「オトナプリキュア」全12話レビュー「自分を無条件に信じる心こそコドモがオトナに勝る点である。」
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「オトナプリキュア」第1話が視聴可能となりました。
折角ですのでnoteに投稿した内容に加筆して
Amazonレビューを投稿しました。
以下はその投稿内容となります。
2007年にテレ朝系で放送された「Yes!プリキュア5」から16年。
同作の「続編」がNHKで制作される事が発表されたとき,
エヴァがNHKで放送された事を根に持つ方が
「エヴァと同じ様にNHKにプリキュアが盗られた」
とSNSで大騒ぎしていましたが,僕はそう思いません。
その方は恐らく東京か大阪の周辺にお住まいなのでしょう。
だから
「テレ朝(民放)でプリキュアが放送される事は当たり前」
と思い込まれてる。
ちっとも「当たり前」じゃありません。
地方ではNHKと民放1局なんて事はザラで,
そのたったひとつの民放で「プリキュア」が放送されるか否かは
熾烈な競争があって,競争に負けたなら,
そもそもその地域では「プリキュア」は放送すらされない。
しかし如何なる地域であってもNHKなら映る。
つまりこの「オトナプリキュア」は
初めて全国で放送される「プリキュア」なんです。
「プリキュア」の全国区進出を素直に喜べない人を気の毒に思います。
2023年10月7日にEテレで「オトナプリキュア」の第1話が放送されました。
「Yes!プリキュア5」から16年が経過して,当時中学2年生(14歳)だった
夢原のぞみも今や30歳となり,夢を叶えて私立の小学校の教師になってます。
のぞみは生徒達に地球環境の授業をしてるのが
今日的でありプリキュア的でもあります。
しかし生徒の
「ダンスで全国大会に出場して優勝したい」
って夢が潰えようとしています。
生徒の父親の仕事が行き詰まり,両親は離婚,
生徒が九州に引っ越す事となり引っ越し先にはダンス部がない。
例えのぞみにプリキュアへの変身能力があったとしても,
生徒の父親の仕事の行き詰まりは打開出来ないし,
両親の離婚も止められない。
上長からは
「ひとりの生徒に入れ込み贔屓するのは止めろ」
と注意される有様。
「プリキュア」で
シングルファーザー,シングルマザーの話は度々ありましたが,
ここまで「家庭の危機」を描写した事は無かった。
オトナになってもプリキュアになっても
「どうしようもない」事の方が多い。
のぞみに出来る事は「生徒の為に泣いてあげる事」「励ます事」位。
挙句逆に生徒の方から励まされる有様。
のぞみが夏木りんに愚痴を零していると
かつての仲間と偶然再会する…第1話はここまで。
「オトナプリキュア」は公式の「プリキュア」がやりたくてもやれない事,
言いたくても言えない事に切り込んで行く作風と受け取りました。
先ずNHKだから当然とは言え
「玩具や菓子の販促のCMが一切無い」のが有難いですね。
本当にね。CMは大きなお友達にはノイズでしかないのよ。
次に作画。当時より作画技術が大幅に向上してます。
声優さんは当時のキャストが引き継がれてます。
本家プリキュアはCMで販促しないといけない,
毎回変身バンクを入れないといけない,夢と希望を壊してはいけない等々,
「縛り」が多いのですが,
「オトナプリキュア」はそうした「縛り」から自由なのがいいですね。
今の所「オトナプリキュア」でプリキュアに変身するのかは不明ですが
「変身バンク」のノルマから解放されてるといいですね。
コドモの方がノルマが多く,オトナの方がノルマから自由なのは皮肉ですね。
現実は「逆」なのにね。
隠しテーマとして
「30歳になっても夢や希望を捨てなくていい」
「30歳になってもトキメいていい」
があると思います。
近藤るるる先生の「アリョーシャ!」って漫画で
飛び級でFBIの捜査官になったケイティというキャラが
日本にやって来るのですが
彼女が日本に来た表向きの理由はアリョーシャの内偵なのですが
真の理由を彼女自身が次の様に語る場面があります。
「日本人のキャラクターに対する愛情は世界一だわっ」
「街の至る所に可愛いキャラがいっぱい!」
「街行く大人が普通に漫画を読んでゲームをして!」
「テレビでは週に70本新作アニメ放送して!」
「こんなCOOLな国,世界の何処にも存在しないわっ!」
「私ずっと日本に来たくて,ようやく来ることが出来たの!」
「チョー幸せっ!」
「オトナプリキュア」が国営放送が作った
30歳以上向けのアニメで
「幾つになってもアニメを観る」
「アニメを観る事を国営放送が推奨する」
日本人でなければ考えられん事態なのです。
YouTubeを観ると日本で暮らす事を希望する外国の方の多くが
日本のアニメを観て日本の事を勉強された方が多いのです。
30歳以上向けの「プリキュア」が作られ
全国津々浦々で放送された事を僕は誇りたい気持ちなのです。
