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ねっこ 


King Gnuの「ねっこ」のMVが公開された。
この感想を述べようと思う。

まず、この楽曲は同バンドの
「カメレオン」「硝子窓」と同じ系譜の
クラシック的な要素が目立つもので、楽曲中でヴァイオリンやピアノの音色が目立つ事が
特徴であるが、その中でも俺が注目したいのは、普段のドラム代わりに、
時計が秒針を刻む音が使用されている点である。
品のある表現だと感じた。
King Gnuの楽器以外の物による、
オルタナ的な音楽表現には
目を見張るものがあるだろう。
この時計の針の音は、ストーリー仕立てのこの楽曲のMVの中での時間経過を表しているのではないだろうか。

誰も気づかない
ありふれた一輪でいい
あなたが項垂れたその先に根を張る
そんな花でいい

King Gnu「ねっこ」より

ここの場面で、主人公の男性が転び、目を開けた際にうつる女の人が、今回の楽曲のなかで大事な役割を果たす、彼岸花の様にみえる。

彼岸花のような女性

彼岸花の花言葉には、「悲しき思い出」やら「独立」
やらがあるが、ここの彼岸花が意味するのは、
「悲しい思い出」であると考えている。
理由を述べるためネタバレすると、
この女の人はMVの中盤で亡くなってしまう。

MV中の0:30あたりで映し出される人形の頭部は、「カメレオン」のMVで主人公であった人形。
また、この人形の頭部の左側が0:55あたりで破損しているが、ここでの傷に、「カメレオン」のMV中では彼岸花が挿されている。
過去の楽曲と繋がりを感じられるのも、1ファンとして楽しみにしていた部分だ。

割れた頭部

そして、彼岸花に似た女性と人形職人の男性の間に子ができる。幸せな風景が続くと思わせて・・・


望まずとも時計の針は進み続ける
求めるほど遠ざかる 大事なものこそ
時の風が攫ってく
思い出の瓦礫に根を張ってる
ここで何時迄も待っている
今日もあなたを思っている

ここで、歌詞も映像も不穏なものとなる。
女性が男性の前に現れない様になり、
サビへと続く。


飾らない花でいい
華やかでなくていい
あなたの痛みの上に 根を張ればいい

女性は死亡し、葬儀に参列する人々が映される。
「飾らない花」  「華やかでなくていい」で韻を踏んでて気持ちいい。
メロを無視した様に目立ちまくるヴァイオリンだが、どこか心地よくて聞きやすい。
東京事変の「透明人間」のサビでのピアノみたいだ。


一頻りの雨に 流されぬ様な
ふとした悲しみを そっと忘れさせるような
そんな花でいい
そんな花がいい

「そんな花がいい」の部分で唐突に転調し、
常田パートに移行する。
King Gnuの楽曲でたまに見られる構成で、
多くのJ-POPや邦ロックでは、ラスサビのみの転調が多いので、これも聴いていて楽しい要素かもしれない。


ただ君が泣くなら僕も泣くから
その美しく強く伸びた根は
誰にも見えやしないけれど
無常の上に咲き誇れ

ただ君が泣くなら僕も泣くから
心ふたつ悲しみひとつで
何十年先も咲き続ける花
無常の上に さあ咲き誇れ

「無常」とは、仏教において、森羅万象は千変万化
し、常に一定の存在としてあり続けることはないということであるが、これは亡くなった女性を表しているものであろう。
また、最後の「さあ咲き誇れ」でキーが下がる。
正に音階と感情のジェットコースターである。


2:37あたりで映し出される人形は、「硝子窓」のMVの主人公の人形だが、これは先ほど亡くなった女性を模したものだとここで明かされる。

能面のよう


あと、これは完全に俺の主観によるものだが、
脳面の様に見えなくもない。
どんな表情をしていると取るか自由な感じが
そう思わせるのだろうか。
常田大希と能面といえば、
King Gnuの前身バンドであるSrv.Vinciの「stem」が真っ先に思い浮かぶが、
何か関連性があったりするのだろうか。
全く音楽性の方向が違うので多分関係ないが、
ぼんやりこの考えが脳裏をよぎったので
一応書いておく。

美しすぎる間奏の後、
曲はクライマックスに移行する。
最後には、一面彼岸花の草原を子供、犬、男性で翔けるシーンがあるが、ここでの彼岸花は、
「独立」を象徴するものであると考える。
愛する人に依存し、失った悲しみに暮れていた
彼らが、「悲しき思い出」から独立したことを
表しているのではないかと思った。

空を舞う彼岸花。紅葉の様にも見える。

曲が終わって一瞬映される映像では、男性が作った人形で遊ぶ2人が描かれているが、今までの「カメレオン」や「硝子窓」は、
彼らが行った人形劇だったのかもしれない。

えもいね


まとめ

MV公開前から聴いていたが、この映像がついたことよりさらにいい曲になったと思う。
「ねっこ」の曲名だけ発表された際、
「じゃあ次の新曲は「イッヌ」で確定ww」
などと全く面白くもないうえ失礼ですらある
ことを考えてた過去の自分をぶん殴ってやりたい。
この人格は、ねっこの部分から矯正すべきだろう。




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