アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第8話「なやめるオスティナート」レビュー「斯くして黒江は実力で久石と黄前を粉砕し…黄前の魂は建前と本音の間でふたつに裂かれるのであった…。」
3日間の盆休みを終え,北宇治吹奏楽部は3日間の夏合宿に入る。
顧問の滝と夏合宿恒例の
ふたりの指導教官・パーカッションメインに指導する橋本真博と
木管の指導を担当する新山聡美を
加えた3人が例年より厳しく指導して行く。
新山「今年こそは結果が出せるように一緒に頑張りましょう」
新山の言葉から3人の指導教官は
昨年の関西大会出場,一昨年の全国大会出場を
「結果を出した」と見做していないと分かる。
全国で金を獲って初めて「結果を出した」と見做されるのだろう。
今回の夏合宿は初日に関西大会出場をかけた
2度目のオーディションが実施されるのが最大の特徴で
1度目の府大会向けオーディションに受かっていても
今回落ちるかもしれないし前回落ちていても今回受かる可能性があるのだ。
オーディションを前に緊張が高まる黄前に
例によって黒江が話しかけて来る。
黒江「久美子ちゃん…ワタシやっぱり辞退しようか…?」
「オーディション…」
またか。
いい加減黒江の…この態度が腹が据えかねていた黄前の返事に怒気が籠る。
黄前「どうして?この前は吹くって言ってたよね…?」
黒江「アレは…久美子ちゃんがそうして欲しいって言うから…」
黒江「でも…久美子ちゃんはソリ吹きたいって思ってる…でしょ?」
黒江「高坂さんも奏ちゃん達も皆ソレがいいって思ってる…」
黄前「だからと言って真由ちゃんが辞退したら北宇治の為にならない」
黄前「いちばんうまい子が吹く。ソレが北宇治だよ」
黄前のコトバに堪りかねた様に黒江が叫ぶ。
黒江「ソレは建前だよねェ!?」
黒江「突然やって来た転校生がッ!
今まで頑張って来た部長のソリを奪ったら…」
黄前「黒江…てめェ…!」
「オマエが辞退しなかったらワタシが落ちて!」
「…ワタシが落ちてオマエが選ばれると言うのか…!?」
黄前の脳裏に吉川優子の姿が甦る…。
1年生の癖にトランペットのソロパートに抜擢された高坂麗奈に
食ってかかる吉川優子の姿が…。
ソロパートは3年間北宇治で頑張って来た
中世古香織が吹くべきだと主張する吉川優子の姿がッ!
黄前「……ワタシが1年のときも下級生は上級生に遠慮した方がいいとか」
黄前「頑張った人にレギュラーの座を譲るべきとか…
そんな空気はあった…」
黄前「でも北宇治は変わったんだよ…(麗奈とワタシが変えたんだ!)」
黒江「…揉めたでしょう…?」
黄前「(しっぬっほっどっ)揉めたよ…」
黄前「ソレでも頑張って皆で変えて来たから
今の(完全な実力主義の)北宇治があると思う…」
黒江がこの話題を持ち出す限り黄前は
「2年前のコト」を思い出し胸が痛むのだ。
コレで…仮に…仮に…今回のオーディションで
ソリパートに高坂と黒江が選ばれたとしても黄前は
「ワタシは3年間北宇治で頑張って来たのに…」とか
「新参者の黒江はワタシに遠慮してソリパートの座を譲るべき」
とは口が裂けても言えなくなった。
結果として黄前は黒江に…「退路を断たれた」のだ…。
そして今回の関西大会向けオーディションの結果…。
前回落とされた2年の鈴木さつきは見事に1年の釜屋すずめと比較して
音量が足りないと言う弱点を克服し釜屋すずめと共に合格し…。
ユーフォパートでは2年の久石奏が落ち…。
ソリパートには高坂と黒江が選ばれる…。
…つまり現時点に於ける
北宇治吹奏楽部で最もユーフォのうまい人間は
黒江真由であると滝の判断が下されたのだ。
黒江がいなければ久石は落ちることはなかったかも知れない…。
黒江がいなければ黄前がソリパートに選ばれていたかも知れない…。
2年前に高坂が実力で中世古香織を粉砕しソロパートの座に就いた様に
黒江が実力で久石を粉砕しレギュラーの座から落とし
黒江が実力で黄前を粉砕しソリパートの座から落とした…。
ソレは2年前に高坂と黄前が北宇治吹奏楽部を
一切の情実を考慮しない完全な実力主義に変え
年功序列や「頑張り」よりも実力を評価する様に変えた
当然の結果なのだと描いて
「次の曲が始まるのです」
今回のオーディションの結果発表は副顧問の松本先生ではなく
滝本人が行い…「選考」に一切の情実が絡んでいない事を示している…。
勿論…黄前や高坂や久石はこの結果に文句の言えた義理ではないのだが…。
例え文句の言えた義理ではなくとも文句を言いたい…ッ!
この…到底表現しようのない
矛盾に満ち満ちた感情が炸裂寸前である訳で…。
「このままで済む筈がない」のである…。
仮に…北宇治吹奏楽部が関西大会で「終わった」場合,
黄前の…「最後の夏」がコレで「終わり」だと
納得出来る訳がないのである…。
「オスティナ―ト」と言うのは
ある一定の音型が繰り返されるコト。
2年前に中世古香織と吉川優子の
「ソロパートを吹きたい/中世古がソロパートを吹くのを見たい」
という夢を粉砕した
高坂麗奈と黄前久美子が…。
今度は黒江真由が高坂麗奈と黄前久美子の
「全国でふたりでソリしたい」
と言う夢を粉砕しにかかり…。
斯くして「歴史は繰り返す」コトを
「オスティナ―ト」と表現してるのだ…。
黄前の本質は…高坂麗奈に匹敵する程の「負けず嫌い」であり…。
黒江に負けたまま終わる様なタマじゃないんだよ…。
全国大会に向けた最後のオーディションで必ず雪辱すると思ってるよ…。
だから…何も心配していない。