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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第11話「みらいへオーケストラ」レビュー「あのオンナは…「性悪」ですッ!…月までブッ飛ばして下さいよ部長ッ!」。

北宇治吹奏楽部は部長の黄前の大演説の甲斐あって
部内の悪くなった空気を一掃して関西大会に臨み…。
見事全国大会出場を決める。

だが…黄前は心から喜べない…何故なら全国大会で高坂とソリするには
全国大会向けオーディションで黒江真由を粉砕する絶対の必要があるが…。部内で高坂麗奈を超える実力者である川島緑輝は
「久美子ちゃんと真由ちゃんの実力差はない」
と明言してるからで…。
滝は自分より黒江を評価しているのでは…との疑念が拭えないからである。

「黄前と黒江のどちらがソリすべきか」
という問いに川島はこう答えている。

府大会向けオーディションで一度久美子ちゃんがソリに決まったのに
関西大会向けオーディションで一転して真由ちゃんがソリに決まった事に
よって部内に「落ち着き」が無くなった。
また府大会向けオーディションで一度決めた編成を
関西大会向けオーディションで編成を変更した事により
部内に「落ち着き」が無くなった。

川島が言いたいのはソリの件にせよ編成の件にせよ
「一度決めたコトを変更した」
コトが部内の「落ち着き」を無くし関西大会に臨めなくなる事態を招いた。
久美子ちゃんと真由ちゃんの実力が拮抗してるなら
久美子ちゃんがソリした方が部が落ち着く。
「一度決めたコトは変更しないで欲しい」
というコトなのだ。

コレは黒江も最初から主張してるコトで
「突然やって来た転校生がソリやったら皆納得しない」
と再三再四主張し
「ワタシ…ソリを辞退しようか…?」
と何度も何度も黄前に申し出ている。

しかし…。
「黄前部長は黒江先輩の『本性』が全く分かってません」
と久石奏は主張する。
黄前が…。
「川島と黒江は『同じコト』を主張している」
と思ってるのは「違う」と久石は言うのである…。

「アノヒトは部長に
『ワタシの為にソリを辞退して下さい』と言わせたいんです」

「だから何度も何度も『ワタシ…ソリを辞退しようか…?』と申し出てる」
「あのオンナに辞退する気があるなら何にも言わずに辞退してます」
「仮にあのオンナと部長の立場が逆だったら部長はあのオンナに…」
『ワタシ…ソリを辞退しようか…?』
「なんて聴きますか…?」
「絶対聴きませんよねえェェェ?」
「絶対ソリの座を譲ったりなんかしませんよねェェェ?」
「あのオンナは部長を屈服させたいだけ!」
「あのオンナに辞退する気なんてありませんッ!」
「ワタシが…ワタシが…そういうオンナだから良く分かるんですッ」
「あのオンナは…「性悪」ですッ!」
「ワタシは…部長にソリを吹いて欲しいんですッ!」

黄前の…「上手い人がソリをやるべき」という建前と…。
「そうは言っても全国では麗奈とソリしたい」という本音の狭間で
苦しむ姿に付け込んでいるのが黒江だと久石は言うのである…。

黒江は…川島の主張する様に「部を落ち着かせる」為に
ソリの辞退を申し出てるのではなく
黄前を屈服させ頭を下げさせたいが為に
ソリの辞退を申し出ていると久石は言うのである…。

田中あすかは黄前が建前で雁字搦めになっている姿を見て
「オマエの本領は…本音しか言わなくなったときに初めて発揮される」
と助言している。

今や黄前は…久石の言葉が真実であろうと事実誤認であろうと
「心の底からどうでもいい」
と思ってるよ…。
「師匠」の田中あすかの様に…。

黄前にとって重要なのは建前と本音を両立させるには
「ワ・タ・シが黒江を負かして全国でソリを吹く」
コトだけであり…「黄前の希望」には
「ワ・タ・シがそうしたいんだッ!」
という炎の意思が今や宿っている…。
そしてその黄前の炎の意思を
川島も久石も高坂も塚本も最初から望んでいたのである…。

