アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第12話「さいごのソリスト」レビュー「ワタシは…麗奈が自分を曲げず…ワタシに引導を渡してくれた事を…ワタシを殺してくれた事を…あの日あの時の誓いを守ってくれた事をッ!心から誇りに思う…。」
全国大会向けオーディションの結果,
久石奏は関西大会向けオーディション同様に落ち…。
黄前久美子と黒江真由がユーフォニアム担当に選ばれる。
そして滝の提案で
ユーフォのソリ担当は黄前と黒江の再オーディションを行い…。
全員の投票で雌雄を決する事となった。
2年前に…高坂麗奈と中世古香織が再オーディションを行い,
雌雄を決した様に…。
黄前と高坂が3年生が何となあくコンクールのメンバーに選ばれる
古き良き北宇治吹奏楽部を殺し!
中世古の「トランペットのソロパートを絶対に吹く!」
という夢と!
中世古に心酔する吉川優子の
「香織先輩がソロパートを吹くのを見たい」
という夢を粉砕し!
完全完璧実力主義の新生北宇治吹奏楽部が
死ぬ程の産みの苦しみの末,誕生した,あの同じコンサートホールで!
黄前は審査は一切の情実を排し「音の優劣」のみで決めて欲しいと
滝に希望を出し…滝はその申し出を受け入れ…。
コンサート会場の一部を遮蔽して
既にトランペットのソリパートに決まっている高坂は分かるが
ユーフォのソリを演奏する奏者が分からぬよう配慮する。
つまり審査員となる客席の北宇治吹奏楽部員には高坂の姿は見えても
ユーフォ奏者の姿が遮蔽されて見えないまま
「1番目のユーフォ奏者」が良いか「2番目のユーフォ奏者」が良いか
挙手によって決めることとなる。
再オーディションを待つ黄前と黒江は話をする…。
黄前「2年前にも…この場所で再オーディションが実施されて…」
黄前「麗奈がトランペットのソロパートに選ばれたんだ…」
黄前「ワタシは…その麗奈の背中を押した…」
黄前「真由ちゃんがソリパートを辞退したがるのは…」
黄前「昔…オーディションで何か嫌なことがあったからでしょう?」
黄前「ワタシもね…中学のとき先輩を差し置いて
選ばれて嫌な思いをしたから…」
黄前「真由ちゃんの気持ちが分かるんだ…」
黒江は…訥々と「自分の事」を語り始める。
ずっと仲良くしていた吹奏楽部の友達がいて…。
いつも自分ばかりが選ばれて…。
その友達が友達も音楽も止めてしまったコト…。
黄前「でも…決して音楽には手を抜けない…」
「そうでしょ?真由ちゃん…」
「コンクールのメンバーの座を降りる気もさらさらない…」
「人から頼まれれば降りるけど…」
「自分からは決して降りない…」
「演奏に…ウソは付きたくない…」
「真由ちゃんの演奏は…」
「「どうでもいい」って思ってる人間の演奏じゃない…」
黄前「2年前に…この場所で麗奈は再オーディションを受けて…」
「ワタシと麗奈はそのとき誓ったんだ…」
「『音で決めるべきだ』って…」
『『上手い人が吹くべきだ』って…」
「あのときの気持ちを…」
「3年間信じて来たコトを裏切りたくない…」
「コレはワタシのワガママである」
田中あすかは言った…。
「黄前ちゃんはワガママになったときに最善の働きをする」と…。
黄前「だから今日…ワタシはワタシの全てを出して吹くだけ…」
「同情も心配も遠慮も無用である」
「真由ちゃんも…自分の信じるものの為に吹いて欲しい…」
黒江の脳裏に釜屋つばめのコトが甦る…。
黒江「つばめちゃんはどうしてワタシに吹いて欲しいの…?」
釜屋「演奏してる真由ちゃんが…本当の真由ちゃんな気がするから」
黒江「そんなに…敵に塩を送っていいの…?」
黄前「(ニヤッと笑って)いいとも」
「負ける心算などサラッサラないから!」
