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島本和彦先生の漫画「アオイホノオ」第31巻レビュー「真相」。

僕はたったいま…
島本和彦先生の「アオイホノオ」の最新第31巻を拝読し…
恐怖にガタガタ震えている…。

僕が何故…「恐怖にガタガタ震えている」のかを…
順を追って解説したい…。

本巻の登場人物は4人。
ホノオモユル…新人漫画家。
週刊少年サンデー誌で「炎の転校生」の連載を開始…
単行本1巻の上梓を控え…単行本作業で忙しい…。
マウント武士…ホノオのアシスタントで…彼を敬愛している…。
三上さん…ホノオの担当編集者。
松本伊代…戸板女子短期大学1年在学中のアイドル歌手。

「炎の転校生」第1巻の売れ行きが好調で…
第2巻が前倒しで上梓されるコトが決まる…。

第1巻第1話で主人公の滝沢昇は…
「先生が死ねと言ったら死ぬのか…?」
「松本伊代と結婚しろと言ったら結婚するのか…?」
と煽られ…
「する…」
「松本伊代とだったら結婚するぞーッ」
と言い返す程…熱烈な伊代ちゃんファンで…

第2巻が出たら
松本伊代のラジオ番組に出さすと編集部と約束しており…
編集部は約束を果たし…
斯くしてホノオと伊代ちゃんとの対面の日がやって来る…。

ホノオによる伊代ちゃんのラジオ番組の
収録模様の描写をまあ聞いて欲しい…。
「(伊代ちゃんは)凄い身振り手振りで…」
「思い切り体を動かしながら喋ってた…」
「目の前に誰も居ないのに…」
「まるで誰かが居るみたいに…」
「そうか…聞いてるヒトには見えてなくても…」
「ソレでもコレだけ力いっぱい喋ってる…」
「そんな姿を目の当たりにしてオレは…」
「心の底から感動したんだ…」
(中略)
「(だから…)オレもこのやり方でやってみよう…」
「心からそう思ったんだ…」

コレは…島本先生による「種明かし」だと…
僕は思ってるよ…。

「マウント武士」なんて本当は実在せず…

「(ホノオ先生は)凄い身振り手振りで…」
「思い切り体を動かしながら喋ってた…」
「目の前に誰も居ないのに…」
「まるで誰かが居るみたいに…」
「コレだけ力いっぱい喋ってる…」

って「伊代ちゃんから学んだコト」を…
島本先生は…作劇に生かしてるんだって「種明かし」…。

先生は…幾つも読者に真相追跡の手掛かりを残され…

表紙では確かにホノオの仕事場に立っていた
マウント武士ちゃんが…
内表紙では立っていなんだよ…赤ちゃん…。

つまり伊代ちゃんから
「コレ(スズメ)何ですか?」
って聞かれてショックを受けて…
仕事場に帰って調度品を散乱させたのは…
武士ちゃんじゃなくホノオ先生であって…
「マウント武士ちゃん」なんて…
最初から存在しなかったんだよ…コオロギくん…。

そう考えると何もかも辻褄が合う…。

ホノオ先生は…
独りで映画館に行き…
独りで「ビューティフルドリーマー」を観て…
独りで喫茶店で感想戦を繰り広げて…
独りでビデオショップに寄って…
独りで「シャイダー」のアニーのコスプレして…
独りで伊代ちゃんと面会した際のシミュレーションして…

延々延々「漫画家は独りぼっち」だって描いてるんだよ…。
ソレが「真相」…。

本巻の登場人物は4人だけど…
その殆どがホノオ先生と武士ちゃんの対話が占めている…。
しかしもし…「マウント武士ちゃん」が実在しないのなら…
本巻はずっとずっと…
「ホノオ先生のひとり芝居」が繰り広げられていたんだよ…。

コレが…僕が…「恐怖にガタガタ震えている」理由…。
皆にも是が非でも…「僕が味わっている恐怖」をお裾分けしたくてねえ…。
この「恐怖」は僕ひとりでは支え切れない…。

恐怖はトモダチ…コワくないよ…。
ツバサくん…僕はコワくてたまらないよ…。
初めて…ヒッチハイク監督の「サイコ」を観終わったトキの様にね…。

仮に…マウント武士ちゃんがイマジナリーな存在だとしても…
僕はホノオ先生を…微塵もキモチワルイとは思わない…
先生がキモチワルイとするなら…
イマジナリーな相手と「対話」しながら
思索を深めたプラトンが遥かにキモチワルイ筈で…
架空の対話相手を求めるのは思想が深化した証拠であるからだ…。

しかしながら…先生と丁々発止の対話が出来る存在が…
「現世」に存在しないとするなら…
ソレは…ゾッとする様な孤独であり…
先生がマウント武士ちゃんに対して
「スケベ」に描かれている事実が…
先生と世俗を結び付けている蜘蛛の糸であり…
「救い」なんだと思う…。

その糸が切れたら…
赤ん坊がオギャアと泣いて…
イデが発動し…
先生は因果地平の彼方に旅立たれてしまうだろう…。

だからホノオ先生には…
未だ未だ「スケベ」であって欲しい…。
ずっとずっと「俗物」であって欲しいのだ…。

マウント武士ちゃんは…
ホノオ先生のスタンド能力だと…
先生を応援するコトに特化したスタンド能力だと…
僕はいま…そう思ってるよ…。

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