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とよ田みのる先生の「これ描いて死ね」第2巻レビュー「顧問の手島先生は勿論,高校生たちの葛藤が描かれはじめ,益々面白くなって参りました!」

伊豆七島の架空の島・伊豆王島の高校で部員3名・顧問1名で発足した
漫画同好会は夏のコミティア(創作系同人誌即売会)初参加を目指し,
12頁の漫画同人誌作りに取り組む。

漫画は「言いたい事」が言葉や文章に出来んから描くしかない
「どうしようもないもの」であって
第2巻に入って個々の部員の葛藤が描かれ始める。

話作り担当なのに出来た漫画の評価が常に「絵はいいね」で
自分の作った話はスルーされ続ける主人公・安海がモヤモヤを抱えながら
元漫画家の顧問教師・手島からファミレスでネームを描いてたら
夜が明けていた話を聞き,自分もコミティア遠征の際に宿泊した
ホテルの食堂で夜明かしして漫画を描いた時の朝日の美しさ。
そうして手島の感動を追体験して描いた漫画が1冊も売れない現実。

そう「漫画みたいな展開」にはならないよね。

追い打ちをかける様に手島の元担当編集から
「その本が買われず悔しいですか?」
と心を読まれた時の安海の表情がね,
絶望と苦悩と鬱屈と悔しさが入り混じっていて最高なのですよ。
手島や漫研の仲間が本を買ってくれて「同情じゃない」って言われても
到底信じられず疑念と情けなさと,
それでも初めて本が売れた嬉しさに泣き出してしまう。
初めて,この主人公に感情移入出来たよ。

絵心があって奥手な漫研部員・藤森が転校生・石龍から助言を受けて,
厳しい母親に漫画で「言いたい事」を伝え,
徐々に自分の意思を表示し始める様になって,
都会のホテルの至れり尽くせりぶりに,島の旅館の娘の負けじ魂の血が騒ぎ,
精一杯の敵愾心を燃やすオマケ漫画が良かった。
オマエ,実は相当負けず嫌いだな…?

巻末の漫画は手島が漫画の賞を取って,連載に向けて,
尊敬する漫画家の下で,1年間アシスタントをやって経験を積む話。
「何かが降りて来た」
漫画家の思い付きで手島が作画担当したラストが全描き直しになって,
しかも描き直された漫画の方が百万倍面白い。
決定的な何かが,この漫画家にはあって自分にはない,この絶望。
何時まで経っても「新人ちゃん」呼びで名前で呼んで貰えない屈辱。
1年間練り続けた構想に自分でダメ出しして投げ捨てる葛藤。
そうした諸々の鬱屈を漫画に爆発させて初めて名前で読んで貰えた感激。
恐らくではあるが漫画を描いたり何らかの創作活動に
携わっておられる方により深く「刺さる」内容だと思う。
手島は自分の様な人間は誰にも好かれない,
自分ひとりで生きて行くしかない,と思っているかも知れないが,
彼女に好意を抱く人間が確実にいるって描写が
「救い」となっていて泣かせます。

先の楽しみな漫画です。

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