この…霞が晴れて…青空が広がる様な感覚…素晴らし過ぎる…。
再オーディションが実施された結果…。
「第1のユーフォ奏者」と「第2のユーフォ奏者」に
挙手する吹奏楽部員は同数。
吹奏楽部員数は奇数であるから誰かが未だ挙手してない…。
最後のひとりは高坂だった。
高坂の脳裏に黄前との2年前の再オーディションのときの思い出が甦る…。
高坂「…裏切らない…?」
黄前「もしも裏切ったら殺していい」
高坂「本当に殺すよ…?」
黄前「麗奈ならやりかねないと承知の上で言っている」
黄前「何故ならコレは…愛の告白だから」
高坂は…長い長い長い逡巡の後に…。
「第1のユーフォ奏者」を選び…。
「さいごのソリスト」は…黒江真由に決定する。
黒江が全国大会で高坂とソリを演奏するのだ。
「全国大会で黄前がソリするのが見たかった」
久石奏が吉川優子と同じ様に泣き崩れる悪魔的演出!
すかさず黄前の大演説が炸裂する!
「コレがッ!」
「今の北宇治のベストメンバーですッ!」
「ここにいる全員で決めた」
「言い逃れの出来ない最強メンバーですッ!」
「コレで全国に行きましょうッ!」
「そして…一致団結してッ!」
「必ず…金をッ!」
「全国大会金賞をッ!」
「獲りましょうッ!」
斯くして現時点に於ける北宇治吹奏楽部ベストメンバーは確定する。
腹の虫が治まらないのが久石奏である。
久石は黄前に食ってかかる。
久石「何してるんですか…」
「いつもいつもいつもいつも!」
「どうして!」
「貧乏くじばかり引きたがるんですか!?」
「悔しくないんですか!?」
「どうして…そんな…」
「先輩に吹いて欲しかった…」
黄前「…奏ちゃんは実力主義派じゃなかったの…?」
久石「ソレと…この気持ちは別ですッ!」
「ワタシだって…最後に久美子先輩と!」
「吹きたかった…!」
「でも…あんな演説聴かされたら…」
「前向くしか…ないじゃ…ないです…か…」
黄前「どうもありがとう…」
「奏ちゃんは…強い子だね…」
夜になって…黄前は…高坂に大吉山山頂に呼び出される。
2年前に…高坂から愛の告白を受けた場所…。
高坂は…2年前と同じ様に白いドレスを着用して待っていた…。
高坂は泣きじゃくっている…。
高坂「ごめん…なさい…」
黄前「どうして…?」
「謝るコトなんて何もないじゃん…」
高坂「違う…」
黄前「1番目の子の方がうまいと思った」
「だから選んだ」
「でしょ?」
高坂「違うッ!」
「ワタシは…2番目が久美子だって分かってた…」
「分からないワケないでしょ…」
「久美子の…音を…」
「分かっていながらワタシは1番を選んだッ!」
黄前「後悔してるの…?」
高坂「やっぱり…久美子は…性格悪い…」
黄前「ワタシは…分かっていた…」
「音大なんて行く柄じゃないって思い始めたときからの迷い…」
「その迷いが僅かに「音」に出た…」
「ワタシね…麗奈ならきっと聴き分けてくれるって思ってた…」
「そして…1番の子を選ぶって…」
黄前が…かつて高坂が黄前にしたように額を指差す。
黄前「だって…麗奈はワタシの「特別」だから…」
「きっと自分を曲げない…」
「麗奈は最後まで自分を貫いたんだよ…」
「ソレでこそワタシの麗奈である」
「ワタシはソレが何より嬉しい…」
「麗奈を誇らしいって思う自分に…胸を張りたい…」
「でもそんな麗奈だから…」
「実力で真由ちゃんに勝ちたかった…」
「それで…最後は麗奈と吹きたかった…」
「ワタシ…ワタシ…こんなにも…」
「死ぬほど悔しいィィィィィ~!!!」
「ワタシはッ!」
「この死ぬほど悔しい気持ちもッ!」
「誇りにしたいんだッ!」
「どんなに離れていても…」
「麗奈と肩を並べられる様に…」
そして…次の曲が始まるのです…
今回はOPもEDもない。
そんなことよりも!
