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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第5話「ふたりでトワイライト」レビュー「北宇治吹奏楽部で「革命」を成し遂げたふたりの素顔」。

北宇治吹奏楽部は吹奏楽コンクールで
全国金賞獲得を目指して日々練習に励んでいるが,
その目標を達成するには京都府大会,関西大会,全国大会の3つのコンクールで最優秀となる必要があり,部長の黄前,副部長の塚本,実力者の高坂の3者の
検討の結果,3つのコンクールの前にそれぞれオーディションを実施し
オーディションで選外に漏れた部員の緊張が緩む事態の打開を図る。

つまり全国大会まで進むと仮定した場合,
1.府大会向けオーディション
2.関西大会向けオーディション
3.全国大会向けオーディション
…の都合3回オーディションが実施される事となる。

幹部会議の決定事項が顧問の滝の承認を得たのを受け,
一般部員に周知したところ2年の久石奏から質問が挙がる。

久石「実力の変化に応じて,その都度ベストメンバーを選び直す訳ですね?」
高坂「北宇治は完全な実力主義!」「このやり方が一番理に適っておる」

…高坂がこう言い切れるようになる迄,
新生北宇治は産みの苦しみを嫌と言う程,味わう必要があった。
高坂が1年のときのオーディションで
3年の中世古香織を差し置いてトランペットのソロパートに抜擢され,
2年の吉川優子の猛反発を受け
高坂と中世古のふたりの再オーディションが実施され
雌雄を決する事となった。

吉川は中世古を崇拝しており
「香織先輩がソロパートを演奏するのが見たい」
が為に高坂と敵対し,最後には高坂に対して泣き落としまで実行した。

再オーディション実施直前の高坂と黄前の会話
高坂「久美子は…もしワタシが負けたら…嫌…?」
黄前「嫌だ…嫌だッ!」
高坂「何故?」
黄前「麗奈は「特別」になるんでしょう?」
「そのアンタが…人に流されちゃダメでしょう?」
高坂「でも…ワタシが勝ったら悪者になる…」
黄前「悪者になればいいじゃん!」
黄前「ソロは麗奈が吹くべきだって言う…言ってやるッ!」

高坂「…側(そば)にいてくれる…?」
黄前「うん…」
高坂「裏切らない…?」
黄前「もし裏切ったら殺していい」
高坂「マジで殺すよ…?」
黄前「オマエならやりかねないって承知の上で言っている…」
黄前「いまワタシはオマエに…愛の告白をしてるんだッ!」

黄前久美子と高坂麗奈の関係を
京都アニメーションは「両者の間には「引力」が働いている」と表現した。

その「引力」の実態は…。
高坂麗奈が泣いて助命嘆願する吉川優子を払い除けて
高坂より実力で劣る中世古香織を
見せしめに公開処刑で殺すことによって
3年が年功序列で何となあくコンクールのメンバーに選ばれる
「古き良き北宇治吹奏楽部」を殺し!
黄前久美子が墓穴を掘って「古き良き北宇治吹奏楽部」を埋める
「共犯関係」であり「古き良き北宇治吹奏楽部」の墓から生えて来たのが
「徹底的な実力主義の新生北宇治吹奏楽部」なのである。

つまり高坂が起こした革命を補佐したのが黄前で
ふたりで北宇治吹奏楽部を一切の情実を考慮しない
年功序列を真っ向から否定する「完全な実力主義」にしたのだ。

顧問の滝はパートリーダーが
「ただのカカシですな」
と見て取るや赴任2年目に「黄前相談室」を設け
「パートリーダーでは解決出来ない悩みもワタシには解決出来るから」
「どんどん悩みを打ち明けて!」
と黄前に1年の悩みを聞いて回らせ,動脈硬化を起こして
機能不全に陥っていた北宇治吹奏楽部の縦割り行政をブチ壊し,
黄前をそのまま部長に据え,
「悩みは部長に直訴すれば解決してくれる」
との空気を醸成した。

