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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第9話「ちぐはぐチューニング」レビュー「関西大会向けオーディションの結果に対する不満…ひいては滝の指導方針に対する不満が吹奏楽部全体で顕在化し…黄前と高坂の仲を裂くのであった…。」

夏合宿初日に関西大会向けオーディションが実施され…。
ユーフォは2年の久石奏が落ち,
ソリパートでは黄前久美子が落ちて黒江真由がソリパート担当となった。

「北宇治は完全な実力主義」なのであるから
一番うまい黒江が久石を粉砕してレギュラーメンバーから落とし,
黄前を粉砕してソリパートから落とすのは「当然」なのであるが…。
パーカッションの指導を担当する教官の橋本真博は
吹奏楽部に漂う「嫌な空気」を感じる。
何かこう少しも楽しくなさそうでギスギスして…。

北宇治吹奏楽部が…。
高坂と黄前が
「なあなあで音を楽しむ古き良き北宇治吹奏楽部」
を殺した結果が…。
「少しも楽しくなさそうな北宇治吹奏楽部」なのだろうか。

先に鈴木美玲が部長の黄前に
「3年生と違って…1・2年生は滝先生を盲信してません…」
を真情を吐露していたが…「滝への不満」が夏合宿中に顕在化して行く。

府大会でユーフォ・チューバは共に3人編成で行くと滝は決めたのに
関西大会向けオーディションではユーフォが久石が落ちて2人編成となり
代わりにチューバが4人編成となった。
チューバは卒業した後藤卓也の抜けた「穴」を補強したのだろうが…。
編成を余りにも変え過ぎなのではないか…。
黒江をユーフォのソリパートに据えるのは「急」なのではないか…。
滝の指導方針への疑問は1・2年生だけではなく
副部長の塚本秀一,川島緑輝からも挙がって行く。
塚本にはどうしても黄前がソリパートを落とされた事が納得出来ないのだ。

高坂「昨年も一昨年も結局全国で金を獲れなかったのだから
「何か」を変えるのは当然ではないか!」
「ソレを…どいつもこいつも滝先生の指導方針に陰口叩きやがって…」
「ドラムメジャーとして到底看過出来ぬ!」
「不満分子を徹底的に厳しく注意する絶対の必要がある!」
「滝先生の指導方針に疑問を抱いたら吹奏楽部は空中分解する!」
「滝先生のやり方に「疑問」を持つなど許されないッ!」
「自分達の努力が足りないからオーディションを落とされた癖にッ!」
「自分達の努力不足を棚に上げて!」
「滝先生を批判する事など許されないッ!」

黄前「麗奈…そうやって部員の不満に蓋をすることが
部長として正しい事とはどうしても思えない…」
「麗奈の理屈で言ったら…ワタシは努力が足りないから落とされたの…?」
「滝先生の指導方針はおかしいと思う…」

高坂「だったら…だったらアンタは部長失格だッ!」

鈴木美玲が言うところの…「滝先生を盲信する3年生」とは…。
暗に高坂麗奈のコトを指しており
美玲が高坂に対して決して好意を抱いていない事がココで明らかとなった。
ソレは…吹奏楽部1&2年の「高坂に対する悪感情」の発露なのだ。

滝に対する不満を述べることが
「自分の努力不足を棚に上げている能無しの所業」
と高坂が言うのなら黄前は高坂と共に歩く事は出来ない…。
何故なら黄前は努力しているからで…。
その努力を全く評価しない高坂の言に従う訳には行かないからである。
高坂と黄前が作り上げた北宇治吹奏楽部は
「頑張り」や「年功序列」を真っ向から否定するものであるが,
ソレは滝への不満を一切述べてはいけない事と同義ではない。

「おかしいものはおかしい」と批判するのが…。
部員の不満の声を代表して滝の指導方針を問い質すのが
ワタシの…部長の役目と信じて

「次の曲が始まるのです」

黒江は滝の指導方針の結果,ユーフォのソリに選ばれたのであって
黒江は以前から
「北宇治で頑張ってきた人がコンクールのメンバーに選ばれるべき」
と主張している。
黒江は黒江なりに
「こんなのはおかしい」
と滝への不満を表明していたのだ。
黒江は…滝の指導方針の犠牲者なのであろうか…。

今回の関西大会向けオーディションは1枚岩に見えた
部長の黄前,副部長の塚本,ドラムメジャーの高坂の3者…。
幹部の間にも亀裂を齎した。

高坂が主張する様にコンクールのメンバーに選ばれなかった
吹奏楽部員の愚痴も多分にあるだろうが
昨年,一昨年はオーディションは1度しかなく,
その1度のオーディションの結果決まった編成は変わる事は無かった。
ソレが今年はオーディションの度に編成の見直しが入っている…。
高坂が主張する様に「北宇治は完全な実力主義」で
オーディションの度にその時点に於ける最高の編成で臨むのは
「理に適っている」様に思われたが実際は再三編成の見直しが入り
吹奏楽部員に不安と不満が広がっている…。
今までとは違う「新しいこと」をしなければ強くならない…。
ってのは「理屈」であって実際にその「理屈」を運用した結果,
不具合が生じても,その不具合を自浄する事が出来なくなっている。
何故なら滝が不具合の発信源だった場合,
その不具合を取り除く方法がないからである。

仮に「顧問のやり方」が間違っていても
誰も「間違ってる」と指摘出来ず
自浄出来ないなら…高校生に…。
高坂麗奈の様に「顧問を信じてついて行く」以外の
一体何が出来るのだろうか…。

これさあ…「黄前がどうこう出来る話」じゃないんじゃないの…?