優先すべき事柄が!
幾つも幾つも!
山の様に!
積み重なっていたからだッ!
全く…「ユーフォ」というやつは…。
「今回こそ最高の神回」
を軽々と超えて来るのものだから…。
安易に「神回」などという言葉が使えないし…。
最後の最後の最後まで「何」が最高だったか…。
安易に口に出来ない…。
実に油断のならない作品だと再認識したよ…。
「主人公だから全国大会のソリパートに選ばれる」
などという考えは「ユーフォ」では「甘え」だった…。
今日は…アニメで…。
酷い酷い酷い地獄が観られて…。
生きてて良かったって心の底から思ってるよ…。
「努力が報われない」
まこと実に素晴らしい地獄だった…。
今僕は…。
2年前は高坂と中世古の再オーディションが
コンサートホールで行われたのが
今回は黄前と黒江の再オーディションが同じコンサートホールで行われ…。
2年前は中世古が負けて吉川が泣き崩れた様に
今回は黄前が負けて久石が泣き崩れるという「歴史は繰り返す」と…。
かつて高坂が中世古を粉砕した様に
今度は黒江が黄前を粉砕する
「因果応報」のダブルパンチで失神寸前です…。
前回の僕のレビューの
「黄前が黒江の馬鹿野郎を全国大会向けオーディションで
月までブッ飛ばし全国大会で高坂とソリする」
という予想は大外れ。
黄前はあくまでも黒江との真っ向勝負を望み…。
黒江に月までブッ飛ばされ…。
貧乏くじ引きの馬鹿正直を通したのであった…。
黄前は馬鹿だと思うが…。
仮に黄前が黒江に
「ワタシの為にソリを辞退してくれ」
と土下座して頼む様な人間だったら…。
僕は黄前の生き様に対して滂沱の涙を流すことは無かったと思う…。
黄前…オマエと言うやつは…。
本当に…小利口に生きるのを断固拒絶する
近年稀に見る実に素晴らしい馬鹿正直だよ…。
2024/6/24追記
僕もスティーヴン・キングの「シャイニング」を
スタンリー・キューブリックの馬鹿が大改悪しやがった事は
今でも許せないしキューブリックの映画を観るのを拒絶してる。
だから原作が改変されたと言う「ユーフォ」のアニメに
発狂する原作ファンの気持ちは良く分かる。
僕はアニメで「ユーフォ」と出会い原作小説を全く読まずにここ迄来たから
昨日の3期12話を観ても発狂する事なく素直に感動することが出来た。
コレは「たまたま」であり
原作を読んでたら絶対に違った感想になったと思う。
発狂してたかも知れない。
だから発狂した原作ファンに対して
「キチガイは死ねッ!」
とは口が裂けても言えんのよ。
彼等はかつての僕だから。
彼等は僕がそうなってたかも知れない
「可能性としての僕」だから。
第12話の内容が「原作と違う」と言うのなら
最終第13話の内容も原作とは違って来るかも知れない。
「全国大会の結果」が変わり
「勝負の厳しさ」を思い知らされる結果となったとしても
例え何が起こったとしても決して逃げ出すことなく
最終話を最後まで観届けようと思う。
僕は…「響け!ユーフォニアム」という作品を…。
第1期第1話からずっと観て来たのですよ?
ココでケツまくって逃げ出すなど有り得ません…絶対に有り得ませんッ!