刷新により、年間の運用コストを20%削減できる」といった具体的な数字を示すことで、経営層の理解を得やすくなります。
【ステップ7】ITシステム・ベンダーの選定
DXを支えるITシステムやツールの選定は、成功の鍵を握ります。以下のポイントに注意して選定を進めましょう:
スケーラビリティ:
事業の成長に合わせて拡張できるシステムを選ぶ
クラウドベースのソリューションを優先的に検討
柔軟性:
自社の業務プロセスに合わせてカスタマイズ可能なシステムを選ぶ
APIを通じて他のシステムと連携できることを確認
ユーザビリティ:
直感的に操作できるUIを持つシステムを選ぶ
モバイル対応など、柔軟な働き方を支援する機能を確認
セキュリティ:
データ保護やコンプライアンスに配慮したシステムを選ぶ
クラウドサービスの場合、適切な認証を取得しているか確認
ベンダー選定では、単なる機能比較だけでなく、ベンダーの業界知見やサポート体制も重視しましょう。中長期的なパートナーシップを築けるベンダーを選ぶことが、DXの成功につながります。
【ステップ8】DX施策の実行
計画が整ったら、いよいよDX施策を実行に移します。ここでのポイントは、以下の通りです:
スモールスタートの原則:
小規模なプロジェクトから始め、成功体験を積み重ねる
失敗しても影響が小さい領域から着手し、学習する
アジャイル的アプローチ:
短期間でプロトタイプを作り、素早くフィードバックを得る
必要に応じて計画を柔軟に修正する
変化管理の重視:
社内の抵抗を減らすため、丁寧なコミュニケーションを行う
新しいツールやプロセスの導入時は、十分な研修を実施する
データ活用の促進:
各プロジェクトでデータ収集・分析を重視する
データに基づく意思決定の文化を醸成する
例えば、営業プロセスのデジタル化を行う場合、まず一部の部署や商材で試験的に導入し、その効果を測定します。成功事例を社内で共有し、徐々に他の部署や商材にも展開していくというアプローチが有効です。
【ステップ9】PDCAを回し長期的に推進を行う
DXは一度の取り組みで完了するものではなく、継続的な改善が必要です。以下のようなPDCAサイクルを回すことで、長期的な成功を目指します:
Plan(計画):
定期的にロードマップを見直し、必要に応じて修正する
新たな技術トレンドや市場変化を踏まえ、新しい施策を計画する
Do(実行):
計画に基づいて、各種DX施策を実行する
社内外の協力を得ながら、着実に進める
Check(評価):
KPIに基づいて、各施策の効果を定量的に測定する
社内外からのフィードバックを積極的に収集する
Act(改善):
評価結果に基づいて、施策の改善や見直しを行う
成功事例を社内で共有し、横展開を図る
このPDCAサイクルを回す際は、単なる数値の追跡だけでなく、「デジタルを活用した新しい価値創造ができているか」という本質的な問いかけを常に行うことが重要です。
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DXを進めるうえでのポイント
ここまで、DXを進める9つのステップを解説してきました。これらのステップを踏まえつつ、DXを成功に導くための重要なポイントをさらに詳しく見ていきましょう。
単なるツール導入で終わらせない
DXの本質は、デジタル技術を活用して企業の競争力を高めることです。しかし、多くの企業がDXの名の下に単にITツールを導入するだけで満足してしまい、真の変革に至らないケースが見られます。
例えば、営業部門にCRMツールを導入しただけで、営業プロセス自体は従来のままというケースです。このような場合、ツール導入による一時的な効率化は図れても、顧客体験の抜本的な改善やデータ駆動型の営業への転換といった本質的な変革は起こりません。
DXを成功させるためには、以下のようなアプローチが重要です:
ビジネスモデルの再考:
デジタル技術を活用して、既存のビジネスモデルをどう変革できるかを検討する
例:製造業における「製品販売」から「サブスクリプション型のサービス提供」への転換
顧客体験の再設計:
デジタルタッチポイントを活用し、顧客との関係性を強化する方法を考える
例:ECサイトとリアル店舗を連携させたオムニチャネル戦略の展開
業務プロセスの抜本的な見直し:
デジタル技術を前提に、業務プロセス全体を再設計する