6/3追記:一晩「滝の指導力」について考えました。
2期の第5話で当時副部長だった田中あすかが
関西大会直前に滝をこう評価しています。

田中「…去年の今頃…ワタシ達が
今日この場にいる事を想像出来た人はひとりもいないと思う…」
「2年と3年は色々あったから特にね…」
「…それが半年足らずでここ迄来ることが出来た」
「コレは紛れもなく滝先生の指導のおかげです」
「…その先生への感謝の気持ちも込めて」
「今日の演奏は精一杯全員で楽しもう!」
「…それから…今のワタシの気持ちを正直に言うと…」
「ワタシはここで負けたくない」
「『関西に来られて良かった』で終わりにしたくない…」
「ここ迄来た以上,何としてでも「次」へ進んで
北宇治の音を全国に響かせたい!」
「だから皆…これ迄の練習の成果を全部出し切って!」

この直後に行われた関西大会で
北宇治吹奏楽部は全国大会出場を決めている。

滅多に「本心」を明かす事の無かった田中が滝を評価し
部員全員に檄を飛ばす場面が…。
当時1年だった高坂や黄前の心に強く焼き付き…。
「滝を信じてついて行けば全国に進める」
との思いを構築したのである。
ソレは…我々視聴者の思いも同じである。

鈴木美玲は高坂を「滝を盲信する3年生」と批判するが…。
高坂や黄前はこの
「田中あすかの滝への評価」
「赴任して僅か半年で北宇治吹奏楽部を全国大会に出場させた滝の手腕」
を目の当たりにして来た訳で「盲信」ではないと思う。

「盲信」と言う言葉を美玲が発するのは彼女が
「関西大会止まりで全国大会に進めなかった」
という経験しか持ってない事から発するのだ。

高坂にとっては全国大会出場は具体的光景であって
「滝を信頼する」
に足る理由であるが美玲にとってはそうでは無いのである。

正直な話…3年が「滝の指導力」に疑問を抱く現状の展開は腑に落ちない。
寧ろ滝に全幅の信頼を置く高坂の姿勢こそ僕は支持したいのである。
ソレを…高坂を「頭のおかしな滝信者」として扱う現状は…。
承服しかねるのである。

大体これ迄…。
黄前の「上手い人がレギュラーになる」って建前と
「そうは言っても高坂と全国でソリしたい」って本音の間で板挟みとなり
黄前が練習して黒江より上手くなって全国では高坂と黄前がソリする…。
って論理展開を予想してたのに
ここに来て急に
「黄前と黒江が対立するのは滝の指導方針が悪いせい」
と言われても「ハア?」なのですよ。

「滝の指導方針が悪い」と言うのなら
滝の指導の「弊害」をキチンと描写して
伏線を敷いて貰わねば納得出来ません。

「滝の指導が悪い」と言うのは鈴木美玲が主張してて
その根拠は1年の釜屋すずめがオーディションに受かって
2年の鈴木さつきが落ちた事に対する不満から発していて
その不満に対してはさつきは「音量」が足りないと
滝から黄前を通して回答していて
さつきは関西大会向けオーディションには受かっている。
つまり「滝の指導」には問題なかった訳で
それでも尚「滝の指導」に問題があると言うのなら何処に問題があるのか。

ソレが全く分からず
「黄前がソリに選ばれなかったのが気に食わない」
とか単なる部員の愚痴じゃないですか。

しかしながら…滝には明確な「落ち度」があるんです。
ソレは…「黄前ひとりにかかる負担が大き過ぎる」という点であり
黄前は「黄前相談室」と「部長」の権能を兼ね
依然として部員の「直訴」の窓口となっている。
後任として剣崎梨々花を育成しているが
もうとっくに廃止されたと思い込んでた
パーリー会議が開催されてる描写があって2年は剣崎ひとり。
これじゃ剣崎が「強く物申せる」訳がない。
滝の頭には「黄前の代で全国金を獲る」って考えがあり
「その後のこと」を考えてない様に思える。

コレは明らかに黄前ひとりを過剰に信頼する「滝の落ち度」であると思う。
コレは…滝が信頼する相手はとことん信頼し
「そうでない相手」は信頼しないパーソナリティから発してると思う…。

従って「黄前が過労でダウンする」のが
滝の指導の「問題」として描写される作劇となるべきと僕は思うのである。

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