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星屑の点を線で繋ぐ様に
俺が1番好きなバンドはハヌマーンです。
オルタナっぽさとキャッチーさのバランスが良く
抒情的でかつどこか捻くれた歌詞にも、
共感しつつその文学性に感嘆します。
その中でも一際好きな曲がありまして、それが
「アパルトの中の恋人たち」です。
この曲が収録されているREGRESSIVE ROCKのジャケットをアイコンにしているくらい好きです。
始めてちゃんと弾き語りの練習をしたのもこの曲です。
最近?かは知らないけど、カラオケDAMでも歌える様になりましたね。
今日はその歌詞解説をしようかと。
今更やり尽くされていますがね。
俺なりの解釈があるかもなので、
興味があれば是非お付き合い下さい。
基本概要
同棲中の恋人たちの曲です。
まあ俺は童貞なんですけどね。
男女それぞれの心のすれ違いを、
夜の空と街の情景描写を通じて
繊細に描いています。
REGRESSIVE ROCKのジャケットの建物が、
彼らが住んでいるアパルトなのでしょう。
1番
彼氏視点で進んでいきます。
彼女の寝息を確かめた後
部屋を出て夜を吸い込んで
『戦争が起きたらどーしよー』とか
脈絡のないこと考えてた
まず、「夜を吸い込んで」の一文に目を惹かれる。
夜は吸い込むものはなく、太陽が沈んだら勝手になるものだが、誰もいない夜を散歩しているとき、「夜を吸い込む」ような気分になるのはなんとなく共感できる。冷たい夜の空気が肺を満たすあの感覚、夜を所有した様なあの感じだ。
次に、「戦争が起きたらどーしよー」の部分。
この思考が脈絡のないことと自覚しながらも現状から飛躍したことをぼんやり考えているという時点で、なんとなく楽観的というか、
必死で現実を見ないでいようとする姿勢を感じる
誰も知らない所で虚しく
色を変える信号は
まるで今の自分そのものだった
もたげる首の角度までおんなじだった
夜の街を散歩して暫く経ち、夜の信号についての歌詞となる。
現状を打破するべきか、(青信号)
維持するべきかで(赤信号)
葛藤している(黄信号)
考えが移り変わっても、
その考えを誰も気にしてくれない自分の現状と
真夜中の信号を照らし合わせながら上を向いて夜空を眺めている。
予定のない今日の月の形
夜に齧られた様なそんな形
あの月はなんて名前なのかな
理科の授業もっとちゃんと聞いとけばなあ
彼は夜空を見上げ月について注目している
「夜に齧られた様なそんな形」←ここの言い回しがオシャレすぎる。
ここでの擬人化は、「夜」がこの詩にとってどれだけ重要なものか示しているのではないか。
しかし、彼はその月の名前を知らない。
理科の授業を聞いとけばなと後悔している。
1番を通じて、彼は怠惰で楽観的かつ未熟な人物として描かれている。
2番
2番は、彼女視点で進んでいきます。
古い人形抱いたまま眠って
目が覚めたら彼は部屋に居なくて
「浴槽のお湯流したっけな」とか
明日の朝食のこと考えてた
彼が部屋に居なかろうがすぐに、浴槽のお湯のことや明日の朝食のことを考えている。
彼女の気持ちは、
彼氏から離れつつあることが窺える。
そして、1番の彼氏とは正反対の性格をしていることがわかる。彼女側は現実的だ。
守られるか無視される以外には
用途のない夜の信号は
あーなりたくないと思う女子そのものだった
不憫そうな姿までおんなじだった
彼氏と同じく、夜の信号を見る彼女。
守られるか無視されるかの不憫な女子にはなりたくないと、強く生きようとする彼女の姿勢が見て取れる。
男と同じ様に信号にネガティブなイメージを持っていることはわかるが、
彼女は「あーなりたくない」と感じ、不憫にすら思っている。
彼氏が「まるで今の自分そのものだった」と感じているものをだ。
ここでも、2人は考え方がすれ違っている。
星屑の点を線で繋ぐ様に
あなたとの日々も意味を持つかな
臥待月が出てるからでしょう
やけに叙情的になってしまうのは
「星屑の点を線で繋ぐ様に」
この一文、詩的すぎる。
簡単に言うと星座のことでしかないのだが、
星座について、みなさんどんなイメージを持っているだろうか?
俺は正直無理があると思う。
こいぬ座など、到底子犬には思えない。
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ここで表現されているのは、彼女側が彼との関係に意味を感じられていないと言うことだ。
それでも希望を持って、星座を見つけるように
こじつけでもいいから彼との関係に
意味を持たせようと健気に彼を想っている、
彼女の一途さを表現している。
加えて、
彼女は男が知らなかった月の名前を知っている。
彼氏が見て感じている世界と、
彼女が見て感じている世界が別物であることを
暗示しているのではないだろうか
Cメロ
部屋に帰れば彼女はまだ眠ってて
床に落ちた台湾製のそれと目が合う
彼氏が散歩から戻ってきた場面。
彼女は、起きていたはずだが、また眠っている。
疲れはてて眠ったのか、或いは彼と話すことが気まずくて寝たふりをしているのか。
どちらにせよ、彼女側が彼氏に気を遣っていることは確かだろう。
「台湾製のそれ」とは、おそらくコンドームのこと普通使用後はゴミ箱にでも捨てるのではないか?いや、俺は童貞だからわからないが。
少なくとも、それが床に捨てられている状況から
もはや彼らの心の繋がりは薄れて、
2人を繋ぐものが肉体関係しかなくなってしまった様に感じとれる
ラスサビ
アパルトの中の恋人たち
愛し合うと言うにはおぞましいほど
醜い行為に果てた後で
ざらっとする後ろめたさはなんだろう
性行為のことを、「愛し合うと言うには悍ましい」
と言っている。
個人的には、生命の神秘だと感じるのだが、
2人は愛のある性行為をしていないと言うことだろう。
ただお互いの性欲を解消するために、肉体関係として繋がりを維持しているのだろう。
彼氏は、彼女を性欲解消の奴隷として
「使っている」ことに罪悪感を感じながらも、
今日もやってしまった。
とやるせなさを感じている。
たとえばその薄汚れた人形
ボタンの目でいつも君をみてる
君の薄汚れた人形
毛糸の唇で笑っているよ
所詮中身はスポンジと綿だし
涙拭いとるそのオンボロみたいに
僕はなりたい
ここで歌われている人形は、この曲の男の様で、どこか違う。
ボタンの目(盲目的で現実を見ようとしない)
中身はスポンジと綿(中身がない)
と、彼のとの共通点が多いが、その人形は、
彼が彼女を残して部屋を出て、
その後彼女が目覚めた時に抱きしめていたのもので、
オンボロになるほど涙を拭いとってきたものだ。
そんな人形に、彼は「なりたい」と切実に願っている。考え方が違っていたり、不憫に思われていたりしても、それでも支えていける存在になりたいと願っているのだ。
終わり
ここまで俺の駄文に付き合ってくれた方、
ありがとうございます。
いかがでしたか。
思っていたより相当長くなってしまいました。
あまりに繊細で、かつ生々しい歌詞です。
この記事を読んでいる時点でまだ聞いたことがないということはほとんどないと思いますが、
これを読んで「アパルトの中の恋人たち」をより好きになってくれれば嬉しいです。