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童貞すぎて母にゲイを疑われた
母「あんた男が好きなん?」
「私はそういうの気にせんから、
正直に言って良いんやで?」
あなたは微笑みながら優しく諭した。
ちょっと待ってくれ母ちゃん。
俺は全然ゲイじゃないぞ。
俺の春は、母からすれば青でも水色でも鉛色でもなく虹色に見えているらしい。
本当に唐突に言われた。
今日、一緒に食卓を囲んでいたら唐突に。
言葉のパンチラインとはまさにこのこと。
俺は口に含んでいた味噌汁を
おもわず吹き出しそうになった。
そぼろはぼろぼろ箸の間を落ちていった。
否定しても、「私はそういう偏見とかないから・・・」
の一点張りだ。
もう涙が止まらない・・・・・・
今じゃ自分の涙で世界が虹色だ。
母曰く、俺は髪が伸びすぎているらしい。
「前髪目に刺さってないの〜」と目を合わせる度に言われる。目が合っている時点で大丈夫なのに。
今の自分は襟足の長さが足りずにセンターパートウルフになりきらないきしょい髪型なのだが、
お母さん世代の人たちからすれば、
最近の中性(笑)ファッションについては
理解に苦しむ部分があるのだろう。
そのため、こんな長い髪をしていると
ゲイを疑うのも自然な反応かもしれない。
けれども俺はこの髪型がしたくてしているのか、
美容師との会話が苦手すぎて、
そして髪を切りに行くのが億劫すぎてしているのかは、自分でもわからない。
だから余計不条理を感じる。
そしてそのほかにも大きな要因がある。
というか、これが最たる原因だろう。
それが、異性との交友関係がなさすぎること。
俺はもう何年間も、女友達すらできたことがない。
単純に、ずっと俯いてて何を考えているかわからないのがきもすぎるのかもしれないし、
臭いのかもしれないし不細工なのかもしれない。
そして、より深く自省するなら、クラス替え直後は話しかけてくれる朗らかな女性がいたことはあっても、猜疑心の塊である俺は「どうせ陰で小馬鹿にされるだけ」スタンスを取ってしまい、自己防衛として距離を置いてしまうからだろう。
とにかく、母と学校生活について
話す機会があったとて、
女性についての話はできない。
だって一切の交友関係がないのだから。
まったく知らないパラレルワールドの話をしろと
言われるようなものだし、
俺にとって「彼女」という存在は
ユニコーンみたいな都市伝説と化している。
俺は現実主義者なのでUMAなんて信じていない。
恐らく母はこれを、俺が女性に対して興味が
ないというふうに捉えているのかもしれない。
この長い髪も相まって、全時代的な価値観を軸とした視点からみれば同性愛者っぽく写るのだろう。
その上男友達の家で2人きりで遊んだりすることもあるんだから、ゲイを疑われる原因が俺にあるのは確実だ。
けれども、別に異性との付き合いがなくたって今の時代色んな娯楽があるし、受け取る愛情と、
恋人に尽くすことで満たされる承認欲求は枯渇しようとも、性欲に関してはひとりで満たせるわけで、俺は彼女が作れないんじゃなくて作らないという
道を選んだだけなんだ・・・・・・それだけだ・・・・・・・・・
友達と2人きりで会う約束をしていることを
報告する度にちょっと眉を吊り上げていたのは、
そういうことだったのか。
多分自分の息子に彼女ができないことに関して、
息子はゲイだと断定することにより
納得しようとしているのだろう。
とにかくお母さん、心配させてすみません。
大学ではきっと彼女作ってみせるし、
安心して待っててください。
進学先は工学部だけど。