つまり…黄前の心を弄ぶ様に見える
「黒江」と言う名の「魔性」を…。
全国大会向けオーディションで粉砕して初めて…。
黒江を悔し泣きさせて初めて…。
黄前の心中から「わだかまり」が一掃され…。
心置きなく全国で高坂とソリして…。
全国金を獲って…。
高校生活を終えて…。
「みらい」に向かって歩き始められるのだ。

「黒江の馬鹿野郎を全国大会向けオーディションで月までブッ飛ばす」

この「本心」に到達する迄紆余曲折があったねえ…。
次回は「全国大会向けオーディション」という引きで

「次の曲が始まるのです」

「ユーフォ」の3期もあと2話で終わる。
次回「さいごのソリスト」が全国大会向けオーディションで
最終話がこれまで一切描かれなかった演奏の模様が
全国大会という最高の舞台で
いよいよ京都アニメーションの総力を挙げた
描写が発揮されるのであろう。

もう直ぐ「ユーフォ」が終わるんだなあ…。

今回は音大に進学した鎧塚みぞれが
早くもソロパートを任された演奏会の模様が描かれ
鎧塚は勿論傘木希美,吉川優子,中川夏紀,黄前久美子,高坂麗奈の
メイクアップ&ドレスアップした姿を堪能出来る。

鎧塚に
「ワタシが…来年後輩になるかもと言ったら驚きますか…?」
と黄前が尋ねると
「少しも驚かない…」
「アナタがワタシの後輩になるビジョンが全く見えないから…」
と答える場面が印象に残る。

黄前は鎧塚の「予知」を信じ…高坂に「音大には進まない」と意思表示して
高坂はソレを…黄前からの「別れ話」と受け取って泣き出す描写に…。
ここのところずっと「正しい人」として描かれて来た
「素の高坂」の「可愛げ」が結晶化している。

高坂に両手を差し出し「大好きのハグ」とハグを求める黄前の姿は
部長の重責を離れた「素の黄前」を久しぶりに見た思いがするのである。

全国大会の「結果」如何に因らず…。
「進路」が「別れ道」として描かれる作劇に唸る。

滝と黄前の会話も味わい深い。
滝「ワタシは昔…高校の吹奏楽の顧問は…『賽の河原』の様に…」
「幾ら石を積んでも鬼に突き崩されるだけなのではないかと…」
「(死んだ)妻に言った事があるんです…」
黄前「奥さんは何て…?」
滝「『人間は「石」なんかじゃないよ』と叱られました…」

職員室の滝の席にいつも飾られている
若い頃の滝・奥様・橋本・新山の4人が映った写真…。
初めて奥様のお顔がハッキリ見て取れる…。
滝が…黄前に心の底の底まで見せた信頼の証なのであろうか…。

「めぞん一刻」で…五代裕作が初めて写真に写った
惣一郎の顔を見る場面を連想させます…。
五代が音無響子の信頼を得た瞬間…。

滝は…「自分の事」を余り話そうとしない性質なので…。
黄前には「自分の事」をスッと話せる描写に…。
職員室に夕陽が差し込んで…。
より一層趣深いのである…。

もしかして滝は…黄前に一生補佐して欲しいと思ってるのでは…。
少なくとも僕は…。
「滝が途方もなく黄前を信頼してる」
と受け取り…。
冒頭の黄前の…。
「滝は自分より黒江を評価してるのではないか…?」
という疑念に対する「答え」となってると感じたよ…。

正直さあ。

前回・前々回と「窒息しそうな感じ」だったのが
今回は久しぶりに伸び伸び呼吸出来て…。
自由自在にレビューが書けました。

あとは…黒江の馬鹿野郎を月までブッ飛ばして悔し泣きさせて
全国大会で悔いのない演奏をするのみである…。


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