ここからは第2話のレビューとなります。
「オトナプリキュア」が始まったとき,
のぞみ達は再びプリキュアに変身するのか,
30歳を過ぎても変身出来るのか…が気を揉まれた1週間であった。
まあね。
僕は「薄汚いオトナ」になってしまったから
「30歳過ぎのプリキュアもアリなのでは」
と埒も無い妄想に耽っていたのですが
結論から言えば第2話で
夢原のぞみはキュアドリームに16年ぶりに変身しました。
その際の「変身出来る理屈」が面白かったので解説します。
今回の敵シャドウはオトナに「諦めよう」「どうせ何をしても無駄」と囁き,
心を眠らせて辛い現実から逃避する事を推奨して来ます。
「のぞみの心の影(シャドウ)」も生徒の父親の仕事の不振も,両親の離婚も,
ダンスの全国大会に出たかった生徒の夢も,
何ひとつ解決出来なかったのぞみの無力感を突いて
辛い現実を忘れて眠るよう呼び掛けて来ます。
一旦はのぞみの心は眠りに就くのですが…。
確かにオマエは何も出来なかった。
だからと言って
「何も出来る事はない」「何をやっても無駄」
「無駄な事をするのは止めよう」
と14歳だった頃の…プリキュアだった頃の自分に胸を張って言えるのか。
オトナの心の中には「コドモだった頃の自分」が生きていて
真っ直ぐな瞳でこっちを見詰めている。
オマエは「コドモだった頃の自分」の瞳を見返す事が出来るのか。
現実から逃避して寝てる場合じゃないんだよ。
こうして「心の中の14歳」がキュアドリームに変身して戦うのである。
プリキュア5は「心の強さ」で戦うって設定を思い出したよ。
「心の中の14歳」が変身して戦うので
姿形も14歳となり変身も必殺技も16年前のまま。
そう言えばキュアフラワーも変身すると
「絶頂の肉体」に戻ってましたし
「プリキュア」の世界観を壊してないのです。
ただバンク以外の作画が死ぬ程気合いが入っていて
「鬼神キュアドリーム」を堪能出来ます。
オトナでは辛くて跳ね返せない苦境も
何の根拠の無い全能感・無敵感に満ち溢れた
「私には何でも出来る」
と無邪気に信じてた14歳のコドモなら跳ね返せる。
コレが本作の主張する「中二病」と言う訳。
全てのオトナは昔はコドモで
どんなオトナの心の中にも
「14歳だった頃の・コドモだった頃の自分」
がいて苦難に立ち向かうのが本作の「変身出来る理屈」なのだ。
勿論16年前にコドモだったオトナが
キュアドリームの勇姿を見て拍手喝采を送る事は言うまでもない。
5人+くるみの6人が集まるのが酒の飲めるパブなのが現実的ですね。
コドモみたいに「集まろう」と思ったからと言って直ぐに集まれず,
「飲み会」とか何かしら口実を作らないと集まれないのがオトナですもの。
6人の中で一番現実がキツいのがこまち。
6人の中でこまちだけが収入ゼロで実家暮らしの「何者でもない」設定。
小説で一度何かの賞を取ったものの
承認欲求が満たされて満足してしまった故なのか
創作意欲が減退して書けなくなった。
「書けなくなった」
からと言って物書きの才能を
「ハイそうですか」
と手放す訳にも行かず
手持ち無沙汰な日々が続き,
仕方なしに町内会活動の草むしりに参加するしかない。
近所の方に
「忙しいのに悪いわね(こまちちゃん)」
と労われても到底額面通り受け取れず
何か責められたり
「私が全然忙しくないのを知ってる癖にワザワザ「忙しいのに」と労った」
とDISられ妄想に煩悶する毎日が永遠に続く予定。
家業の和菓子屋は姉が継いでいるので
「小説家を目指して駄目だったから家事手伝い」
って退路が断たれてる。
姉に
「最近書いてるの?」
と何気なく聞かれるのが
一番辛い針の筵(はりのむしろ)の日々…。
いやあ…「オトナプリキュア」の情け容赦の無さに
お腹がキュウキュウ痛みますね。
「オトナプリキュア」の主題が
「オトナには出来ない事もコドモには出来る」って思われ勝ちだけど,
「コドモは「自分に出来ない事なんてない」と根拠なく信じることが出来るのがオトナにない長所」
と言ってるのだと思います。
だってさあ。
実際の話オトナはコドモに比べて「出来る事」が沢山あるじゃないですか。
うるさい親も教師もいないし自由になる金もあるし
何より何でも自分で決められる。
「オトナに出来ない事もコドモには出来る」
なんて話,経験則に照らして腑に落ちねえんですよ。
ただ「信じる心」とか「全能感」ではオトナはコドモに負ける。
スティーヴン・キングの「IT」では
化け物を「コドモの根拠なく信じる心」で1度は滅ぼしたけれど,
オトナになったら「根拠なく信じる心」を失って
化け物の撃退が困難になったって話を
「オトナプリキュア」で翻案しているのだと思ってます。
今回はのぞみが「14歳だった頃ののぞみ」に戻って変身したけど
次回は今や医師となったかれんが変身する模様。
楽しみですね。
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