勿論組織の在り方としては下の下で
「黄前ひとりにかかる負担が大き過ぎる」
が1年の悩みが幹部に伝わらないパートリーダー制よりは余程いい。

「ユーフォ」の1期で描写のあった
パートリーダー会議が以降全く描かれなくなったのは
滝が会議を不要と思って廃止したからだと思う。
パートリーダーはパート毎の練習のリーダーとしての権能だけ残し
悩み相談は黄前ひとりが一手に引き受ける様になったのである。

今回の「ふたりのトワイライト」は北宇治吹奏楽部の
かつての革命の闘士・黄前と高坂の「素の姿」を描こうと言うもの。

あがた祭りの賑やかな模様を描きながら
小者の久石に「月永クン」とワザとこれまで求が嫌がって来た
呼び方をされても最早微塵も動じなくなった求の姿に対して,
未来永劫成長出来ない一生雑魚(ザァコ)確定のダメダメな久石の姿,
1年のときに加藤葉月から,あがた祭りで告白されて振った手前,
加藤の顔を真面(まとも)に見られない塚本に
満面の笑顔を向ける加藤の姿…等々見所は多い。

そして黄前は高坂の自宅に招待され
夕食を御馳走になって高坂の自室に招かれる。
高坂はしきりと黄前の進路を知りたがり
音大に進むよう露骨に誘導して来る。
高坂は最初からトランペット奏者になる夢があり
音大以外の進路は有り得ない。
その高坂が何故執拗に黄前に音大進学を勧めるのか…?

高坂が真情を吐露し始める…。
高坂「高校卒業して…別々の学校に行ったら…」
「ワタシ達きっと疎遠になって行く…」
「ワタシが幾ら会いたいと思っても」
「久美子がそうじゃなくなるかも知れないし…」

黄前「今のワタシ達って…「特別」でしょう…?」
「だからきっと大丈夫」

高坂「ワタシは久美子と…」
高坂「全国でトランペットとユーフォのソリがやりたい…ッ」
黄前「ワタシも」
高坂「黒江なんぞとソリしてんじゃねえよ!」
高坂「オマエとソリするのは!」
高坂「このワ・タ・シなんだッ!」
黄前「ハイハイ」

僕は一体…「何」を見せられているんだ…?
黄前が1年のときには高坂ひとりが「特別」だったが
今や黄前と高坂ふたりが「特別」なのだと描いて

「次の曲が始まるのです」

「ソリ」とは「ソロ(単独)」の複数形で
この場合はトランペットの「ソロ」(高坂)と
ユーフォの「ソロ」(黄前)が演奏するから「ソリ」となるのだ。

高坂と黄前は…北宇治吹奏楽部を
一切情実が絡まない実力主義に変えた筈なのに
「ふたりでソリしたい」
と思いっきり情実が絡んでるのがままならぬところである。
今や実力でソリパートを強奪する他無いのだ。

仮にオーディションでソリパートに高坂と黒江が選ばれたとしても
高坂にも黄前にも,
その決定に不服を申し立てる権利も資格も義理もないのである。
勿論黒江には何ら落ち度はないのであるから,
仮に仮に黄前と黒江の再オーディションに持ち込んだとしても
今度は黒江真由より実力で劣る黄前久美子の公開処刑が実施される。
かつての革命の闘士が
中世古香織と同じ様に公開処刑されるとするなら実に…。
「歴史は繰り返す」としか言い様がない。

あのさ。

僕はいま…無性に…。
再オーディションで滝が黄前に…。
「黄前さん…アナタがソリを吹きますか…?」
と尋ね…高坂が
「諦めないで…諦めないで…」
と黄前に哀願する絵面が見たくて堪らねえんだよ…。

黄前「(黒江)真由ちゃんって(演奏が)ウマいよね…」
高坂「ワタシは久美子の(演奏の)方がスキ…」

高坂は音楽に対して真摯であるが故に
「久美子の演奏の方がウマい」
とウソが付けず
「ワタシは久美子の演奏の方がスキ」
と論点をズラして答えているのである。

ふたりの共通の認識として
黒江は「ふたりでソリしたい」と言う希望の最大の障害なのだ。

拙レビューで僕の…。
久石奏に対する言い様のない悪感情が伝われば幸いである。



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