例:紙ベースの承認プロセスをワークフローシステムで置き換えるだけでなく、AI活用による自動承認の導入
データ活用の高度化:
単なるデータ収集にとどまらず、分析と活用のサイクルを確立する
例:IoTセンサーからのデータを活用した予知保全システムの構築
ツール導入はあくまでもDXの手段であり、目的ではありません。常に「このツールによってどのような価値を生み出せるか」を考え、ビジネス全体の変革につなげることが重要です。
DX人材を確保する
DXを成功に導くためには、適切なスキルと mindsetを持つ人材の確保が不可欠です。しかし、多くの中堅企業ではDX人材の不足に悩んでいるのが現状です。
DX人材に求められるスキルセットは以下のようなものが挙げられます:
デジタル技術の理解:
AI、IoT、クラウドなどの先端技術に関する基本的な知識
これらの技術を活用したビジネス変革の可能性を構想できる能力
データ分析力:
基本的な統計知識とデータ分析スキル
データに基づいた意思決定を行う能力
ビジネス理解:
自社のビジネスモデルや業界動向に関する深い理解
デジタル技術を活用したビジネス変革のアイデアを生み出せる能力
プロジェクトマネジメント力:
複数の部門を巻き込んでDXプロジェクトを推進できる能力
アジャイル開発などの新しい開発手法に関する知識
チェンジマネジメント力:
組織の変革を促進し、抵抗を軽減するスキル
デジタル文化の醸成をリードできる能力
これらの人材を確保するためには、以下のようなアプローチが考えられます:
社内人材の育成:
デジタルスキル向上のための研修プログラムの実施
若手社員を中心としたDX推進チームの結成と OJT
外部からの採用:
デジタル領域での経験を持つ中途人材の採用
新卒採用での IT・デジタル人材の積極的な獲得
外部パートナーとの連携:
DXコンサルタントやIT企業との協業
大学や研究機関との産学連携
特に中堅企業では、すぐに全てのスキルセットを持つ人材を揃えることは難しいかもしれません。その場合は、段階的にDX人材を育成・確保していく計画を立てることが重要です。
社内のデジタルリテラシーを高める
DXは一部の専門家だけで進められるものではありません。全社的な取り組みとして成功させるためには、組織全体のデジタルリテラシーを高めることが重要です。
デジタルリテラシー向上のための具体的な施策としては、以下のようなものが挙げられます:
全社員向けデジタル基礎研修の実施:
クラウド、AI、IoTなどの基本的な概念の理解
データ分析の基礎やデータ駆動型意思決定の重要性の学習
部門別のデジタルスキル研修:
営業部門向けのCRM活用研修
製造部門向けのIoT・スマートファクトリー研修など
デジタルツールの積極的な導入と活用促進:
クラウドベースの協働ツールの全社導入
チャットボットなどの AI技術の業務への適用
デジタル活用事例の社内共有:
DX成功事例の定期的な発表会の開催
社内SNSなどを活用した日常的な情報共有
経営層のデジタルリテラシー向上:
経営層向けのDXワークショップの実施
先進企業への視察ツアーの実施
デジタルリテラシーの向上は一朝一夕には進みません。継続的な取り組みが必要です。また、単なる知識の習得だけでなく、実際の業務の中でデジタル技術を活用する機会を増やすことが重要です。
全社戦略に基づき社内全体で取り組む
DXは単なるIT部門の取り組みではなく、全社的な経営戦略として位置付ける必要があります。トップダウンとボトムアップの両方のアプローチを組み合わせ、組織全体でDXに取り組む体制を構築することが成功への近道です。
全社的なDX推進のポイントは以下の通りです:
経営層のコミットメント:
DXビジョンの明確化と社内外への発信
DX投資への理解と支援
部門横断的な推進体制:
DX推進委員会の設置(経営層と各部門責任者で構成)
部門を超えたDXプロジェクトチームの編成
KPIの設定と評価:
DX推進度を測る全社的KPIの設定
定期的な進捗確認と評価の実施
インセンティブ制度の整備:
DX推進に貢献した社員や部門への評価・報酬制度の導入
デジタルスキル習得を人事評価に組み込む
オープンイノベーションの推進:
スタートアップ企業との協業
他業種企業とのデジタル領域での連携
失敗を許容する文化の醸成:
新しい取り組みへのチャレンジを奨励する風土づくり
失敗から学ぶ姿勢の重視
DXを全社的な取り組みとして推進することで、部門間の壁を越えた新しい価値創造が可能になります。例えば、製造部門のIoTデータを営業部門のCRMと連携させることで、顧客ニーズに基づいた製品開発や予防保全サービスの提供といった新しいビジネスモデルを生み出すことができます。
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併せて知っておきたい!DXの進め方の失敗例
DXの推進には多くの企業が苦戦しています。ここでは、よくある失敗例とその対策について解説します。これらの失敗例を知ることで、自社のDX推進において同じ轍を踏まないよう注意することができます。
【失敗例1】手段が目的化
DXの本質を理解せず、「とにかくAIやIoTを導入すれば良い」といった技術主導のアプローチに陥るケースです。
具体例:
製造業A社は、工場のDX化を目指してIoTセンサーを大量に導入しました。しかし、収集したデータの活用方法が明確でなく、結果として「データの墓場」を作ってしまいました。
対策:
DX推進の目的を明確化し、常に「なぜこの技術を導入するのか」を問い続ける
技術導入の前に、具体的な活用シナリオとKPIを設定する
パイロットプロジェクトを実施し、小規模で効果を検証してから展開する
【失敗例2】課題の優先順位付けができていない
あれもこれもと手を広げすぎて、結果的にどの課題も中途半端になってしまうケースです。
具体例:
小売業B社は、ECサイトの刷新、店舗のデジタル化、バックオフィス業務の効率化など、複数のDXプロジェクトを同時に立ち上げました。しかし、リソースが分散し、どのプロジェクトも期待通りの成果を上げられませんでした。
対策:
自社の経営課題に基づいて、DXプロジェクトの優先順位を明確にする
短期的に成果が出せるプロジェクトと中長期的に取り組むべきプロジェクトを区別する
各プロジェクトの相互依存関係を考慮し、段階的に実施する計画を立てる
【失敗例3】経営層のコミット力が足りていない
DXの重要性を理解していない経営層が、現場任せでDXを進めようとするケースです。
具体例:
サービス業C社では、若手社員主導でDXプロジェクトを立ち上げましたが、経営層の理解が得られず、必要な予算や権限が与えられませんでした。結果として、小規模な業務改善に留まってしまいました。
対策:
経営層向けのDX研修や先進企業視察を実施し、DXの重要性への理解を深める
DX戦略を経営戦略の一部として明確に位置付け、経営層自らが発信する
DX推進の進捗を定期的に経営会議で報告し、経営課題として継続的に議論する
【失敗例4】従業員を巻きこめておらず、非協力的
DXの必要性や目的が現場レベルまで浸透しておらず、従業員の協力が得られないケースです。
具体例:
金融機関D社では、ペーパーレス化を進めるためにタブレット端末を導入しましたが、使い方に不慣れな従業員が多く、結局紙の資料と併用する状態が続きました。
対策:
DXの目的や期待される効果を、全従業員に対して丁寧に説明する
現場の意見を積極的に取り入れ、使いやすいシステムやツールを選定する
デジタルツールの使い方講習会を定期的に開催し、サポート体制を整える
DXによって生まれた時間的余裕を、より創造的な業務に振り向けられることを明確に示す
【失敗例5】DX人材が採用できずリソース不足に陥る
必要なスキルを持つDX人材を確保できず、プロジェクトが停滞するケースです。
具体例:
製造業E社は、データサイエンティストの採用に力を入れましたが、高額の人件費や地方立地がネックとなり、なかなか採用できませんでした。そのため、データ分析基盤は構築したものの、十分な活用ができない状態が続きました。
対策:
外部のDXコンサルタントや IT企業と連携し、初期段階での人材不足を補う
社内人材の育成に注力し、長期的な視点でDX人材を確保する計画を立てる
副業人材の活用や、地方でのリモートワーク採用など、柔軟な採用戦略を検討する
大学や専門学校と連携し、インターンシップなどを通じて若手人材の確保を図る
これらの失敗例から学べることは、DXは技術導入だけの問題ではなく、経営戦略、組織文化、人材育成など、多面的なアプローチが必要だということです。自社の状況を客観的に分析し、これらの失敗を回避するための対策を事前に講じることが、DX成功の鍵となります。
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